![]() |
−スタッフのモチベーションとしても、いいシーズンの終わり方ですね。 「実は、今回のレースを区切りに、私も含めてかなりのスタッフが入れ替わります。来年に向けた次のスタッフは、勝ちにいくという意味でHRCの経験者たちや主力部隊を引き抜く形で構成しています。ライダーの言っていることを正面から受け止めて、勝てるマシンを作り上げて、それを土台に進んでいるんだから疑う余地は何もない。まっしぐらに、どーんと行け、という体制でいくので、開発はよりスムーズに進むと思っています。ヤングジェネレーションに21世紀のHonda Racingを伝えていくための土台やきっかけは作れたのではないでしょうか。やればできる、ということを最後に認識できたのは大きいことだと思います」 −ところで、Hondaのサテライト勢を振り返るとどうでしたか?
「ワークスチームが苦戦した分、サテライト勢にも結果的に苦労を強いることになってしまいました。その意味では彼らに申し訳ないことをしたと思っています。この数戦を見ても、マルコ(メランドリ)とトニ(エリアス)がそれぞれセパンともてぎで1回ずつ表彰台に上がった程度ですからね。特にマルコについては条件さえ整っていれば1、2勝はできていたと思うのです。中野(真矢)君はフロントに問題を抱え続けていて、乗り方も変えて、と、そういう意味で今年は苦しいシーズンでした。日本人だからということだけで、えこひいきはできない。結果的に彼にはしんどい思いをさせてしまったな、という思いがあります。だから、個人的な意見としては、このまま1年でHondaライダーを終わってしまうのは残念だ、来年に向けてなんとかシートを確保できないか、と思っていたのですが、グレシーニレーシングに移籍することができてよかったと思っています。しかし、これは彼とも直接話をしたのですが、もう来年は言い訳はできない。でも、それが逆にモチベーションアップにもつながるし、Honda2年目の来年は、最終戦でダニが優勝したマシンでおそらくシーズンをスタートすることになるでしょうから、それとBSタイヤと中野選手いう組み合わせが実現されるわけで、結果が楽しみです。
−総じて、来シーズンは楽しみな要素が多そうですね。 「ダニは、あのマシンをしっかり進化させていけば、今季以上のパフォーマンスが望めます。ニッキーは、同じミシュラン勢のダニやライバル陣営の選手たちがダメなときに上位にいたこともあったわけですから、条件さえ揃えばそういうことが十分に起こりえる実力を持っているわけで、今年はランキングは芳しくなかったですが、テクニック的には今年がこれまでで一番優れていたと思います。今シーズンの開幕前には、皆が口を揃えて『ニッキーのようなスーパーバイク出身のライダーが、どこまで250ccのように走れるか』と指摘していましたが、そんな心配は無用でした。 来年は今シーズン以上にさらに差が縮まって、詰めの甘い陣営が負ける。常に緊張と集中力を強いられるレースが続くと思います。勝ったあとに負けたというこの2年間の反省を踏まえながら、実際にデータを集めてマシンを作ってきた部分では、やっと開発陣の努力も結果に結びついてきた。自分たちの作ってきたモノがいい結果を出して評価されるのは、やはり、誰でもうれしいものです。私たちは現場から日本の開発陣にリクエストを出すのですが、それはある意味メッセンジャーボーイのような役割でもあります。勝てなくて本当に困っているのはむしろ、レースをやっている当のライダーやチームなんです。あるいは、サーキットにやってくる観客の皆さんやHondaを応援してくれるファンの方々は、もっと苦々しい思いをしているかもしれない。この3年間、私と一緒にやってくれた若いスタッフたちには、そういう意味ではいい勉強になったと思うし、今年の悔しさを教訓にしなくちゃいけない。一生懸命やれば、自ずと結果はついてくる……いつもそう思っています」
|
![]() |