−一方、ニッキーにとっても、この2戦は非常につらい戦いになってしまいました。
「ザクセンリンクでは、タイヤの初期グリップにフィーリングが得にくく、何度か危ない場面に遭遇して、ブレーキングや立ち上がりで思いきったコントロールがしづらくなる、という負の連鎖反応のような状態でした。そういう意味では、タイヤの適合性が悪かった、といえるかもしれません。その後のラグナセカは、地元だけに相当な気合いで臨んだのですが、ここでもライバル陣営に対して周回あたり1.5〜2秒近い差を開かれてしまい、2戦続けてタイヤ面で非常に厳しい戦いを強いられてしまいました。ただ、現状の課題をミシュラン側も真摯に受け止め、急ピッチで全面的な改良・改善を進めてくれています。今は彼らの取り組みに、大いに期待をしているところです」
−開幕からサマーブレイクに至るここまでの11戦を振り返ると、予想外のアクシデントに見舞われながら戦ってきた印象もあります。
「ただ、想定していた中でも最悪のシナリオには至っていないので、まだここから十分に巻き返しを図れます。黙っていても状況はよくならないので、能動的にアクションを起こしながら、サマーブレイク後のブルノが開幕戦のつもりで臨みます。しかも我々はゼロからのスタートではなく、ハンディがある。それをどうポジティブな方向に持っていくか。ライダー、チームとも頭を切り換え、短期勝負の7戦で全戦勝利するつもりで照準を合わせています」
−ブルノといえば、チーム・サン・カルロ・ホンダ・グレッシーニの中野選手にワークスマシンを支給するという話もあるようですが。
「サテライトチームに対しても、プロジェクトを進めていく中で可能な限り先手を打ち、なるべく早く様々な事象を検証していきたいと考えています。今回、中野さんに乗ってもらうのは、その項目のひとつです。中野さんとは日本語でコミュニケーションを図ることができますし、開発や評価のスキルも高いライダーです。そういった面を彼に託すことで、我々も多くの事柄を見極め、より高水準のデータを得ることができると期待しています」
−ダニについては、今までと同じ仕様のマシンで走るのですか?
「そうですね。ザクセンリンクでは転倒してしまったので、投入パーツに対して好感触をつかみながら、結果につなげることができませんでした。従って、まずはそのハードをもう一度検証してもらい優勝を目指す。そういうウィークになりますね。ニッキーは、カタルニアから使用しているニュウマチックバルブ仕様を継続してライディングします」
−話は前後しますが、雨でのニュウマチックバルブエンジンの操作性はどうなのでしょう。
「特に問題ない、と考えています。ドニントンパークでもレインセッションを走っているし、ムジェロでも岡田が雨の中で走行しています。その意味では、ドライバビリティやコントローラビリティの問題はなく、むしろ扱いやすいくらいです。回転数などに余裕を持つことによりアジャストの幅も広がって、コンディションが変わっても対応しやすくなっています」
−電気系統のクセも、かなり改善されたのでしょうか?
「このサマーブレイクの間にだいぶ改良も進み、トラブルのシミュレーションも重ねて、ほぼすべての項目を解消しています。イレギュラーの事態が発生するシミュレーションも行っているので、大丈夫です。そういう意味では、このインターバルは意義が大きいですね。様々な面からの改良が進みました」
−では、次戦チェコGPはまさしく重要なレースになりますね。
「開発陣にとっても、2人のライダーにとっても非常に重要なレースです。ダニはチャンピオンシップで巻き返しを図るためにも重要だし、ニッキーもいい結果を残したいと意気込んでいます。
先ほども言いましたが、ハンディがあるにせよ我々は、次のブルノがシーズン開幕戦のつもりで臨みます。Honda陣営の全選手がトップ10に入ることを目標に掲げてきましたが、プラクティスセッションなどでは、少しずつ実現できるようになってきています。次はレースでそれを結果として残せるよう、全力で立ち向かいます。Honda陣営全員が上位に入ると、チャンピオンシップでも有利になります。どうぞご期待ください。ここからの我々の戦いにも、今まで以上の応援をよろしくお願いいたします」