Honda 〉モータースポーツ 〉MotoGP 〉HRC総監督・石井勉レポート |
![]() ![]() |
「何を選んでいるかはわかっていたので、タイムが落ちた瞬間に、やはり、と思いました。あのレースであえてソフトタイヤを選んだのは、彼らは序盤にペースを作って引き離し、あとはそれをキープする戦略だったからなんです。ミシュランとも相談して、日曜午前のウォームアップで耐久性を確認して最終決定するつもりだったんですが、そのセッションが雨になってしまった。でも、チームとライダーはそのタイヤに賭けて、このタイヤで行く、と決めたんです。だから、結果としては3位に終わってしまいましたが、その場での彼らの判断は良かったのではないかと思います」 −逆に、優勝したマルコは硬めのタイヤを選択していたようですが。 「正直なことをいうと、ある意味では我々も予想外だったんですよ。金曜からのセットアップを見ていると、今回は優勝できるようなロジカルな組み立てとは言いがたかった。ところが、トップを独走しかけていたロッシ選手(ヤマハ)がコースサイドに止まっているのを見たとたん、俄然ラップタイムがあがった。だから、タイヤの効果以上に精神的な要素も大きかったのではないかと思います。実際にデータを見ると、あの周回からぐんとタイムが上がってるんです」 −一方、ニッキーは苦しいレースでした。体調が良くなかったのですか。 「インフルエンザだったことは本人もコメントしていますが、実はそのウイルスが消化器系に影響したようで、レースの最中に吐き気とも戦っていたんです。彼の事ですから、ここまでは言っていないと思いますが、レース翌日も、まだ声がガラガラな状態にもかかわらず『事後テストをやる』と言うので、無理をせずに帰って休養するように言ったのですが、空が晴れてきたら、『やっぱり乗る』と言ってツナギを着込んでいました。案の定、ピットに入ったら『気持ち悪い……』と言いだしていましたが(笑)、結局テストメニューを消化していましたね」 −ケニー・ロバーツJr.はピットスタート後、早々にリタイアしてしまいましたが、原因は? 「当初は燃料ポンプのリレーが原因で、燃料が間引きされて失火が出たのだと思いました。日本に持ち帰って調べた結果、リレー本体ではなく、カプラーの接触が原因だったようです。雨のセッションでは相変わらずの素晴らしい腕を見せていただけに、残念です」 −玉田選手も、少しずつ復調の兆しを見せています。 「本人も言っているとおり、だいぶ良くなってきたようです。接地感は良くなってきているようですが、旋回力にはまだ違和感があるのかもしれない。でも、乗り方を見ていると、膝より先に頭を擦りそうなライディングスタイルが戻ってきていますから、完全復活も時間の問題でしょう」 −250ccクラスでは、ついに高橋裕紀選手が優勝、フル参戦5戦目の青山周平選手も3位表彰台を獲得しました。 「青山兄弟と高橋君は小さい頃からずっと一緒で、いい感じのライバル関係なんですよ。あいつには負けたくない、とみんなが思いながらそれぞれ仲もいいから、お互いに刺激し合って切磋琢磨しています。しかも今回はヨーロッパラウンドの緒戦だったので、そこで勝った高橋君は大きな自信になったでしょう。今年になって失敗も特になく、相手の出方を読んで逆にアタックを仕掛けていくレースが続いているから、今後も楽しみですね。周平君も、スタートに成功していればもっといい結果になっていたかもしれない。それくらい乗れていて、監督のアルベルト・プーチも『今回はミスがなかった』と合格点を与えていました」 −次のムジェロはイタリアンライダーのホームグランプリ。しかもHondaにとっては、今回のマルコの優勝により最高峰クラス200勝まであとひとつと迫りました。何か、すごいレースになりそうな予感がします。 「200勝は特に意識していません。Honda勢も好調ですが、ムジェロでは毎年イタリアンライダーが強く、ライバル陣営も速い選手が揃っていますから、油断はできません。でも、ダニは強運を引っ張ってくる男ですから、ひょっとしたら何か起こるかもしれませんよ」
|
![]() |
Honda 〉モータースポーツ 〉MotoGP 〉HRC総監督・石井勉レポート |