10月4日。第14戦ポルトガルGPの開催地エストリルサーキットは、強風が名物の当地に珍しく、穏やかな晴天に恵まれていた。午前11時15分にスタートする250ccクラスの決勝レースは、全26周で争われる。ランキング首位のスコット・レーシングチーム・250cc青山博一(千葉県 27歳)はポールタイムから0.283秒差の予選4番手、フロントロー右端のグリッドについている。ポールポジションはヘクトール・バルベラ(スペイン 23歳)。ランキング2位で青山を追うアルバロ・バウティスタ(スペイン 24歳)が2番グリッド、同じくランキング3位のマルコ・シモンセリが3番グリッドにつけた。青山とバウティスタは13ポイント、シモンセリまでは40ポイントの差だ。2009年の250ccクラスのチャンピオン争いは、事実上、この3名に絞られている。
だが、今回のレースで苦戦を強いられるだろうことは、土曜の予選段階からすでに予想はされていた。
Hondaの青山とライバル勢を比較すると、特に最終コーナー立ち上がりからストレートにかけて、著しい差があった。予選終盤のタイムアタックでは、速度の乗る最終コーナーを立ち上がってくる際に、青山の背後につけていたアプリリアの選手がゴールライン手前で横に並んで青山よりもいいタイムを記録し、長いメインストレートであっさりと抜き去って1コーナーへ向かっていく。パスした選手はスロットルを戻す余裕があるが、青山はその間も常に全開。マシン差は明らかだ。
決勝レースは、危惧したとおりの展開になった。
一方、ランキング2位のバウティスタは転倒リタイアでノーポイント。青山が4位で13ポイントを加算したことにより、2人の差は26ポイントへと広がった。ランキング3番手のシモンセリは独走優勝。一時は完全に遠のいたかに見えるチャンピオンシップも、ここ数戦の復調でバウティスタの2点差まで迫り、青山からは28ポイント差となった。
苦戦は覚悟していたものの、せめて表彰台には立ちたいと考えていただけに、青山はこの不満足な結果と己のふがいなさに、ピットへ戻ってきた直後こそぶ然とした表情を隠さなかった。しかし、レースから数時間が経過する頃には、いつもの冷静さを取り戻していた。
「決勝内容は全く納得できない悔しい結果ですが、チャンピオンシップを考えると、26点と28点という差になったのは、よかったのではないかとも思います。今回は情けないレースをしてしまったので、次からの残り3戦ではそういうことを払拭できるように、思いきった走りをしたいと思います」
シーズンも大詰めを迎え、チャンピオン争いはここからいよいよ佳境にさしかかる。しかし、残り3戦という状態で現在のようにチャンピオンシップをリードすることになろうとは、開幕前の時点でおそらく周囲の誰にも予想ができなかったに違いない。