Honda
モータースポーツMotoGP田中誠レポート
VOL.22 日本GP「残り5戦、終盤戦に向けて」


シーズンも大詰めを迎え、これまで以上に一戦の重みが強くのしかかる第12戦日本グランプリ。Hondaにとってこのうえなく重要なレースで、レプソル・ホンダのマックス・ビアッジは序盤から果敢な走りで、トップ争いを演じ、2位表彰台を獲得した。チームメイトのニッキー・ヘイデンは、ペースが上がらず苦戦しながらもレースを走りきり、7位でポイントを獲得した。

「悔しいですね。最後の最後までマックスはロリス(・カピロッシ選手、ドゥカティ)に食らいついていきましたが、ラストスパートで一気に1秒以上の差を開かれてしまいました。あの展開を見る限り、今回のレースについては、ブリヂストンのパフォーマンスが素晴らしかった、ということを素直に認めなければならないでしょう。しかも、ライダーのカピロッシ選手がとても乗れていた。マックスも序盤からずっとトップを競っており、内容だけを見れば優勝に匹敵する走りだったと思っています。勝てなかった我々が素直に喜べないのは当然ですが、お客さんにとってはきっと、手に汗握る展開だったでしょうね」
 
−たしかにマックスはスタートに成功し、以後もずっとトップでバトルを続けていました。
 
「ロリスとマックスの二台だけが、最後まで1分48秒台で周回していましたからね。マックスは、もてぎでの優勝経験があるだけにいいイメージを持っているし、今回のレースウィークを通じて金曜のフリープラクティス一回目から積み上げてきたことの自信もあった。特にここは、コース特性的にもチャタリングやホッピングが出にくいので、それがマックスにとっていい方向に働いたということは言えると思います。
 
切り返しでフロントに若干の振られや揺れが出て、予選ではバックストレート手前のヘアピンで少々突っ込みすぎることもあったんですが、特に大きな問題に至ることもなく順調にレース用セットアップを詰めていくことができました。そういった自信が、スタートに成功してから最後まで一切引かずに攻めつづけた走りにはっきりとあらわれていましたよね。
 
序盤からロリスを追いかけることができれば表彰台は間違いないと思っていました」
 
−このようないい状態を維持しているときに、来週も連戦でレースがあるのは、マックスにとってもいい流れなんじゃないですか。
 
「そう。もてぎでいいレースをして、この状態、イメージをキープしたままで次のセパンに行ける。それが大事なんです。優勝を経験している相性のいいコースですから、二戦連続で表彰台を獲得したこの調子で、引き続きマレーシアに乗り込んでくれるでしょう」
 
−一方のニッキーは、すこし精彩を欠いた三日間のようにも見えました。

 
「フリープラクティスや予選でも、リズムをいまひとつ掴みきれていませんでしたね。決勝日朝のウォームアップまでいくつもの微調整を試してみたのですが、どうもしっくりこないということで、結局、前日までのスタンダードに戻して決勝に臨みました。去年は、スタート直後の1コーナーで多重クラッシュに巻き込まれてしまいましたから、今回はレースで誰かの後ろについていいリズムが掴めればきっかけをつかめるんじゃないかと思っていたのですが。本人はもちろん、今回の結果には相当に悔しがっていましたし、それは私たちも同様です」
 
−玉田選手は今季初表彰台の3位に入りましたね。
 
「優勝ではない以上、完全復活! とはまだいきませんが、ようやく彼らしい走りが少しは見られるようになってきたと思いました。特に土曜午前のフリープラクティス3回目で、ブリヂストン勢も押しのけてトップタイムを記録したところを見ても、忘れていたものがようやく甦ってきたようです。精神的にも余裕が出来てきたんだと思います。
 
次のセパンとカタールは、両方ともプレシーズンテストでトップタイムをマークして調子の良さをアピールしていたサーキットですから、この調子で上手くいけばどんどん結果を出していけるはずです」
 
−マックスと玉田選手が表彰台を獲得した一方で、ロッシ選手やヤマハとのポイント差を考えると厳しいものがありますね。
 
「今回も優勝以外は負けだと認識しています。それにコンストラクターズポイントで詰めよることができたとはいっても、ほんの10ポイント近づいただけで、ヤマハとはまだ37ポイントも開きがあります。これからもまだまだ厳しい戦いは続きますし、特に終盤数戦はますます一戦一戦の重みが増していきます。ここから先の残り5戦は、すべてのレースを今まで以上に大切に戦っていかなければならないと思っています」

< BACK VOL.23 >
レプソル・ホンダ・チーム監督 田中誠レポート
HondaモータースポーツMotoGP田中誠レポート