HondaモータースポーツMotoGPHRC総監督・石井勉レポート
HRC総監督・石井勉レポート


 アジアから欧州へと舞台を移しながら、今シーズン初の2週連続開催となったMotoGP。第4戦の上海ではレプソル・ホンダ・チームがワン・ツー・フィニッシュを達成、第5戦のルマンではHonda勢が3クラス全てで優勝を飾り、2レースともに素晴らしい結果を見せた。

−上海GPでのダニ(・ペドロサ)のMotoGP参戦わずか4戦目での優勝は、世界中で大きな話題になりました。

「そうですね。フレディ・スペンサーに次ぐ史上2番目の最年少記録で、特に彼の母国スペインではお祭り騒ぎになったようです。しかも、ポール・トゥ・ウィン。金曜と土曜はすっきりしない天気で雨にも降られましたが、今回のダニはレイン・コンディションのフリープラクティスでもいい走りを見せていました。同じようなコンディションだった第3戦のイスタンブールでは、雨の予選で上手く走ることができず、下位グリッドからのスタートだったのですが、上海では安定したところを見せ、『さすがダニは学習能力が高い』、と我々の間でも評判になっていました。しかも、ドライの予選では完璧な走りでポール・ポジション獲得ですから、充実したレースでしたね」

−チームメイトのニッキー(・ヘイデン)が2位で、レプソル・ホンダ・チームのワン・ツー・フィニッシュでした。

「ニッキーがファステストを更新したら、次の周回ではダニがそれを塗り替える、という激しいトップ争いでしたが、最後までダニが持ちこたえて先にチェッカーを受けた。そういう意味では、ダニにしてみれば完璧なレース展開でしたが、ニッキーにしてみると、今一歩及ばない残念なレースでもありました。だから、ワン・ツー・フィニッシュは嬉しいけれど、同時にちょっと複雑、という印象もあります。もちろん、片方が優勝すれば片方が2位になるのは当然の話なんですが(笑)」

−HondaとHRCの社長がともに姿を見せた珍しいレースで、Honda福井社長を表彰台に上げることができるダニの強運も印象的でした。

「確かにタイミングもいい男です。昨年のフィリップアイランドでHondaのWGP600勝達成という節目を飾ったのもダニでした。今回もそうです。何かそういうものを引っ張ってくる目に見えない力を持っているのかもしれませんね」

−ところで、Hondaの他のライダーと比べると、このところトニ(・エリアス)選手の成績があまり振るわないようにも見えます。

「最近のトニは、どうもサスを有効に使わない乗り方に変わってしまっていたようです。シーズン序盤に、クイックダイブ(フロントが急激に沈み込む動作)が気になると言っていて、それを避けようとするあまり、セッティングや乗り方に悪影響が出てしまっています。コーナー進入では、どうしてもブレーキングが早くなってしまう。また、フロントを硬くしてストロークしない方向に振ってしまうため、その反動でタイヤが跳ねる。だから、もっとコーナーに深く突っ込んでブレーキングし、サスペンションにしっかり仕事をさせながら旋回する乗り方へ変えていくよう、今まさにトレーニングを積んでいるところです。そこが改善されれば、きっと初戦の頃の快調なトニに戻ってくれるはずです」

−250ccクラスでは、アンドレア・ドヴィツィオーソ選手が惜しくも2位でした。

「上海サーキットようにストレートの長いコースでは、トップスピードの伸びるライバル勢がどうしても有利なんですが、そんな中でも最後までよく競り合ってくれました。開幕以来の連続表彰台でランキングでも首位をキープしているので、今後もこの調子で進んでいってほしいと思います」

< BACK 12 NEXT >
 
HondaモータースポーツMotoGPHRC総監督・石井勉レポート