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「今回のダニは、決勝レースで早々に自分のペースを作り、最後に追いかけられてもギャップが詰まらない状態に持っていくという展開をきっちりやってのけました。早い周回の5ラップ目に、少し急いで転倒しそうになりましたが、あれはできるだけ早く前に出て自分のペースを作り、後続との間隔を開いてしまいかったからなんです。ピットからはできるだけ早く前に出るようにサインが出ていたし、自分でもそうしたいと考えていたのでしょうが、データを見るとやはりミスをしているんですよ。たぶん、リアブレーキにつま先がひっかかったような形になって振られてしまい、修正しようとしてああなったんですね。とはいえ、フリーから予選まで安定して良かったから、このような展開に持ち込める手応えは充分にありました」
−250cc時代の勝ちパターンのような走りでした。 「そうですね。もし、ライバル陣営がレース序盤には苦労しながらも終盤で追い上げてくると最初からわかっていて作戦を立てるのならば、今回のようなパターンがベストだと思います。でも、我々も最初からわかっていたわけではないんですよ。ライバル勢も時々刻々と変化しているでしょうから、そのあたりの読みと作戦は、ケースバイケースで変わってくるでしょうね。今回のようなパターンなら、こちらはできるだけ早めに自分のペースを作って、最後に追いかけられても届かないだけのアドバンテージをつくらなければいけない。しかし、フロントローに一緒に並んだ場合にはまたやり方は違ってくるでしょうし、コースによっても状況は少しずつ変わりますから、勝利を目指す方法はこれ一辺倒とは限りません」 −対照的に、今回のニッキー(・ヘイデン)はいまひとつ結果がふるいませんでした。 「従来からの課題だったエッジグリップやトラクションの改善を狙って、金曜に新しいフレームやリンク回りを試したのですが、いいところも悪いところもあり、ニッキーを少し混乱させてしまったかもしれません。ワークスライダーなので、時間に限りのあるレースウイークでもテスト的な要素はどうしても入ってきます。その中で明確な差が出てくれば、一気にそちらに切り替えてセッティングに専念するのですが、試した段階で天候やトラクション状態などを含め、深追いすべきかすぐにやめるべきかを選択するのはあくまで状況次第です。臨機応変な判断を常にやっているのですが、今回は少し間が悪かった。最終的には7位ですから、本人のリズムを狂わせてしまったことは我々の反省点として素直に認め、次につなげていきたいと思います」 −マルコはあの体で、最終ラップまで激しいバトルを続けましたね。 「体のほうは、前戦ほど辛い状態でもなかったようですね。セッティングを詰めていく段階で、少し混乱したところもありましたが、最終的にはリズムに乗れて最後まで果敢なライディングを見せてくれました。ただ、マルコの場合はそうやって吹っ切れるまでに意外と時間がかかってしまうことがあるんですよ。だから、そこをどうクリアしていくかが次の課題です」 −一方、序盤でトップ争いに加わっていたケーシー(・ストーナー)は、最後に少し、差を開かれる恰好になってしまいました。 「ケーシーは、元気がよくてポテンシャルの高さも充分にアピールしてくれているのですが、ここまでのレースでは転倒リタイアも多かった。だから、その元気さを結果につなげていくにはどうすればいいのか、というミーティングをカタルニアで持ったんです。しっかりと結果を残すために、これ以上アタックしてもタイヤが保つかどうかを計算しながらペース配分を考えて、ある程度のセーブをし、あの結果になったと思うんですよ。最後までトップを走っていても転んでしまったらそこでおしまい。途中でどんなにすごいパフォーマンスを見せても、完走してこそのレースなんです。今回は最後まで走りきっているから、自分でもそういうことを考えたのだと思います。あとは、結果を出し続けながらどんどん自分の限界を高めていけばいいんです」
−250ccはあまり芳しい結果ではありませんでした。 「トップ争いの最中にアンドレア(・ドヴィツィオーゾ)が転倒し、青山周平君も転んでしまいました。青山君はスタートも悪くなかったし、レース序盤でもトップグループに食い込んでいただけに残念です。アルベルト・プーチ監督も、スタートが後ろのポジションでもどんどん上位に食い込んでいくことができるようになったので、次はフリープラクティスでもっと早い時間からいいタイムを出せるようになりなさい、と指導しています。1年目でコースにまだ慣れていない面もあるとは思いますが、早く順応できるようにならないと、いつまでたってもトップ集団には絡めません。せっかく追い上げることができるんだから、次はいいタイムを出すことが彼の目標ですね。そういえば、今回はたまたま兄の博一君のピットが我々の隣だったのですが、250ccクラスのレースがはじまる前にダニがその前を通りかかり、中をのぞき込みながら博一君に対して、スロットルを煽るジェスチャーをやってたんですよ。『ガンガン行けよ』というようなメッセージだったんでしょうね。で、今度はMotoGPのレースが終わったときに博一君がピットの前を通りかかって、ダニに対して同じジェスチャーをやってたんですよ。レース前に自分がやられたもんだから、今度はお返しのつもりで、『優勝おめでとう』ってやったんでしょうね。あのふたりは、やはり仲がいいですよ」 −次のザクセンリンクサーキットはかなりコンパクトなコースです。Honda勢のコースとのマッチングはどうですか。 「細かいサーキットという意味では、特に250ccクラスでは我々が有利かもしれないですね。MotoGPもいい流れで来ているので、是非ともこの調子をキープしていきたいところです」
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