Honda 〉モータースポーツ 〉MotoGP 〉HRC総監督・石井勉レポート |
![]() ![]() |
「ニッキー(・ヘイデン)は、表彰台に立ったとはいっても本人は満足してないし、我々もイタリア人選手の1‐2フィニッシュを阻止したかったので、その意味では残念なレースでした。ライダーは精一杯やっていると思うので、もっとマシンの改良を進めなければいけない、と思いましたね。あと、ケーシー(・ストーナー)の転倒は、トップグループ走行中だっただけに残念です」 −あそこはもともと転倒の多いコーナーですね。
−確かに、ダニは250cc時代から冷静なライダーという印象があります。 「ダニは、マシンを降りてきたときのコメントも冷静ですからね。今回の結果を受けて、月曜の事後テストでもフロントタイヤに集中して取り組んでいました。もともと、ダニのチームはよっぽどのことがない限り事後テストをやらないんですよ。日曜のレースにピークを持ってきているので、そのあとに漫然と流すようなテストならやらない、とクルー・チーフのアルベルト・プーチははっきり割り切っているんです。そのかわり、重要なテストならしっかりと取り組む。今回は、試していないタイヤがまだ4〜5種類あったということと、決勝レースの内容を考えると、次に備えてやるべきことはやりましょう、という判断で急遽事後テストをやることになったんです」 −それにしても、とてもMotoGPクラス6戦目とは思えない目標設定の高さですね 「今回もシーズン全体を見据えての判断ですし、チャンピオンを狙う意識があるからこそ、そういう走りになるんでしょうね。今、Hondaのライダーたちは非常にバランスのとれた、いいライバル関係にあるんですよ。同年齢で前年度250ccランキング1位と2位のダニとケーシーがいて、ダニが来たことでワークス4年目のニッキーにも緊張感が生まれている。一方、マルコ(・メランドリ)は去年MotoGPランキング2位だから、それも刺激になる。だから、今回のレースも見てる人は非常にエキサイティングだったと思いますよ」 −250ccクラスはどうでしたか? 「アンドレアは、MotoGPクラスのニッキーと少し似た状態なんですよ。開幕以来の連続表彰台でランキングトップを維持していますが、まだ優勝がない。マシン面でも、テクニカルコースではがんがん行けるけれども、トップスピードの伸びるコースになるとどうしてもライバル勢相手に苦戦してしまう、という状況です」
−特に、今回の舞台となったムジェロサーキットはライバルチームのホームコースですからね。 「そう。とはいっても、年間を通じて考えた場合にテクニカルコースでは逆に有利なわけだから、弱点も長所もあるなかでどうやって勝とうかとチームが一丸となって作戦を練る。足らない部分は、頭を使ってどうするかみんなで考えることで、チームワークがよくなっていくと思うんです。特に今回のレースでは、アンドレアと高橋裕紀君のヒューマンジェスト・レーシング・チームは、あわよくばワン・ツー・フィニッシュ・・・というところまで来ていたから、チーム内の雰囲気は非常にいいですよね」 −確かに、ピット内にもいい意味での緊張感と一体感があるように見えます。 「ですよね。あのふたりは、似ているようでキャラクターも乗り方も違いますからね。今回は燃料系のスタッフを特にアンドレアに張り付かせたんです。高橋君とアンドレアは、レースが終わったときのピストンの状態が微妙に違うんですよ。加速時や伸びきったときのコメントも、確かにふたりとも違う。アンドレアのほうが神経質に訴えているので、じゃあ徹底的に調べようということで、問題をクリアにしました。エンジン内にはデトネーションカウンターというものがあって、燃焼室内での異常爆発(デトネーション)をカウントしているんです。デトネーションは、ライダーによって伸びきりで出る選手や加速中に出る選手など、乗り方によって様々なんですが、そこを上手くセッティングしないと、途中からピストンを消耗してパワーがなくなってしまう。だから、カウンターのデータを見ながら、ライダーの好みにも合わせてうまくセッティングすることで全体のフィーリングを良くしていくんです。いわば職人芸の世界ですよ」 −個人の好みや乗り方でそういう違いが出てくるのは面白いですね。 「MotoGPもコンピュータでインジェクションマッピングを制御できますが、2ストロークの場合はキャブレターですからね。メインジェットだスロージェットだ、ニードルは何段にするテーパーはいくつという腕と勘と経験の世界があって、これがまた結構大変なんです(笑)」 −さて、次はダニの地元スペインGPです。 「今回のレースでイタリア人選手たちに気合いが入っていたように、次回はダニが必勝態勢でレースに備えています。前回もいいましたが、節目のレースで強運を連れてくる力を持った男ですから、金曜のフリープラクティスから落ち着きながら果敢にアタックする姿を見せてくれると思いますよ」
|
![]() |
Honda 〉モータースポーツ 〉MotoGP 〉HRC総監督・石井勉レポート |