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−そこに追い込むためにはマシンやライダーのポテンシャルに加え、コースの特性も大きく関係してくるのでは? 「そうですね。ライバル勢のマシンよりも燃費がよくて、速いペースでレースを引っ張っていき、うまく駆け引きをしながら相手のガソリンを減らしてしまう作戦に出れば、最後は自滅に追い込める。ただ、どのコースならそれが可能で、どこまでプッシュすればその状態に持ち込めるのか、というところはまだ未知数です。いずれにせよ、相手を押さえ込むだけの同等の馬力を備え、抜かれても抜き返す状況を作ることができれば勝てる。調子のよいニッキーをもってしても、表彰台の頂点にはあと2つステップアップが必要で、ダニもマシンに悪いところはなかったと言いながら4位で終わっているわけです。ならば、マシンのレベルをもっと上げなくてはならない。そのレベルに一刻も早く到達するために、開発陣が一生懸命がんばっているところです」 −そのレベルに到達できるのは、いつごろになりそうですか。 「レースタイムのギャップからいうとまだまだ遠い、というのが実感です。コンマ何秒の差で負けたわけではないのですから。でも、そこはエンジンの馬力やリニアリティだけの問題でもなく、今も話したとおり、タイヤとの微妙な組み合わせをしっかり合わせていかないと、結果的に大きく離されてしまうことになる。逆に言えば、その紙一重のところをうまくやれば、あんなにギャップは出ない、ということでもあるのだと思います。つまり、どうやら性能やパフォーマンスに大きな差があるわけでもなさそうで、タイヤとのコンビネーションも非常に大きな要素になっているような気がします」
「そうですね。今回のニッキーはよくやってくれましたが、彼としてはフロントの安心感をもっと出したい、と訴えています。フロントの安心感、といっても、減速性能やウエイトトランスファーなどさまざまな要素があると思うんですが、それら全部をひっくるめて突っ込むときのフロントの安心感、と彼は言っている。とはいっても、じゃあフレームを改良すればいいとかサスペンションを調整すればいいとか、そういう単純なことではなく、彼の求めるものをハードとして渡してあげるためには、複合的な要素が絡み合ったものをクリアにしなければならないので、そのためにはライダーと密にコミュニケーションをして、技術者がイメージしながら組み上げていくしかないんだろうと思います」 −ニッキーと比べて、ダニはその部分についてはあまり不満は訴えていないのですか? 「フロント、という言葉で表現してはいませんが、第7戦のカタル二アで、前を走る2人の様子を見ながらずっとアタックしなかったときがあったでしょう。あのときに、『あれ以上いったら、コースアウトするか転ぶかだったので攻めきれなかった』と言っているんです。それは別の言葉で置き換えれば、『それ以上攻められるフロントの安心感がなかったから突っ込まなかった』ということです。つまり、彼は攻める手段としての減速フィーリング、ブレーキ性能を指摘しているわけです」 −では、この2戦でダニとニッキーに対して新しいパーツは投入したのですか? 「ワークスですから、もちろん常に新しい試みは行っています。ただ、先にも説明した通りベースは、カタルニアでの事後テストの仕様で固まりました。あとは、ミシュランと協力してタイヤテストをさらに進めていきたい、ということも考えています。最初のころは高回転高馬力を要求していたニッキーも、リニアリティ系のパーツを入れていくと、その重要さをすぐに理解してくれました。すでに説明したとおり、ここ一番のパンチがあってもリニアリティがないとラインの修正に時間がかかってしまいます。それよりも、平均スピードが速いほうが確実に結果につながるわけですから。 −とすると、次の2戦、ザクセンリンクとラグナセカはかなり期待ができそうですか。 「次の2戦でトップを取らなければもうあとがない、という心情です。ワークスの2人は、この勢いをさらに加速させてたたみ込んでいくしかない。ダニはまだまだいける選手です。本人が訴える、突っ込みきれない、という問題も、単純にハードの問題なのか、それとも精神的にちゅうちょするものが吹っ切れれば、あるいはもっと攻められるのかもしれない。ニッキーがいけるのなら自分もいけるはずだ、という自負もあるはずです。だから、お互いにいいところを刺激しあって、どんどんたたみ込んでいく。マシン開発はここまで来た、さらに攻めなきゃいけない、だから2人で協力し合ってマシン開発やパーツの改良をもっと高い位置に持っていく。そして、この2人に最高の結果を出してもらうため、開発陣がさらに奮起する。そういった形でふたりのライダーとチームスタッフ、開発陣がそれぞれに刺激しあえば、強いワークスがつくりあげられるはずです。強いワークスが存在してそれが重石になれば、その効果がサテライトチームにも波及して、全体がさらにつり上がっていく。
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