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モータースポーツMotoGP田中誠レポート
VOL.19 チェコGP「諦めなければ確実に前は見えてくる」


4週間のサマーブレイクを挟んで行われた第11戦チェコGP(ブルノ)。フリープラクティスから予選を通じてセットアップに苦しんだマックス・ビアッジだったが、決勝レースでは一転、「ブルノマイスター」のニックネームに恥じないしたたかな走りで3位表彰台を獲得した。フロントロー2番グリッドからスタートしたニッキー・ヘイデンも、最後まで諦めないレース運びで5位でフィニッシュした。

−マックスのレース中盤での追い上げには目を見張りましたが、それだけにスタートに成功していれば、というところが悔やまれます。
 
 「たら、れば」を言ってもしようがないですが、確かにそうですね。スタートが良くありませんでした。レース中盤から後半にかけて、一台一台をターゲットにして抜いて、順位を上げていく、ああいう走りができる。もっとコンスタントに走れれば、もっと高いところを狙えるんですけどね。満足とは言えないとしても、最近はいい結果に恵まれていなかったから、その意味では、表彰台獲得は気分のいいリザルトです。チームとしても、次のもてぎに向けてはずみのつく結果となりました。
 
 今回の結果でひとつ言えることは、ネバーギブアップという精神の大切さです。前を見続けること。もちろん、今回も悔しいことや不十分なことはいっぱいある。反省をしなければ進歩もない。でも、あそこがダメだ、ここも足りない、とうじうじするんじゃなくて、前向きな気持ちでがんばって行こうと思います。諦めなければ確実に前は見えてくるんだから。
 
−マックスにとっても、モチベーションやポテンシャルがハイレベルにあることを示すことのできたいい結果といえるのでは?
 
 今こそ「おれはまだまだ終わっちゃいないぜ」というところを見せておかなければいけない、大事な局面でしたからね。ブルノでマックスのトップスピードは308.0km/hでした。2番手のチェカ選手(ドゥカティ)の303.5km/hを大きく引き離し、どのライダーよりもダントツに速いんです。これは、コーナーから立ち上がってスムースに加速を乗せていくのが上手い、ということで、技術は最高レベルにあることの証明でもあるんです。、ここで弾みをつけて、残り6戦でも是非ともいい結果を見せてほしいところですね。
 
−一方のニッキーですが、序盤はトップグループを形成していたものの、ちょうど全体周回数の折り返し地点あたりからじわじわ引き離されてしまいました。何があったんでしょうか。
 
 フロントがプッシュしてアウトに孕んでしまう問題を解決しきれなくて、中盤以降はいけなくなった、というのが真相です。この結果には本人も憤懣やるかたない様子でした。とは言え、そんな状態を抱えながらレースを走っているときでも、とっちらかって2〜3秒遅れを取るようなミスをしてしまう、ということはなくなってきたでしょう?予選も瞬発力が出せるようになってきたし、あとは全セッションを通じてセットアップをどう煮詰めていくか、決勝レースでどう戦略的に走るか。それらの部分はまだ改善する必要があります。でも、確実に進歩は見えていますからね。
 
−確かに、今までと比べると予選順位は確実に良くなってきています。
 
 そういうタイムを出せるようになってきたということが大事ですね。アメリカでポールトゥウィンの後、ザクセンもPPでここは2番グリッドだから、流れは悪くないんです。それに、なんと言っても彼はキャラがいい。上手くいかないときでも、いくら悔しくても周囲に当たり散らす性格じゃないから、以前、私が「図に乗って有頂天になれよ」と言ったそのとおりになってほしいところです。
 
 ここに来てニッキーの予選の仕上がりがよくなってきたのは、本人に自信がついてきたということももちろんあるのですが、チームの成長という面も大きいんです。今年、ニッキーのチームはチーフメカニックやスタッフが大きく変わったんですが、その積み重ねの結果がようやく形になって現れてきた。私としては、アッセンあたりから表彰台の常連になればなあと思っていたのですが、出遅れはしたものの、アメリカからいい調子で来ています。積み上げと自信と、両方でしょうね。
 
 今シーズンは願わくばあと一勝、そして毎戦表彰台をキープしてほしいものです。
 
 明日からここで行うテストでは、ニッキーやセテ、マルコが抱えていた問題を検証して解決し、さらに次のもてぎに備えたテストを精力的にこなしていく予定です。濃い内容のメニューになると思うので、楽しみにしていてください。

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