Honda
モータースポーツMotoGP田中誠レポート
VOL.8「ル・マン テストレポート」


―では、今回のレース結果を受けて、月・火の二日間にル・マンで行ったテストはどんな項目を試したんでしょうか。
 
 ミシュランの新しいタイヤテストと、あとは車体周りのパーツなどもいろいろと試しました。ニッキーについては、決勝レースで発生したリア周りの振動の原因も分析しました。マックスは、日曜のウォームアップで転倒を喫した直後ということもあって、今回はテストを見合わせました。
 
―マックスの負傷は、現在どんな状態ですか。
 
 転倒時に腰と膝を強打したため、決勝レース後はドクター・コスタ(ライダーのメディカルケアを担当するクリニカモバイルの医師)に体を抱えてもらってようやくマシンから降りたような状態でしたが、一夜明けて月曜日には、自分もテストに参加して走りたかったんでしょうね、退屈そうな様子で昼過ぎまでピットの周りをうろうろ歩いていましたよ(笑)。テストしたい項目はいろいろあるから、我々も走らせてあげたい気持ちは山々だったのですが、今回は大事を取って走行を見合わせることにしました。
 
―では、ニッキーは? 振動の原因は究明できたのでしょうか。
 
 振動の発生はタイヤやセットアップなど様々な要因が複合的に絡み合うことが多いので、今回のレースで彼が訴えていた振動は一体どのような症状だったのか、と言うことで、再現テストからスタートしました。それを解決した後、午後からはパーツテストやタイヤテストなどのメニューに移りました。
 
 チームのテクニカルディレクター、アーヴ(・カネモト)さんもニッキーの走りを観察していろいろとアドバイスをしてくれて、テストだからこそできるいろいろなトライも行えました。
 
 ニッキーにとっても、今回のテストはかなりためになる2日間だったと思います。月曜82ラップ、火曜96ラップと誰よりも多く走り込みましたし、ラップタイムを見ても、レースでのベストタイムを上回る33秒730を記録しました。
 
―他のHonda陣営もテストに参加していたようですが。
 
 モビスター・ホンダからはセテ(・ジベルノー)とマルコ(・メランドリ)の両名、キャメル・ホンダからはトロイ(・ベイリス)が参加しました。目立ったのはやはり、マルコの好調さですね。33秒台を連続してラップしていました。あそこのチームは今、本当にイケイケムードですから。うちも負けていられませんし、「マルコが力を付けてきた、ヤバイぞ」と、他のHondaのライダーたちにいい刺激になってほしいですね。
 
―ニッキーにとっては、どうなんでしょう。マルコの好調さが刺激になっていますか?

 
 彼もプロですから口にこそ出しませんが、当然意識はしていると思いますよ。ニッキーの現在の課題は、フリープラクティスや予選で出せる速いタイムを、どうやって決勝レースで維持継続するかと言うところ。速い選手の走りをどんどん吸収して、自分自身のリミットをもっと高いレベルに設定できるはずです。
 
―次のムジェロは、そのマックスのホームグランプリです。

 
 地元だけにかなり気合いが入っているし、そろそろここらで彼本来の力を発揮してくれるでしょう。ニッキーも上り調子で、マルコも高いレベルで堅調になってきつつある。セテも一瞬悩まされかけた悪いフィーリングが払拭されてきた。Honda勢全体にとっていい風向きだと思います。
 
 しかし、なんと言っても、一昨年のバレンシアで優勝して以来、レプソル・ホンダが現在20連敗中です。ムジェロやカタルニアでなんとかしなきゃいけない、と私たちも痛切に感じています。マックスにはムジェロでプロフェッショナルな仕事を期待しています。彼も我々も、求める結果はずばり“優勝”です。
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