同社を象徴する黄色と青のカラーリングも、今回限りで見納め。
■最終戦は、別れと新たな出会いの場でもある。すでに各方面で報道されているとおり、来シーズンからタイヤレギュレーションが変更され、ワンメークルールが採用されることになった。500cc時代に連戦連勝を重ねてきたミシュランは、この数年、ブリヂストンとの間で激しい開発競争を展開してきたが、この第18戦を一区切りとしてグランプリの舞台から去ることが決定した。ミシュランのグランプリ初優勝は1973年6月8日。マン島TTで達成した。3年後の76年には念願のチャンピオンを獲得している。2009年シーズンからは、ブリヂストンが唯一のタイヤ供給メーカーとなる。
■3月上旬にスタートした開幕戦から最終戦までは約8ヶ月。プレシーズンテストなどの期間を入れると、選手とチームスタッフは丸一年もの間、常に行動を共にしていることになる。しかし、いつか別れの日はやってくる。昨シーズン、コニカミノルタホンダに所属していた中野真矢は、08年にチーム・サンカルロ・ホンダ・グレッシーニへ移籍。シーズン後半は、たびたび上位でフィニッシュする活躍を見せた。来季は戦いの舞台を別カテゴリーに移す。2003年にレプソル・ホンダでグランプリデビューを飾ったニッキー・ヘイデンは、06年に世界チャンピオンを獲得。今回の第18戦では金曜のセッションからトップタイムを連発して気迫に満ちた走りを披露した。来シーズンは、ライバル陣営へ移籍する。2009年、それぞれ戦う場所は変わるが、しかし、彼らがライダーであるという事実は変わらない。
■去る者もいれば、新たな挑戦をスタートさせる者もいる。2005年に250ccクラスへフル参戦を開始した高橋裕紀は、同クラス最後のレースとなった今回のバレンシアGPで2位表彰台を獲得。来シーズンからは、いよいよMotoGPクラスへステップアップする。また、250cc時代に高橋のチームメートで、今季からMotoGPへ参戦しているアンドレア・ドヴィツィオーゾは最終戦を4位でフィニッシュ。来季からはレプソル・ホンダに移籍し、ダニのチームメートとしてともにチャンピオンを目指す。
■最終戦が終了すると、あらかじめ仕込まれていた花火が盛大な音を立てて次々と打ち上げられる。長かった一年を終え、ともすればしんみりしがちな雰囲気を陽気に吹き飛ばしてしまう花火の音を全身で味わいながら、観客たちは長かったこの一年を振り返り、来シーズンに向けた期待に胸を膨らませて家路につく。そして、レースから一晩明けると、ライダーやチームは早速、来年に備えたテストを開始し、ピットはふたたび慌ただしさに包まれる。ここからまた、新たな一年が幕を開ける。