Honda Racing to TOP
12
ニッキー・ヘイデンWGPダイアリー
【南アフリカGP】
「南アフリカは、僕が想像していたほど治安の悪いところではなかった。チームのスタッフからこの国の現状について聞かされていたし、危険な場所もあるから気をつけろと注意されていたけど、滞在中これといった事件は何も起きなかった。少なくとも僕が見た範囲では、南アフリカはとてもちゃんとしたところだった。今回も親父が一緒に来てくれて、サファリに行ってみようということになったんだけど、これはもう最高に楽しかった。

 南アフリカGPの舞台、ウェルコムはすごくいいサーキットだった。最初見たときは別にこれと言った印象もなく、コースも平坦だし何か足りないような気がして、こんなにおもしろいとは思わなかったんだ。でも、ラップを重ねるに連れてどんどん好きになっていき、最後には走るのが楽しくなっていた。ウェルコムは本当に、とてもおもしろいサーキットだ。

 予選初日は、午前、午後両方のセッションとも12番手に終わった。土曜日の午前中のセッションでは7番手まで順位を上げることができたんだけど、コースの後半にどうしても上手くクリアできないポイントがあって、最後まで思うようにいかなかった。結局3列目11番グリッドで予選を終え、決勝のスタートも上手くいかなかった。スタート直後にコーリン・エドワーズがクラッシュし、コース上がパニックになった。僕はとっさに頭を低くして間一髪クラッシュをすり抜け、レースを続けることができたんだ。

 レース序盤7番手を走っていたところへ、後ろのライダーから猛烈なプレッシャーがかかり始めた。バロスに抜かれ、そして何人かのライダーが彼と一緒に僕を抜いていった。バロスは本当に激しい走りで引き離しにかかり、僕は彼らに着いていくのに一生懸命だったが、徐々に離されてしまった。僕は10番手までポジションを上げ、14、15周目にようやく自分のリズムにのることができて猛チャージを開始。自己ベストのラップタイムを更新し、チェカに追いつき、さらに激しく攻めて、ついにバロスや阿部、宇川たちのグループを捉えることに成功した。

 南アフリカでも7位でフィニッシュ。鈴鹿と同じだけど、これは自分の実力で勝ち取った7位だ。すごくうれしいよ。鈴鹿では不慮の事故や様々な出来事があって、ある意味あの時の7位はプレゼントのようなものだ。そこへ行くと南アフリカGPは、自分でも納得のいく戦いのできたレースだったし、自分の実力で勝ち取った7位だと胸を張って言うことができる。自分が実際に他のライダーたちに混じって激しくポジションを争うバトルをしたという充実感があるね。何よりも、トップライダーたちとの距離も鈴鹿より縮まったという事実は大きな収穫だ。

 近頃、少しずつだけど、WGPを戦う上でいろんなことが上向きになりつつあるように感じている。チームも僕の進歩やレースでの戦い方を評価してくれているし、現在のところポイントランキングも6位につけている。去年ラグナ・セカのワールド・スーパーバイクで世界のレベルを垣間見たと思っていたけど、国内の選手権とはまったく異なるレベルや雰囲気は、僕が今まで経験したいかなるものとも違っていて、毎回レースから多くのことを学んでいる。

 というわけで、今のところすべてにおいて楽しくやっているよ!」(2003年5月1日、ケンタッキーの自宅にて)

< BACK12NEXT >