■豪華で機能的なパドックから一歩踏み出せば、そこは立錐の余地もないほど、どこを向いても文字通り人の海。グッズ売り場も、当然ながら黒山の人だかり。やはりスペインだけあって、飛ぶように売れるのは、やはりダニ関連のグッズ。また、コート代わりに国旗を体に巻いている人もあちらこちらで見かける。祖国を愛するスペイン人の面目躍如、といったところか。
イベリア半島最南端といえども、三月末は陽がかげるとまだまだ肌寒い。こんなふうに国旗を体に巻いている人たちは、あちこちでみかける。さらにこのカップルの左側にいる人、よくよく見れば、どうやらダニのシャツを着ているような……。
各陣営各選手の公認商品やキャラクターウェアなどを販売しているグッズ売り場。入り口は行列ができ、店内は立錐の余地もないほどの大盛況。
燻製ハムの試食を勧めるお兄さんと、女性客がなぜか記念撮影。試食のハムは、ほどよく脂がのって実に美味。
■サーキットの外でも、熱狂は続く。ワイルドで野趣に満ちた料理の出店が正面入り口の向こうにずらりと並ぶのがヘレス流。フリー走行や予選が終わると、観客たちはこれらの露店へ繰り出して一日の感想を語り合い、明日の期待に胸を躍らせながら翌日の朝までひたすら遊び興じる。
炭火で豪快に肉とソーセージをいぶす露店商。この香ばしさを、PCの画面越しに伝えることができないのが残念……。
露店のリキュールショップ。ずらりと並ぶジンやバーボン、スコッチなどのビンの群れが、「これから徹底的に呑んで食って大騒ぎするぞ!」というスペイン人たちの覚悟を表しているようにも見える。
ただ今、土曜の午後4時。250ccクラスの予選終了直後。明日の決勝レースに向けた各クラスの予想大会はこれからが本番。酒が入るとときに言葉が激することも?
■夜になるとボルテージはさらに上昇する。ハモン(生ハム)をつまみに酒を飲み、夜を徹して騒ぎ通す。露店スタイルの簡易バル(バー)、レストラン、そしてものすごい音量でテクノやトランスが鳴り響くクラブなどなど。あちらこちらで続く大騒ぎは、止む気配もない。この体力と豪快さは、まさにスペインならでは。
露店商はこの時間がかき入れどき。ヘレスの観客たちにとっては、何をするでもなくただ朝まで呑んで騒いでいる決勝前夜のこの時間が、ひょっとしたら至福のときなのかもしれない。
一夜限りの即席クラブ。老若男女を問わず、音楽に合わせてひたすらからだを揺すり続ける。午前6時のヘレスサーキット前広場にて。
朝まで騒ぐ彼らの体力にも舌を巻くが、それにも増して感心するのは、ちゃんと皆がツナギを着ているという事実。このようなさりげないところからも、彼らの高い安全意識がうかがえる。
■いよいよ決勝日の盛り上がりへ向けてムードは最高潮一直線。125ccクラスのレースが始まる前から、あちらこちらでチアホーンが鳴り響き、観客席のウェーブがうねる。パドック内では、マーチングバンドが闊歩しながら気分を煽り、雰囲気をさらに盛り上げる。MotoGPクラスのレースが全27周回を終え、表彰台の頂点にダニが立つと、スペイン国歌の大合唱がサーキット一帯を埋め尽くしていた。
パドック内を練り歩くブラスバンド。誰もが知っているスタンダードナンバーやポップスを豪快にアレンジし、観客を盛り上げる。
山肌をびっしりと埋め尽くす人、人、人……。そしてこの時間になっても、サーキットに入ろうとする人々で道路はさらに渋滞を続けていた。
一夜明けたリキュールショップ。先の写真と比べれば、かなりの数のボトルが減っていることがわかる。いかにもくたびれた風情の店員氏の表情を見れば、さきほどまでの盛況ぶりがくっきりと想像できる。