高層ビルが林立するダウンタウンを少し離れると、一気にのどかな風景が広がる。アメリカの典型的な郊外の姿だ。
■インディアナ州都の名を冠して、初めてMotoGPのイベントが開催された第14戦インディアナポリスGP。戦いの舞台は、レースファンなら誰もが一度はその名前を聞いたことがある、インディアナポリス・モーター・スピードウェイだ。市街中心部のやや西側に位置しているこのサーキットは、ダウンタウンからクルマで10分程度。インディアナポリスのまさにど真ん中に位置している。とはいうものの、このサーキットと周辺地域は、インディアナポリス市内にありながら、スピードウェイ市という独立行政区分となっている。住所を日本風に表記するなら「インディアナ州スピードウェイ市西16番通り」とでもいったところか。モータースポーツに対する誇りと情熱が色濃くあらわれた地番表記である。
■インディアナポリス・モーター・スピードウェイといえば、世界三大レースの1つ「Indy500」の舞台として有名だ。レースウィークには、収容数30万人超ともいわれるオーバルコースを囲む観客席がびっしりと埋め尽くされる。また、米国で圧倒的な人気を誇るNASCARも、公式戦が開催されている。ニッキー・ヘイデンは欧州でのMotoGP人気を地元記者に尋ねられた際に、「たとえていえば、米国でのNASCARと同じくらい、ヨーロッパでは人気のある競技なんだ」と説明している。つまり、それほどNASCARは米国で人気が高い、ということだ。
■当サーキットで最初のレース開催は1909年8月14日。カテゴリーは、Indy500の源流となるもの……ではなく、実は2輪のレースだった。オートバイレースが行われたのはそのとき1回きりで、今回のMotoGPがそれ以来99年ぶりの開催となる。MotoGPのコースは、2000年から07年まで行われたF1用コースに改修を施したもので、一部オーバルも使用している。全体的に起伏がなく、コーナーのキャンバー(カント、路面の傾斜)もほとんどないフラットな構成。進行方向はF1とは逆の反時計回りとなっている。