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モータースポーツMotoGP田中誠レポート
VOL.17 イギリスGP「言い訳のきかない結果です」


レースウィーク3日間を通して、冷え切ったコンディションに悩まされ続けた第9戦イギリスGP。朝から雨となった日曜日は、決勝時刻でも気温15℃、路面温度13℃という状態が象徴する通りの過酷なレースとなった。レプソル・ホンダのマックス・ビアッジはスタートに成功して5番手でオープニングラップに入るが第3コーナーで転倒、すぐにレースに復帰したものの3周後にリタイアとなった。前回優勝を飾ったニッキー・ヘイデンは2周目の最終コーナーで転倒を喫し、ハンドルバーを損傷したためにこちらもリタイアを余儀なくされた。

見ての通り、今回はHondaの完敗。誰が見たって言い訳のきかない結果です。屈辱の一日でした。
 
−マックスが1周目、翌周回にニッキー。しかも他のHonda勢も、スタートから5分少々の間に次々と転倒しました。
 
 マックスはサイティングラップ(決勝スタート直前に全車で1周しコース状況とマシンの確認をすること)の段階からトラクション不足を訴えていて、レースまでの5分間でアジャストをしたのですが、ほんの一瞬で転んでしまいました。その直後にニッキーも転倒してしまい、あまりにあっけない終わり方に「Too short!!」(短かすぎるよ!!)とピットの中で叫んでしまったくらいです。
 
 しかし、だからと言ってライダーを責めるべきではないと私は思っています。このコース、このコンディションにうちのマシンが合ってなかった、と考えて、もう二度と同じことが起こらないように改善していかなくてはいけません。
 
−改善は具体的に、どの部分になるでしょうか?
 
 特に雨の状況下での操縦安定性(パワーデリバリーとハンドリング)です。とにかく今は、レプソルの2台にマルコとトロイ、そしてトップを走っていたセテ、と次々と戦線を離脱していき、7台のうち5台が転んでしまって、誰にもぶつけようのない怒りでいっぱいです。
 
−そんな厳しい状況の中、バロス選手がキャリア250戦目を表彰台で飾れたのは、せめてもの結果では?
 
 そうですね。この悪条件で表彰台を獲得したバロスには、「ご苦労さま」と言ってあげたいと思います。でも、“雨のバロス”の異名を取る彼に勝たせてあげることができなかったのだから、Hondaとしてはとても満足のいく結果とは言えません。ヤマハとスズキの後塵を拝しているわけですから。もう二度と今回のようなリザルトは繰り返せないですね。転倒したライダーたちも私たちも、この悔しさをばねに次こそ、との思いを噛みしめています。
 
−では、今週末のザクセンリンクにその思いをぶつける、と?
 
 マックスは昨年、ザクセンリンクでポールトゥウィンを飾っています。内容的にも、一度はパスされても食い下がり、再度抜き返して勝つという内容の濃いレースでした。マックス自身、「ザクセンでのレースを見ていてくれ」と言っていますので、是非とも意地を見せて去年の優勝を再現してほしいところです。また。
 
 この2レースで天国と地獄を味わったニッキーは、その厳しさを糧にさらなる成長を期待しています。ニッキーもまた、昨年のザクセンで終盤までしっかりと追い上げて3位で終えている。次のレースは、レプソルだけではなく、Hondaライダー全員で必ず巻き返してみせます。

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