−金曜午後のフリープラクティスが終わった段階で、決勝に出られるかどうかという話になった、ということですが、これはどういう意味なのでしょうか。
「1時間のセッションでも、ライダーは周回を重ねて走行をしますよね。その段階で10周も持たない。ということは、20周以上のレースなどとても持つわけがない。しかし、木曜に登録したもの以外には選択肢がない。マシンでいろいろ試みても、それにも限界がある。そのような状況で、最も重視すべきライダーの安全性を考慮すると、果たしてこのまま走らせて大丈夫かという判断が必要になるかもしれない、ということです。安全なくしてレースはありえないし、なによりもライダーの危険を避けることは勝敗以前の問題ですから。
もうひとつ心配だったのは、ライダーのライディングが変わってしまわないかということです。転ばないように走ると、リスクを下げたいという心理から、コーナーへの進入も甘くなるし、スロットルの開け方も緩やかになる。そして、それが身についてしまうと、ライディングスタイルが変わり、これまでの様に攻めの走りができなくなってしまう可能性もある。そのようなことは当然、避けたいです。」
−特に今回のレースでは、サンカルロ・ホンダ・グレッシーニの中野選手が金曜午前から快調で、決勝でも4位と好結果を残しているだけに、明暗はより鮮明に浮き彫りになった印象があります。
「中野さんの走りに目を向けると、金曜の走りだしからタイムを上げやすくなったとコメントしていました。マシンはダニとほぼ同じで、スキル面でも同じMotoGPを走る選手としてともに頂点を究めたライダーなので、ライディング技術に大きな違いはないといってもいい。
我々は、次のサンマリノGPに向けて、レプソル・ホンダとして自分たちにできるベストを尽くし、ミシュラン側にもそれだけのものを見せてもらい、レースに備えようと思っています。とにかく、我々は今の場所にストップしているわけにはいきません。次のレースに向けて戦っていかなくてはならないのですから。」
−そういう意味では、次のミサノは非常に重要なレースになりますね。
「ミシュランは技術力とノウハウのある大きな組織なので、彼らを信じたいと思います。我々はまだ、チャンピオンシップをあきらめたわけではありません。これまで同様、一戦一戦あきらめずに戦っていきます。ここ数戦、苦しい展開になっているのは事実ですが、一刻も早く解決の糸口をつかんで、今の状況をプラスに転じていきます。前回も言ったように、我々は最終戦のチェッカーが振られるまでは絶対にあきらめません。
今、私がライダーやスタッフに話しているのは、自分を信じ、チームを信じ、そして自分を取り囲む環境を信じることを忘れないで戦っていこう、ということです。自分たちを信じる気持ちを持ち続けて戦い続けよう、そしてそれはいつか必ず自分自身にプラスとなって返ってくるはずだから、と話しています。そうやって信じていくなかで、自分たちにできることを全力でやり尽くして今後のレースに備えていきます。次戦のミサノ、そして今後の我々の戦いに、どうか応援をよろしくお願いいたします」