Honda Racing to TOP
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 ヘイデン一家にモーターサイクルレーシングの血が流れていることは、前にも述べた。ニッキーがよちよち歩きを始めた時には、すでに、兄トミーはレースにはまっていたし、父アールも20年にもおよぶ長いレースキャリアがあった。ニッキーがモーターサイクルレーサーの仲間入りをしたのは、まるで家業を継ぐように、ごくごく当たり前のことだったのである。

 ニッキーがバイクに乗り始めたのは3才のとき。4才、5才の頃にはすでにレースに出場し、他の子どもたちと競い合っていたそうだ。体が小さく、足が地面につかなかったために、スタートのときはいつも誰かがバイクを支えていなければならなかった。

「小さい頃の思い出はすべてレースのこと。サーキットに向かう車の中か、レースをしている記憶ばかり。なんか、生まれた時からずっとレースをやっているみたいな感じがするよ。もちろんそれは悪い意味ではなく、僕はレースを愛しているし、レースで飯を食えるようになって本当に幸せだと思ってる」

 アメリカ時代のニッキーのライバルは、同じHondaのライダー、カーティス・ロバーツだ。ロバーツは年上であったが、よきライバルであると同時に、ニッキーにとって兄貴的存在でもあった。ロバーツも「将来、MotoGPに参戦してまたニッキーと競い合いたい」と願っている。

 2002年、AMAスーパーバイク選手権参戦の合間に、スケジュールさえ合えば大好きなダートトラックレースにも出場する・・・。まだ若いニッキーだが、旅から旅への忙しい日々が続く生活では趣味の時間を見つけるのはむずかしい。彼は、映画、雑誌、モトクロスバイク、インターネット、そして音楽が余暇の楽しみという。

「インターネットはほとんど毎日見ているよ。レース界の情報をアップデートするためにね。家にいるときは、暇さえあればHondaのダートレーサーに乗るんだ。家の敷地内に兄弟でつくったダートトラックがあって、いつでも走れるようになってるんだ!」

「好きな音楽は、ラップとか、ロックンロールとか、ヒップホップとか、いろんなジャンルの、いろんなグループや歌手のもの。前はエアロスミスが大好きだったけど、今は誰が一番好きか分からない」

 四輪の方も、父親が中古車販売業を営んでいるせいもあって、短い期間でさまざまなモデルに乗ってきたが、1台だけニッキーがとてつもなく気に入っている車がある。去年手に入れた軍隊仕様のAMCハマーだ。
「この車の気に入ってるところは、どんなところへでも行けちゃうところだね。森の奥深くへのドライブも、すぐ近くの郵便局への用事も、同じようにひょいと乗って行けちゃうんだから」

 しかしそのお気に入りのハマーを、ニッキーは去年の夏に手離した。
「父親が言ったんだ、1台の車に執着してはいけないってね」
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