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 1. 予選:ヘイデンはまず、レーサーとしての自分があり、予選を闘う者としての自分は常に二の次に控えている、と言うように、無意識のうちに自分の中で位置付けてはいないだろうか。彼にとっては、20〜30周もあるレースを控え、たった1周を速く走るためのマシンセッティングや、自身のモチベーションを上げることに重点を置いていないのだ。
 
 今シーズンのヘイデンの予選での総合的なパフォーマンスは、昨シーズンより成長が見えたものの、結果は、持てる力を必要とされるレベルで発揮できなかったのも事実である。むろん、この課題を克服するのは簡単なことではない。ヘイデンのような、ありあまるパワーを備えたバイクを自在に操っていたスーパーバイクのライダーと異なり、ライバルである現役MotoGPライダーは、RC211Vのような200馬力以上の圧倒的パワーを誇るマシンを操ってきたわけではない。彼らの多くは、マシンとタイヤを限界まで使い、1回限りのファステストタイムを叩き出すことを他の誰よりも早く習得しない限り、最高峰のクラスにのし上がれない250ccクラスを勝ち抜いてきた猛者たちなのだ。
  
 好むと好まざるとに関わらず、スターティンググリッドを決めるのは予選であり、今年から新しくなった1列3台というスタート方式を考えれば、フロントローを獲得することは非常に大きな意味を持つ。したがって、ヘイデンは何としてでも、予選でのパフォーマンスを向上させる必要があるのだ。
 
2. スタート:スタートも非常に重要だ。前述の、予選でより良いスタートポジションを得るということに密接に関連することだが、MotoGPの世界で5番グリッドからのスタートでは、先頭集団をリードして1コーナーの混乱を抜け出ることは、不可能とまでは言わないまでも、極めて困難なことだろう。
 
3. 運:最後にヘイデンは、いざという時に、幸運の女神の力を引き寄せる力がなければならない。むろん、運の良し悪しは自分でコントロールできるものではないが、今シーズンのヘイデンはあまりにも多くの大事な状況で不運に見舞われた。そして、それらの不運に左右されている限り、タイトルを獲得することは出来ないのだ。
 
 ニッキー・ヘイデンの今後の活躍を信じて疑わないのは、彼のファンだけではない。1983年、Hondaに500ccクラス初のチャンピオンシップをもたらし、1985年には250ccと500ccの両クラスでチャンピオン獲得という偉業を、WGP史上唯一成し遂げたアメリカ人ライダー、フレディ・スペンサーの見解は、多くの人々から敬意を持って受け取られている。先日Hondaがヘイデンとの契約を2年間延長したことを発表した時、スペンサーは即座にHondaの決断を支持しつつ、へイデンに対して述べたコメントは非常に興味深い。そして、彼のその言葉はまさにこのコラムを締めくくるに相応しい。
 
「私は、ニッキー・ヘイデンの目の前にある未来は、間違いなく明るいと思っている。今シーズンは我々の期待した活躍ではなかったにせよ、2003年は上々のルーキーイヤーだった。そして、我々がこれまでに目にした彼の豊かな才能と素晴らしい戦績を考えれば、彼が近い将来必ずレースに勝ち、チャンピオンを獲得するということを確信している。私は、Hondaのヘイデンに対する固い信頼と、彼と再契約したことを心から称賛している」
 
 フレディ・スペンサーは、有言実行によりアメリカでチャンピオンを獲得したニッキー・ヘイデンの才能と実力を高く評価しているのだ。そして、MotoGPで表彰台の中央に立ち、チャンピオンを取ることを信じている・・・それは私も同じである。(終わり)
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