HondaモータースポーツMotoGPHRC総監督・石井勉レポート
HRC総監督・石井勉レポート


 3日間の合計で約22万人の観客を集めた第10戦ドイツGP。マルコ・メランドリ選手(Fortuna Honda)が2位、ニッキー・ヘイデン選手(Repsol Honda Team)が3位に入り、それぞれ表彰台を獲得した。惜しくも表彰台を逃した4位のダニ・ペドロサ選手(Repsol Honda Team)と優勝ライダーとのタイム差0.307秒にあらわれている通り、最終ラップの最終コーナーまで緊迫した展開が続いた。

 「レース内容は悪くなかったのですが、結果には当然満足できません。ライダーからは、今のマシンはここがダメという指摘は特にありません。むしろ、金曜のフリー走行からずっといい調子でセッティングを進めてきたのに、最後は非常に悔しい結果に終わってしまったんです。だから、私たち以上に、ライダーたちの方が悔しく思っているに違いありません。最終ラップは三つどもえ四つどもえの激しいバトルになりましたが、チームメイト同士でもライバルですから、ああいう激しい競り合いはどうしても出てきます。我々としてもチームオーダーは一切かけていないので、今後も競り合いはあるでしょう。そういう状況のなかでどう走るかということを、ダニは250ccクラス時代にもたくさん経験してきていますから、MotoGPクラスでもそんなドッグファイトに対応できなければいけませんね」

−250ccクラス時代とはマシンやパワーの特性が違うということも影響しているんでしょうか。

「ダニの小柄な体格からすると、競り合いになったときには、250ccマシンのほうがまだ自分の意のままにコントロールできるんでしょう。とはいえ、いろんな状況に対応して、勝てるようにならないと、チャンピオンは狙えない。先にペースを作って逃げ切ったほうが得策、という場合もあるし、競って勝たなければならない場合もある。前から言っている通り、どちらもできないとチャンピオンにはなれません」

−3位に入ったニッキーも、ランキングトップを安定して維持する一方で、勝てなかったことはやはり悔しそうでした。

「いくつかの勝負どころでは、ニッキーにも得意な部分があったんです。けれども、そこをうまく使い切ることができなかった。ライバルの方は得意な部分や勝負どころをうまく使った、ということだと思います。かけひきで勝負が決まってしまった。特に今回のレースでは、マシンに特別な指摘もなかったので、自分の得意な部分をうまく使って組み立てることができていれば、トップに立っているときにもう少し後続を押さえることができたのかもしれません」

−そういえば、フォルトゥナ・ホンダの中でチーフメカニックが入れ替わりましたね。

「替わりました。マルコのリクエストでもあったのですが、監督のファウスト・グレシーニもいろいろとチーム状況を考えての決断だったようです。マルコにいい環境を作ってあげようということで、最終的に判断をしたようです。チームの雰囲気がいいと自分も調子がいい、とマルコも言ってますからね。各チームにはそれぞれの事情がありますが、そこに我々が口を挟むのもおかしな話で、私たちは監督の判断を尊重する、という立場です。今回の結果を見る限りでは、その判断は的確だったと言えますが、今後もそれが続くかどうかということが最も重要なことです」

−朝のウオームアップで転倒して決勝を走れなかったケーシー(・ストーナー)ですが、今回、新しいシャシーが入っていたようです。

「ワークスチームで十分にテストを重ねて、いいとわかったパーツは、いつも順次サテライトチームに供給しています。今回もそのひとつなので、特にケーシーだけの特別な対応というわけではありません。一気に全マシンへの準備ができるわけではありませんが、今後も適宜、いいパーツは段階的に投入していきます」

−250ccクラスでは、高橋裕紀選手が今季2度目の優勝を飾りました。

「前を走っている選手がどこでどんなミスをしてるかということを、常に冷静に見ていたようですね。落ち着いて安定した走りができていた、ということだと思います。前の選手にプレッシャーもかけていたようなので、私たちもかなり安心して見ていることができました。途中で自分も少しミスをしたようですが、相手のミスをよく見て冷静に対処していましたよ」

−反対に、アンドレア・ドヴィツィオーゾ選手は珍しく表彰台を逃してしまいました。

「彼の場合は、前からあのコースに苦手意識があって、予選タイムもあまり良くありませんでした。それと比べれば、決勝レースではそこそこ走れてはいたのですが、メンタル面では敏感なところがある選手なんですよ。決勝になれば、予選結果はさておきトップ集団に加わる走りを見せてくれるんですが、ときに繊細な部分が出てしまうことがあります」

−次のラグナセカは、ニッキーのホームグランプリなので、是非とも前戦のリベンジを果たしてもらいたいところですね。

「もちろんです。ラグナは去年初優勝を挙げていますから、特にアメリカ人スタッフの意気込みはすごいです。シーズン途中で取りこぼしているところもあるだけに、取れるところは絶対に落とさないようにしないといけませんね」

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