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−課題、とは具体的にどういったものですか 「コーナー進入ではフロントの信頼性、コーナリング中はリアのトラクションです。ウェイトトランスファーも含めて、フロントの接地感からリアのトラクションまでのうまいつながり方がまだまだバランスできていない。ニッキーに限らず、Hondaライダー全員を見回してみても、おしなべてフロントの信頼性を指摘している選手が多い。ただ、そこにはライダーごとに特徴や癖があるから、我々はそれも合わせて見極めていく必要があります。たとえばマルコの場合は、単独で走るとロングランでもそこそこのタイムが出るのですが、本番になるとタイヤが保たなかった、というコメントが出ています。だとすると、それは競り合って攻め方を変えたときにタイヤを保たせることが難しいのか、それとも、そもそもタイヤにきついバイクなのか。あるいは、フロントの接地感を改善しても、今度はタイヤが保たないようでは、それも意味がない。トータルなバランスを考えながら、しかも、それぞれのライダーの好みの幅をセッティングの範疇でおさまるようにストライクゾーンを作らなければならない、というわけです。戦略的な面でも、これはとても重要です。というのも、今年からはタイヤの使用本数が決められていて、しかも、あらかじめ使うタイヤをレース前に選択しておかなければなりません。金曜、土曜と日が進むにしたがって、コンディションが変化して選んだタイヤから多少ずれていった場合でも、セッティングである程度カバーできるマシンでなければ、とても毎戦、優勝を争うことなどできっこありません。しかも、シーズンはすでに始まっているわけですから、今後は事後テストまでパーツを試すのを待たずに、場合によってはレース中でも投入していく、という状況も出てくるかもしれません」 −レース中のフリープラクティスなどでパーツを投入する場合は、タイヤ規制がより大きく影響するのではありませんか。 「本数制限のあるなかで行うわけですから、もちろん安易には実施できません。国内で充分にテストを済ませて目処の立っているパーツでも、ライダーが実戦投入のリスクを背負ってでもやるべきかどうかという判断や、あるいは、試してみたけど使わないと決定する場合の見極めも重要です。だから、ライダーにその気があって、我々も勝算があるものをケースバイケースで投入していく、ということになるでしょう」 −では、開幕戦の総評は……。 「ファンの皆様には申し訳ない、私自身は情けない、という気持ちでいっぱいです。冒頭にも言いましたが、レースになっていなかった。もっとポテンシャルを上げていかなければならないことを痛感しました」 −第2戦ヘレスは、ダニがPPを獲得して優勝への期待が高まったのですが、終わってみると2位でした。 「このレースも、私見ではレースになっていませんでした。気温も路面温度も1カ月前のテストのときと変わってない状態で、自分たちのタイムはそのときと同じなのに、ライバル勢は上がっている。これでは勝てるわけがありません。ということで、レース翌日からの事後テストではいろいろと試し、そこでニッキーもいい方向性を見つけました。これを契機に、次のトルコではぜひとも上げてきてほしいところですね」 −事後テストは、どういう内容だったのでしょう。 「不安定な天気になってしまったのですが、主にシャシーについてテストしました。実はレースのプラクティスから本番まで、ニッキーとダニはそれぞれ異なる仕様のニューシャシーを使っていました。それぞれが、そこでかなりいい方向性が見えたのですが、まだ課題もあるので、そこをどう変えていくかという作業にとりかかっているところです。先ほどの話ではありませんが、本来なら事前に充分テストしたもので挑むべきなんですが、ライダー自身がリスクを背負ってでもやる気になってトライしてくれた。その結果、悪くないということで最後まで使い切ったというわけです。そして、事後テストでダニが使っていたシャシーをニッキーも試し、今後のマシン開発の方向性を見いだせました。」
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