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モータースポーツMotoGP田中誠レポート
VOL.28 バレンシアGP「有終の美を飾った若手ふたりの1−2フィニッシュ」


三日間で総計22万2000人の大観衆を集め、シーズン最後を飾る盛り上がりを見せた第17戦バレンシアGP。レプソル・ホンダ・チームは、ニッキー・ヘイデンがラストラップまでチーム・モビスター・ホンダ・MotoGPのマルコ・メランドリと息詰まる優勝争いを演じたものの惜しくも2位、マックス・ビアッジは粘りの走りを見せてシーズン最後のレースを6位で締めくくった。

「愉しくも苦しいレースでした。ニッキーが2位でレプソルホンダが勝てなかったのは残念ですが、Hondaとしては、マルコとともに若いふたりがレースを支配したという意味で非常に意義のあるレースだったと思っています」

−ニッキーは、最後の最後に勝負をかけていたようですが、マルコをパスできませんでした。

「前戦のトルコGPと比べると順調にセットアップを詰めていくことができたのですが、それでもマルコに比較すると若干詰めが甘かったようです。とは言っても、全体のタイムで比べればその差は0.03%、紙一重の差です。

大事なのは、彼らふたりがいつも安定してトップグループを走ることができるようになった、ということ。ニッキーにしてみれば『今シーズンのうちにもう一勝したかった』との思いが強かったので、今回の2位は並大抵の悔しがりかたではありません。それだけに、来年に対するモチベーションという意味では、この悔しさはきっといい方向に作用してくれるはずです」

−マックスは、予選の内容が良かっただけに今回は期待できると思ったのですが。

「残念な結果に終わってしまいました。予選ではレースタイヤのアベレージも良く、今シーズンは失敗することの多かったQF(タイムアタック用)タイヤでも、今回はビシッと決めて2列目5番グリッドにつけることができました。

ここは抜きどころの少ないサーキットだから、決勝レースではスタートに成功すればいいレースができるはずと思っていました。4周目にチェカ選手(ドゥカティ)に抜かれてしまったあとは、最後まで抜き返すことができず、予選順位よりもひとつ落とす結果に終わってしまったのは残念なかぎりです」

−マルコとニッキーが前回に引き続き優勝と2位を獲得した反面、マックスは6位と、対照的な結果のレースになってしまいました。また、ここ数戦の若手選手の台頭をより鮮明に印象づけるレースでしたね。

「今回、若手ふたりとマックスは、明暗がくっきりと分かれましたね。世代交代という意味で、人(ライダー)が変わってゆく節目のときは必ずやってきますが、今がその節目になりつつあるのかもしれません。その節目に若い力が大きな成長を見せているのは象徴的です」

−シーズン中盤戦は、なかなか勝てない悪循環に陥りかけたこともありましたが、来季に向けて明るい兆しが見えましたね。

「今シーズンを振り返ると、ニッキーとマルコの若いふたりが伸びてきたのは、本当に大きな収穫だったと感じています。ニッキーの四戦連続表彰台、そしてマルコの2連勝とHondaの若手がレースをリードしました。そういう意味でも良い締めくくりができました。勝ってシーズンを終えるのと負けて終わるのでは、全然違いますからね。
今シーズンは歯切れの悪いコメントも多かったですが、来シーズンはきっと気持ちのいい言葉が連発できると信じています」

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