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Repsol Honda Teamのライダー、ニッキー・ヘイデン。彼のニックネームは“The
Kid(少年)”だが、幼い日の面影を残す彼には、MotoGP参戦2年目の今年、“少年”としてではなく、“一人のライダー”としての自覚と役割が求められている。ルーキー・イヤーであった昨シーズンの終盤、弱冠22歳のこのアメリカ人ライダーは、その類稀なる才能の片鱗を見せた。第13戦のもてぎで3位入賞、第15戦のフィリップアイランドで初めて表彰台に立つとともに、シリーズランキングでも5位を獲得したのだった。
しかしシーズン終了後、状況は一変した。世界チャンピオンのバレンティーノ・ロッシがヤマハへ移籍し、ヘイデンはもはやチームにあってMotoGPを学ぶ若いライダーという立場ではなくなったのだ。彼は過去10年間、最も成功し、かつグランプリ史上最も優秀なチームでもあるHondaワークス、Repsol
Hondaの旗を掲げて戦う立場となったのである。
まだ念願のMotoGP初勝利こそ挙げていないものの、ヘイデンは今シーズンすべてのレースで随所にきらりと光るものを見せており、遠からず表彰台の一番高い位置まで上り詰めるであろうということを予感させる。事実、いくつかのレースにおいて、プラクティス、予選、決勝と、世界の強豪達を抑えチャートのトップに名を刻むなど、着実に実績を積み上げている。ヘイデンは、無敵のマシン・Honda
RC211Vをマスターするために一生懸命努力をし、MotoGPで勝つ難しさを理解し、ライバル達の長所と弱点を見極めようと頑張り続けているのだ。彼がこれらの課題をクリアし、愁眉を開く日もそう遠くないのではないだろうか。
終盤の追い上げで“ルーキー・オブ・ザ・イヤー”を獲得し、その強烈な印象を残した2003年シーズンを終えて、ヘイデンは2年目の今年こそ、自分が真のタイトルコンテンダーに成長したことを証明したいと切実に願っている。プレシーズンのテストで幾たびもファステストラップをたたき出し、ヘイデンとチームは大きな期待を胸に、南アフリカでの開幕戦を迎えたのだった。
◆Rd.01 南アフリカGP
予選4番手というポジションを獲得したヘイデンだが、去年までならフロントロー(最前列)からのスタートが、今年から1列に3台というスターティング・グリッドに関するレギュレーション変更により、第2列目の、昨年のチームメイト、ロッシの真後ろからのスタートとなってしまった。
最初の数ラップは、WGP史上に残るほどの抜きつ抜かれつのマッチレースとなったが、ヘイデンも必死にトップ集団に喰らい付いていった。そして中盤、レースが落ち着いた頃、ヘイデンはやや保守的に戦況をうかがう。レース後、世界中のレースファンの間で数週にも渡り語られ続けたこのロッシとビアッジのバトルの後方にあって、激しく追い上げてくるコーリン・エドワーズやロリス・カピロッシを最後まで抑え切り、南アフリカ・ウェルコムのパキサ・フリーウェイで行われた開幕戦を5位でフィニッシュ、入賞を果たした。
「このレースが厳しいものになることは分かっていた」レース後にヘイデンは語った。
「トップの3人のペースがものすごく速く、今回の5位は最善の結果だったと思う。スタートは良かったが、トップグループがどんどん遠ざかっていくのは身を切られるように辛かった。付いていけるところも何ヶ所かあったが、結局彼らとのタイム差を縮めることはできなかった」 |
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