Honda Racing to TOP
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ニッキー・ヘイデンWGPダイアリー
 また、コーナーの多くがバンク状になっている上に、水捌けを良くするために数箇所コースの中央部分が盛り上がっている。バンクになっているコーナーを攻め過ぎてラインから外れたりすると、体勢を立て直す余裕もなくバンクのないコーナーに突入することになる。
 しかし僕は、予選やウォームアップ・セッションを通じてコースの特徴を把握し、タイムを縮めることに成功し続けていた。だから、レースがドライ・コンディションで行われなかったことは、かえすがえす残念だった。

 そして、RC211Vと僕の関係もしっくりいきはじめている。RC211Vが明らかに偉大なマシンであることは疑う余地もないし、僕自身、RC211Vに乗るたびに速くなっていっていると自負している。マシンに大きな変更を加えず、RC211Vを僕に任せて自由に乗って慣れるようチームが配慮してくれていることもありがたい。なぜなら、僕にとってはこのやり方が一番賢明な方法であると信じているからだ。
 スーパーバイクに初めて乗った時も、本当の意味でマシンに馴染むまでには時間がかかった。そのマシンについて学び、知る以前に変更を加えることには賛成できない。それは、単純により慣れることのほうが、マシンに変更や改良を加えるよりも、ラップタイムをさらに多く更新できるからだ。

 今後の最大の課題は、予選でもっと好タイムを出すこと。僕はレースを始めた当初から、予選よりレースのほうが得意なタイプだったし今でもそれは変わらない。しかし、そのことがMotoGPでは大きな痛手となりつつある。
 レース中に競り合うことにかけては自信がある。現に今までも、どんなライダーとも同等に闘ってきた。前を走るライダーがいれば、それが誰であろうと、たいていの場合ペースを合わせるか、追いつくことができるけど、予選で好タイムを出せないことが決定的なダメージとなってきているのは認めざるを得ない。

 アメリカでレースをしていた時には、どんなに予選が上手くいかない場合でも、スターティング・グリッドの2列目くらいのポジションを獲得することができていた。しかしMotoGPはそんなに甘くなく、予選で好タイムが出せなければ、たちまちスターティング・グリッドの4列目くらいからのスタートになってしまう。そしてMotoGPのトップライダーたちは当然ものすごく速く、4列目くらいからのポジション・アップは非常に難しい。

 予選に関して言えば、相対的には他のライダーとの差はそれほどないと思っている。ただトップライダーたちが違うのは、ここぞという時のアタックの凄さだ。彼らは予選で上位につけるためのここ一番での数ラップに、極限の走りができる力を持っている。それまでは、彼らも僕の視野に入っているのだが、その渾身のアタックの瞬間に彼らを見失ってしまう。
ケンタッキー州旗
 結論としては、RC211Vにもっと慣れて乗りこなさなければいけないということだ。予選セッションの終盤で他のトップライダーよりも速いタイムが出せるようになるにはそれしかない。

 アッセンのプラクティスでサーキットに出たとき、スタンドにケンタッキー州の旗を掲げたファンがいるのを見つけ、その瞬間、胸がジーンとなった。MotoGPのサーキットでも、アメリカ時代からの顔なじみのファンを見かけることが時々ある。世界各地から応援に駆けつけてくれたファンを見たり、故郷ケンタッキー州の旗が打ち振られるのを目にすることは大いに励みとなる。マシンを走らせているときでも、ファンのみんなには心から感謝しているんだ。」(2003年7月8日、ベルギーにて)


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