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‐IRTAテストを終えて、今の手応えは?

(石井) 去年と比べるとラップタイムがだいぶ上がっていて、サテライトを含めて全体的にいい結果も出ているので、マシンのポテンシャルはかなり向上しています。ワークスチームも、計画していたテスト項目をこなして、開幕戦に向かっては仕様決めがほぼ決まり、そういう意味では“乞うご期待!”といったところですね。

‐総監督の就任一年目ですが、今年の運営方針を教えてください。

(石井) 一番の目標は、チャンピオンを獲ること。これは誰がやっても同じことだと思います。また、メカニックやライダーを含めて、我々の後輩にあたる若い世代の人たちに、限られた時間の中でどうやって目標を達成していくのか、そのためにはナショナリティ(国籍)を越えたコミュニケーションやチームワークがどんなに大切か、ということを現場で経験してもらうことも重要な要素だと考えています。

 チームのスタッフが楽しく気持ちよく仕事に取り組める環境を我々が作ってあげて、そしてそんないい雰囲気のなかでライダーが気持ちよく走ることができれば、最終的には最高の結果をみんなで出せる。そして、最後に気がついたら、我々が一番になってる。そういう状態が、私としては理想です。

‐では、このプレシーズンはその雰囲気づくりにも重点を置いてきた?

(石井) そうですね。まず、そこがしっかりしていないと、どんなに偉いことを指示したってみんなこっちを向いてくれないですよ。プレシーズンテストをずっと見てきて、今は雰囲気もいいしタイムも上がってきているので、今年はいけると思っています。

‐では、プレシーズンを振り返ってレプソル・ホンダのライダー二名はどんな様子ですか。

(田中) マックス(・ビアッジ)は、ご存じの通り経験豊富なライダーで、ツボにはまるととんでもない速さを出す。あとは、その速さをどうコンスタントに導き出すか、というところですね。そのために、アーヴ・カネモトさんにテクニカルダイレクターとして来てもらい、なおかつ、チーフメカニックにもマックスの指名した経験ある日本人スタッフをつけた。これは、彼の求める最高のスタッフだと思います。また、Hondaとしても最高の技術スタッフを現場に送り込んで、万全の体制を整えました。

‐ニッキー・ヘイデンはどうですか。

(田中) 彼は今年が三年目。ニッキーに関しても、チーフメカニックやスタッフを大幅に替えて、彼自身でも納得のいくチーム構成になりました。結果的に走りにも安定感が出てきて、最終テストのヘレスでは、三日間ずっとHonda勢でトップ。しかも最終日には全選手の中で唯一1分39秒台というトップタイムに入れ、今までになく最高の状態でプレシーズンを終えています。『早くレースが始まらないかな』というくらいモチベーションは最高なので、是非この調子で表彰台に乗ってもらいたい。
 今年は1戦増えて全17戦の長丁場なので、コンスタントにライダーを含めてスタッフ全員が力を発揮できるようにしていきたいですね。

‐ハード面からプレシーズンを振り返ると、マシンパフォーマンスはどうでしょう。

(吉井) 結果を見ると、ワークス、サテライトともに充分なポテンシャルを発揮できていると思います。が、我々開発側が思っているレベルに到達しているとは思わないです。

‐それは、どういった点で?

(吉井) 今年は、ライバルに圧倒的な差をつけて、これでもかというくらいの距離を開いて勝ちたい。そのレベルにはまだ、至ってないということです。

‐改善のポイントは?

(吉井) コーナーのエントリーです。最高速は問題ないレベルにあると思いますが、4ストロークになってからの課題であるバックトルクに対するマネージメント、それをライダーにいかに扱いやすくさせて、コーナー進入の自由度を上げてコントロール性を良くしていくかという部分で、まだまだ我々がやらなきゃいけないところがある。人間とマシンが会話をできるような車になっているかどうか、という意味でのマネージメントレベルは、現状で私の考える理想の8割くらいですね。

‐最後に、今シーズンに向けたそれぞれの抱負を聞かせてください

(石井) メーカータイトルと個人タイトルを獲ること。それがあれば苦労した甲斐もあって、みんなでシャンパンをぶち撒いて暴れることができる(笑)。それが目標ですね。そこに至る途中には、きっといろいろあると思います。辛いこともあれば、みんながくじけそうになることもあるけど、最後にはタイトル。これはもう明確ですよね。だから、僕の目標は、みんなでシャンパン撒くこと。

(田中) 去年ロッシに持っていかれたものを、今年はお返しいただく、と。また、去年はワークスが0勝だったから、今年は“強いワークス”を復活させたい。サテライトがいくらがんばっても、その中心たるワークスが勝てない状態は良くない。だから、是非とも求心力のあるワークスに戻したいと思っています。

(吉井) 今年は、勝ちに行くのは当然で、ライダーに一所懸命頑張ってもらえるためによいハードを提供して、『次もこのマシンで頑張ろう』と思える車を作ること。シーズンが終わったときには、レースを観ていただいたお客様や、チーム、ライダー、開発メンバー含めて、みんなが笑って『また来年もやるぞ』と思えるように、ハードで対応していきたい。
 今シーズンは、予定よりも半年くらい速いペースでものごとが動いているんです。でも、開発責任者としては、もっともっとそれより早めたい。ハード面では、それくらい考えておかないとダメだと思うんですよ。

※MotoGP(二輪ロードレース世界選手権)開幕戦は、4月10日(日)決勝です。皆様の大きなご声援をよろしくお願いいたします!

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