サーキットから目と鼻の先の海岸沿いにはイタリア有数の保養地、リミニ、リッチオーネ、カットリカといった街が並ぶ。映画監督のフェデリコ・フェリーニも晩年はこの一帯で過ごしたという。
■昨年からグランプリカレンダーに復活した、ミサノサーキットが舞台のサンマリノGP。大会名にサンマリノ共和国の名前が冠せられているものの、実際の同国はミサノサーキットから10km少々内陸へ寄った場所にある。つまり、サーキットの地理的な所在地はイタリア国内、というわけである。初夏にトスカーナ地方で行われるイタリアGPに続き、同国での開催はこれがシーズン2度目。山間部のムジェロサーキットと比較すると、海に近いミサノサーキットでは、観客のたたずまいや雰囲気にも、どことなくのんびりとした穏やかな保養地気分が漂っているようにも見える。サーキットから海水浴場や保養地が並ぶアドリア海までの距離は、車で5分少々ということを考えれば、それも当然かもしれない。
■サーキットエントランスからゲートまでの100m程度の道路の名称は、"Viale Daijiro Kato"。サーキット近郊の街で暮らし、イタリア人ファンの間でも人気が高かった加藤大治郎選手の功績を讃えてこの名称がつけられた。レースに先立つ木曜日には、サーキット近くの公園で、イタリア語の「dedicato(献納)」を意味する"Dedikato"なる記念イベントも行われた。
■ムジェロ同様、今回もイタリア人関係者はゲストの応対で大わらわである。若者や一般成人男女に限らず、小学校低学年とおぼしき子供たちや老夫婦がゲストパスを誇らしげに首からぶら下げて、パドックやピットを出入りする姿は、ごく当たり前のようにあちらこちらで見かける。彼らこそが、この国のモータースポーツ人気を支えている、ということだろう。
■ミサノ一帯は、多くの選手を輩出していることでも有名である。サーキットからわずか4kmほどのところに実家がある選手、10kmほど離れた集落から大応援団がやってくる選手、近郊のカート場でミニモト(ポケバイ)の腕を磨いた選手等々、クラスや年齢を問わず、この地域と関わりのあるライダーや関係者は驚くほど多い。