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CBR1000RRの開発チームを経て、2005〜2006年型RC211Vの開発責任者をつとめた吉井恭一。そして、ホンダコレクションホールの動態保存テストのライダーを務めるなど、新旧のHondaレーサーに精通した、元Honda全日本GPライダーの宮城 光氏。 2002年にHondaが生み出し、2006年まで進化を遂げたMotoGPマシン、RC211Vにはどんな想いが込められていたのか。2007年への世代交代を前に、RC211Vの進化の過程を知る二人が語り合った。 |
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2002年 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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Honda独自の5気筒V型エンジン。 誰もやらないアプローチで新生MotoGPの勝利を狙った。 |
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当時、駐在していたドイツから帰国し、CBR1000RRの開発プロジェクトをスタートさせていた吉井は、RC211Vのデビューランを興味深く見守ったという。 宮城: 新生MotoGPの開幕。吉井さんも、Hondaのエンジニアとして注目していたのではないでしょうか。 吉井: 新時代のレーサーがデビューしたわけですから、もちろん強い関心がありました。他が4気筒をやってくるなかで、Hondaが独自の5気筒というのも面白かったし、一見して他のマシンよりもずっと小さく見えたのが強く印象に残りました。見た目からキビキビとした取り回しのよさを感じることができ、僕も趣味でレースを楽しむライダーとして、まず「乗ってみたい」と思うバイクに見えました。正直なところ、それまでのレーサーには感じたことのない感覚でしたね。 宮城: エンジンのレギュレーションが大きく変わるなかで、「5気筒」を選んだことについては。 吉井: まだドイツにいたころ、開発が進むRC211Vの話を聞くことがあって「おそらく他がやって来ないと思われる5気筒で開発が進んでいることを知り、面白くなるぞ」と感じていましたね。 宮城: Hondaの人はエンジンが大好きですから、こだわっていますよね。 吉井: ええ、大好きですね。世界最高峰の舞台で戦うマシンのエンジンをいかに独創的、あるいは先進的なものにしていくか、どうオリジナリティを出していくか、というのはHondaとしてとても大切なことだと思うんです。 宮城: そのHondaらしい、独創的なMotoGPマシンであるRC211V。実際に乗られたこともあったと思うんですが。 吉井: 始めて見たときに感じたこと、触ってみて感じたこと、そして乗ってみて感じたこと。それらがきれいに同一線上にあったことにまず、驚きました。もちろん、すべての性能を引き出せるはずはありませんが、すべてが想像通り…もっと言うならば想像以上だったんですね。僕なりのレベルで乗ってみて、「楽しい」と思えるマシンだったんです。そんなレーサーははじめてでしたね。 |
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2003年 | |
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ライダーにとって真に扱いやすいマシンをめざし さらに“人の感覚”に迫った。 |
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宮城: 新生MotoGPの幕開けとなる2002年は、コーナーの進入で大きくリヤを流す様子が多く見られましたよね。一年戦ううちに、僕もそれをだんだん見慣れてくるし、他のメーカーやライダーも同じような走り方をするようになるし…。僕がライダーとして戦っていた時代では考えられない乗り方です。全くもって未知の世界だと感じました。 吉井: 4ストロークエンジンの強力なエンジンブレーキを、今からすればまだ手なずけられていなかったんですね。それに対する走り方も、対処の仕方も、それぞれのメーカーがそれぞれのスピードで対応していったんだと思います。Hondaの場合は、減速系の制御を手なずけていこうというわけで、2003年型で燃料系やクラッチ周りに手を入れて、強力なエンジンブレーキによるバックトルクを軽減していったんです。サスペンションのジオメトリーも変更して、リヤのホッピングを防ぐようにしました。 宮城: いわゆる「素」のモデルとでも言うべき2002年型RC211Vは、発生させた出力を出たなりに伝えていて、スロットルのコントロールだとか、トラクションコントロールといったものはまだ採用されていなかったということですよね。それが2003年からはある程度制御されるようになったと。たしかに、この年からはリヤをスライドさせるシーンも少なくなりましたね。 吉井: そうですね。そのあたりを制御するようになって、ライダーがマシンに合わせるのではなく、マシンの方からライダーの乗り方に歩み寄っていった、と言うこともできると思います。サスペンションのジオメトリーも、倒し込めば曲がっていくセッティングでした。曲がらないと感じたとき、ライダーはマシンにぶら下がればいい。できるだけマシンをコントロールしやすくし、ライバルと戦うことに集中できるマシンにすべく、2002年モデルを熟成した年です。 |
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