正面ゲートを入ってすぐに右側のグッズ売り場は、土曜日というのに、すでに黒山の人だかり。人々はここを通り抜け、最終セクションを一望できる山肌の観戦場所へ続々と向かう。
■第2戦スペインGPの舞台となるヘレスサーキットは、イベリア半島最南端、アンダルシア地方にある小さな街ヘレス・デ・ラ・フロンテラの郊外に位置する。スペインは伝統的にモータースポーツ人気が高く、ここヘレス以外にもカタルニア、バレンシア、と1年間に3カ所でレースが開催されている。いずれの大会も圧倒的な観客動員を誇り、それぞれに独特の雰囲気を持つが、中でも今回のスペインGPは毎年シーズン冒頭に組み込まれていることもあり、ここからいよいよ本格的な欧州ラウンドが始まる<事実上の開幕戦>として認識されている感がある。日本ではとても想像できない数の人々がこの小さな街に押し寄せ、レースウイークの週末はどこを見ても人とバイクで大きな賑わいを見せている。サーキットの中も外も、文字どおりロードレースファンであふれかえっているのだ。今年の観客動員数は24万3000人。レース人気の高さは、まさに一目瞭然だ。
■一見、のどかでひなびたヘレスだが、じつはシェリー酒発祥の地というのは知る人ぞ知る話。そもそも、シェリー、という単語自体が、ヘレスの音韻が変化して普及した言葉だとか。そんなシェリー酒の代表的ブランド・ティオぺぺは、ヘレスサーキットの名物としても知られている。グランドスタンドの裏側、ちょうど第4コーナーのイン側あたりに位置する旧コントロールタワー頂点から一帯を睥睨する姿は、コミカルな勇姿が背景の抜けるような青色と相まって実にお見事。
ちなみに現在のコントロールタワーは、近代的なパドックビルディングに併設される形で建設されている。そして、そこの名物が「UFOコンベンションセンター」とも呼ばれるVIP用の空中観戦席。コントロールラインの真上にあり、最終コーナーからコース前半セクションが一望できるなんともぜいたくな観戦場所なのである。
■欧州ラウンドでは、各クラスのチームは大型トレーラーに機材を積み込み、サーキットからサーキットへと移動する。これらのトレーラーはレース中にオフィスとして使用されることも多く、パドックにずらりと並んだ姿は実に壮観。まさに重厚長大を絵に描いたような存在だ。機会があれば、これらのトレーラーの様子も子細に紹介することとしよう。
■欧州ラウンドのパドックを華麗に演出するもう1つの要素が、各チームのホスピタリティブースだ。数年前まではテントが主流だったが、いつの間にやらどのチームも専用トレーラーを持ち込み、絢爛豪華なユニットへ様変わりした。ごくふつうのトレーラーがこれらの「建物」へ姿を変える様子は、一見の価値あり。レースウイークの期間中、チームスタッフはここで食事をとり、ゲストの接待や取材対応、各種打ち合わせなども行う。チームによって内装や食事のメニューなどもさまざま。機会があれば、こちらも近日中にじっくりご紹介したい。乞うご期待。