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「今回のトピックは、やはり、ニッキーでしょう。昨年のアメリカGP以来の勝利です。ラスト2ラップのバトルについて、結果論でいろいろ言うことができるかもしませんが、最後にトップでチェッカーを受けることができたのは、技量だけではなく、精神力や運もあり、タイミングもちゃんと掴めているからです。レースは、その途中にいろいろあっても、最後に前にいなければ結果が残らない。最後の最後に1センチでも前にいれば勝ち。そういうことを考えると、最後に前にいたのはニッキーだから、あれでいいんだと思います。見てる人にとってはエキサイティングで楽しいレースだったと思うし、ライダー同士の意地の張り合いがあっても、後腐れのないクリーンな戦いでした。しかもニッキーにしてみれば、2位か3位という結果が続いていましたから、そのモヤモヤを吹っ切るいいレースだったといえます。誰が前にいても、徹底的について行く走りができるのは、それだけチャンピオンに近づいてるということだと思うんですよ」 −そして、ニッキーはHonda最高峰クラス200勝目を飾りました。 「実は、私たちスタッフはあまり気にしていなかったんです。前回優勝したレースで、あと一勝すると200勝、と言われていたのですが、目の前にあるレースに集中していて、そんなことはすっかり忘れていました(笑)。ヨーロッパのスタッフが記念Tシャツを用意してくれていて、それで思い出したんです」 −表彰台でのニッキーも本当に嬉しそうでした。 「シャンパンファイトでも、とても喜んでいましたね。勝利に向けていつも相当に集中しているし、その証拠にここまで表彰台を落とさずに来ています。これからもこのリズムを持続してくれるでしょう。特にこれからのシーズンは、ライバル勢の自力優勝をなくすくらいの点差を少しでも早く稼ぐつもりで、さらに集中していかなければいけませんからね」 −一方、ダニは3位に入りました。 「彼は、あのコースをあまり好きではなかったようです。とはいっても、そこはやはりワークスライダーで、精神力も強く、結果を残さなければいけないことは充分にわかっているからこそ、表彰台を獲得できたのですが、顔色を見ている限りでは、あまり気持ちよさそうではなかった。嫌いというよりも、昨シーズンに250ccのマシンを自由自在に操っていたのと比べて、今は重量もパワーも大きさもある分、自分のイメージから挙動が少しずれてしまうために違和感を感じている、といったほうがいいのかもしれません。ただ、チャンピオンを狙うのであれば、それは克服していかなければいけない。当然、彼なら乗り越えて行くでしょうが。ダニの面白いところは、だから勝てない、と言うわけではないところなんです。フロントがプッシュするとか、ここのコーナーではらんでインにつけないとか、そういうことを言うのではなくて、『僕はもっと楽しく乗りたいんだ』というコメントが返ってくる。表現の仕方が、他のライダーとはちょっと違いますね」 −それは意外ですね。もっと細かい指摘をするようなライダーにも見えていたのですが。 「マシンのどこかに問題があるときは、端的に指摘します。ただ、マシンのここを修正すると決まれば、あとは文句を言わない。あそこのコーナーは楽しく乗れたとか、ここのコーナーが楽しくない、という、そういうコメントの仕方なんです」 −ダニと最後までバトルを続けたケーシー(・ストーナー)は、4位に入っています。 「このところ、転倒が多かったですからね。彼も初年度で、ポテンシャルの高さは発揮しているものの、なかなか結果がついてこなかった。その意味では、前回のレースはなかなかでした。同年齢で最大のライバルとバトルになったわけだから、モチベーションもそうとう上がっていましたよ」 −そして、下の順位からそのふたりに追いついたKR211Vのケニー(・ロバーツJr.)も、たいしたものです。 「前のバトルがあまりに激しいので邪魔をしては悪いと思った、とホントか嘘かわからないようなことを言ってました(笑)。そんなジョークはともかく、前回も申しあげたとおり、彼のマシンもかなり良くなってきたことが、今回のレースでも証明されたということです」 −今回のレースの結果、ポイントランキングではレプソル・ホンダ・チームのふたりがトップと2位を占めることになりました。 「圧倒的に強いワークスの復活は、2年前に私が総監督に就任したとき、自らに課したテーマでした。それまでの数年は、サテライトチームに速い選手がいる、という構図で、これは裏返すと、Hondaのマシンはサテライトでも非常にレベルが高いことの証明でもあるのですが、そのような形がイレギュラーであることに変わりはありません。その構図を本来あるべき形へ戻すことが個人的な課題だったんです。だから、今シーズンは強いワークス作りという仕事をやり遂げたいと思っています。今は確かにいい流れで来ていますが、これもレースと同じで、直前までよくても最後に逆転されてしまっては意味がない。結果を残さなければ何もならないんです。だから、今の流れを維持しながら最後の結果に結びつけていくために、これからのレースも総力を挙げて徹底的に戦っていきます。どうぞご期待ください」
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