Honda Racing to TOP
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第7戦オランダGPまでを終えて
―――二輪ロードレースの最高峰、MotoGPクラスでルーキーライダーとして闘いを続けるニッキー・ヘイデン(21)。AMAスーパーバイク・チャンピオンを獲得したアメリカから世界へ飛び出し、第3戦以降のヨーロッパラウンドも全力で奮闘中。はじめて訪れる国々、そしてはじめてのサーキット、ウェットコンディションでの闘い。第7戦を終え、再びレースを振り返ったニッキー。世界最高峰のカテゴリーで貴重な経験を重ねながら冷静に自己分析を行い、さらに上をめざす闘志を見せた。

 「僕はアメリカを離れて暮らすのは生まれて初めてのこと。今年からレプソル・ホンダ・チームのライダーとして世界中を転戦するようになるまで、ほとんど海外に行ったことがない。14歳の時にウェイン・レイニーに連れられてスペインで1週間ほど過ごした経験と、日本に数回来たことがあるだけだ。
 だから、ヨーロッパで暮らすことも、レースにも、今ようやく慣れ始めつつあるというのが正直な気持ち。たいていはチームのあるベルギーで過ごしているが、レースのない週末には、ちょっとした旅行に出かけたりもする。数週間前には、イギリスに住むメカニックの家に滞在させてもらい、ダートでバイクに乗ったりして楽しい休暇を過ごした。

 ヨーロッパの風土にもだいぶ慣れてきた。食事は、レースの時には何でも作ってくれるチームのホスピタリティ・ブースで摂っているし、たまに外食して逃げ出したくなるような食べ物に出くわすこともあるけど、極力慣れるよう努力している。

 レースに関して言えば、確実に多くのものを掴み始めている。
ムジェロ(第5戦イタリアGP)でのレースはひどいものだった。全然調子に乗れなかったばかりか、わけがわからなくなって取り残されてしまったというのが正直なところ。でも、バルセロナ(第6戦カタルーニャGP)でのレースはそれほど悪くはなく、そしてアッセン(第7戦オランダGP)では、レースの結果にはそれほど反映されなかったが、これまでの中で最高のGPだった。

 予選はトップから1秒以内だったし、決勝は雨が降ったり止んだりの有名なダッチウエザーでほとんど前が見えなかった。おまけに、決勝前のウォームアップ・ラップ中にトラブルが生じて直前にマシンを替え、結局ピットスタートになるなど苦戦を強いられた。でも果敢にバトルを仕掛け、なんとかポジションをひとつ上げてフィニッシュすることができた。

 
コースがドライの時のRC211Vのフィーリングは、今までで最高のもので、とても気持ちよく乗れた。その証拠に、日曜朝のウォームアップ・セッションではファステスト・ライダーのひとりだった。
 事実、その朝のウォームアップ・セッションでは、しばらくの間、僕が一番速かった。最終コーナーを立ち上がって、サインボードで自分がファステスト・タイムでラップしていることを確認したときには感激だった。最終ラップで、チーム・メイトのロッシに最速ラップを更新されてしまったが、レースがドライ・コンディションでさえあれば、対等に競い合えるという自信を掴むことができた。

 アッセンは多くのライダーが苦手とするサーキットのようだ。でも僕にとっては、バンピーな路面にも慣れたため、どうやって攻略するかという問題でしかなかった。
 アッセンで速く走るためには、リズムと正確なライン取りが大切になる。攻略が極めて難しいサーキットだが、それはただコース・レイアウトが高度なテクニックを要するという理由だけではない。アッセンはストレート部分が極端に少ないので、常にハードにコーナリングしていなければならず、ひと息つくことができないからだ。加えて、すべてのコーナーが次のコーナーへとダイレクトに繋がっているかのようなレイアウトで、ひとつの失敗が後々のコーナーまで影響してしまう。


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