−ニッキー特有のライディングスタイルも、今回の事象に影響はあったのでしょうか。

「あるでしょうね。あとは、ライダーのがんばりで、想定ラップタイム以上のペースで周回が続きました。では、そこまでのシミュレーションをしっかりできていたのかというと、我々に甘い部分があったのは事実です。ライダーは、前を走る選手よりもさらに前に行くために、マシンがどんな状態であっても少しでも早く前を走ろうとする闘争心や本能が働くわけです。ライダーはそこまでがんばるんだ、それが人間の力なんだ、と。そういうところをもっとシミュレーションしよう、と皆で話しあいました。私はエンジニアをとがめるつもりもないし、ニッキーをとがめるつもりもありません。トライした結果としてエラーが生じたんだから、むしろ胸を張っていい。でも、エラーだけは直そう、と」

−では、この2戦をニッキーが実戦で走ってみて、ニュウマチックバルブ仕様のエンジンはいかがでしたか。

「マシンの動きやエンジン特性もそうですが、ニッキーのライディングには合っています。彼の好みでチョイスして使ってみたとはいっても、タイムが出ないとか、プラクティスや決勝の結果が残らないようでは仕方がないので、必ず結果につなげてほしい、とリクエストしました。それについては、彼は忠実に結果を出して約束を守ってくれています。それがゆえに、今回、ハードの問題でリザルトを1つ落としてしまったのは本当に申し訳なく思います。でも、有言実行でコメントどおりに結果もついてきているので、これを進めていけば、ニッキーはまた必ず上位でゴールできる。ダニも当然、横でそれを見ています。自分とは違うエンジン仕様のマシンですが、車体は同じなので、特性が違うとはいえダニにとっても好材料になるし、いい刺激にもなる。開発陣にとっても、それは同様です」

−折り返し地点の9戦を終えて、ダニはランキングトップです。勝ち星はまだ2勝ですが、最低限の目標はクリアできている、といえそうですか?

「想定していたよりも、ちょっといいかもしれません。4ポイント差とはいえ、半分を終えた段階でポイントリーダーになっている状況は、私のシミュレーションにはありませんでしたから。
 次戦のザクセンリンクは、ダニが去年優勝した相性のいいサーキットです。ラグナセカでは去年苦戦を強いられましたが、ミシュランも昨年の教訓をもとに、ラグナセカに対する対応をしてくれています。ニッキーの母国ですから、我々としては好材料を持って臨むことができますね。夏休み前の最後の2戦、ここが天王山の頂点です。決して楽な勝負ではないでしょうが、ここで勝つことができれば、さらに追い風になりますね」

−勝算は?

「ドニントンパーク〜アッセンの連戦と比べれば、とてもいい状況です。チームの士気もさらに上がっています。ザクセンリンクではダニに2年連続優勝、ラグナセカではニッキーに凱旋勝利をさせてあげたいですね。ザクセンリンクで1-2フィニッシュ、ラグナセカでもニッキーをウィナーとして1-2となれば、ライバル陣営とのポイント差もさらに広がります。その美しいシナリオで、是非とも挑戦していきます。
 とにかくここから先のレースは、先程も言ったように、今まで以上に攻めの姿勢で、さらに好リザルトを求めていきます。もちろん、勝算はあります。夏休み前の重要な2戦も、応援をよろしくお願いいたします」