首都ドーハから車で約20分ほど走ると、荒涼とした砂漠の中にこつ然とサーキットが姿をあらわす。5回目の今回、初のナイトレースとなった。
■いよいよ2008年のMotoGPが開幕した。戦いの舞台は、カタールの首都ドーハ郊外に位置するロサイルサーキット。砂漠の真ん中に建造されたこの場所から、激しいバトルの火ぶたが切って落とされる。今回の最大の注目はなんといっても、グランプリ史上初というナイトレースのスケジュールだ。コースサイドに設置された照明設備は約1000本。総計540万ワットの電力が、日没後のサーキットをまるで真昼のような灯りで煌々と照らし出す。
■ナイトレースだけに、タイムスケジュールも変則的なものになる。125ccクラスのフリー走行開始が午後6時。日差しの強い昼間は半袖でちょうどいいくらいの気候だが、砂漠地帯だけあって日没後は急速に気温が低下する。夜のパドックでは、ほとんどの関係者がフリースやジャケットを羽織っていた。
■カタールでのGP初開催は2004年。今回で5年目になるが、レースの本場ヨーロッパと比較すると、ロードレースの認知度はまだまだこれから、というのが実情だ。それでも、ナイトレースという物珍しさも手伝ってか、金曜日の初日から三々五々、観戦客がやってくる。ここロサイルサーキットの常設観戦席は、収容数5000人のグランドスタンドのみだが、観客たちは誰もがゆったりとくつろいでレースを楽しんでいる。
グランドスタンド側へ回ってみよう。観戦席へは階段ではなく、らせん状のループで上へ昇る仕組みになっている。さりげなく配慮のいき届いたバリアフリー設備、という親切な設計だ。観客席からは、ピットレーンが一望できる。サインボードを出すチームクルーや写真撮影をするカメラマンの方々の姿も、思った以上に近い距離で観察できる。それにしても、夜間走行を見ていると、どことなく鈴鹿8耐に似た印象を抱いてしまうのは、やはり我々が日本人だから、なのだろうか。
ピットボックスが並ぶビルディングの1コーナー側、コントロールタワーの近くには、どうやらプレスルームがあるようだ。室内の灯りが闇の中にくっきり映えて、仕事に励む各国ジャーナリストやフォトグラファーの姿をグランドスタンドからも眺めることができた。