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恐ろしいモンスターバイクだと思っていた。 RCB1000は、1976年、Hondaが耐久レースに本格参戦するためにHRCの前身である「RSC(レーシングサービスセンター)」が市販車・CB750FOUR-Kをベースに開発したマシン。ヨーロッパ耐久選手権シリーズに挑み、開幕戦でいきなり優勝。続く第2戦は勝利を逃すが、ボルドール24時間レースで優勝するなど8戦7勝してメーカーズ/ライダーズチャンピオンを獲得した。デビューマシンながらもあまりに強いため、いつしか「不沈艦RCB1000」と呼ばれるようになった。 宮城は、中学時代に鮮烈に胸に刻まれたRCB1000の無敵ぶりに、“相当なモンスターバイクではないか”という先入観を持っていたのだ。しかし、その先入観は、いい意味で裏切られた。
「タコメーターの目盛りは3,000回転からはじまっていて、レッドゾーンは9,500回転。上限は15,000回転まで刻んでありますが、実際に走り出すのは3,000回転以下でも余裕です。キャブレターもCVキャブといって、一般車についているものと同じタイプですから、低い回転から乗りやすい。それでいて、回転のツキがよく、扱いやすい。特にピークパワーの盛り上がりを感じることもなく、気がつけばきっちりとレッドゾーンまで回っている。もちろん1,000ccの排気量がありますから、吸気音、排気音は図太く、トルクで走っていくエンジンだと感じましたね」 「そうか、これは耐久マシンだったんだ」と宮城は、RCB1000を走らせてみてあらためて感じたという。不沈艦の強さは、耐久マシンとしての強さなのだ。そういう視点で見ていくと、RCB1000にはエンジン特性の他にも随所に耐久レースで勝つためのつくり込みが施されていた。 そのひとつがライディングポジション。 「このバイクに跨がって、24時間レースの過酷さを逆に感じました。RCB1000は大柄なバイクなのに、タンクが細くてすごく伏せやすい。普通、マシンが大柄になるとタンクも大きくなって威圧感がある。たとえば、RCシリーズ最終型のRC181は、500ccなのにすごくタンクが大きくて、乗らせてもらってる感じなんです。スプリントレースだから十数周ライダーは耐えればいい。そのツラさより、ライダーは速さが欲しい。RCB1000はそうじゃない。ツラいと耐久は走りきれないんです」 完璧なる耐久レーサー、RCB1000。 「とにかくきちっと自分のラップタイムを守って走っていれば、自分の仕事がちゃんと終わるということを狙って車両を造っている。ライダーがマージンを持って走る事が出来れば、当然ラップタイムも安定しますね。結果、チームとしては24時間や8時間のレースディスタンスの戦略をしっかりと立てれる。カウリングも大きくて風から身が守られて楽に走れるわけですから、ライダーは時計のように正確なライディングを毎周繰り返していればいい。勝負をしなくていいんですよ。マシンと勝負しなくていいし、他のライダーとも勝負しなくていい。きっちりとアクセルを開けて、タンクに伏せて、自分のスピードでコーナーを回って、自分のラップタイムを安定させて完走すれば、おのずと成績が出てくる。まさにそれを明確に狙って形にしたマシンだと実感しました」 ![]() 「たとえばクラッチレバーやブレーキホルダーが、ハンドルを外さなくても脱着できるようになっている。もうこの時代にです。それから、パッとフロントタイヤが外せるクイックリリース式アクスルホルダー。これをいち早く採用したのもRCB1000」 「耐久を勝つために、いかにピットでの作業を少なくするか。トラブルを少なくするか。何かが起きた時に、どうやれば早くマシンをコースに戻せるかということを真剣に追求したバイクがこれですね。ヘッドランプの付け方、テールランプの付け方すべてそうです。もう完璧ですね、Honda耐久レーサーは、アイデアの宝庫ですよ」 まさに不沈艦、RCB1000。しかし、レースはチェッカーが振られるまで先の読めないドラマ。8耐初戦のまさかのリタイヤを踏み台に、Hondaは栄光をめざしてチャレンジを続けることになる。 宮城光の「鈴鹿8耐歴代ロードレーサーの鼓動」。次回はCB900Fをベースに開発され、耐久選手権5連覇を達成した名車、RS1000をご紹介します。 |
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