Honda Racing to TOP
< INDEX123
正常進化のレベルを超えた革新のバイク、RC211V
「RC211Vには、レーシングライダーとして欲しいものがすべてある」
 これまでも機会があるごとにRC211Vのすごさに触れた宮城は、インタビューの最後にあらためてこの革新のバイクについて語りはじめた。
「かつて、ライダーは全身の体力を使い、汗水をたらし、目を釣り上げてサーキットを走っていました。強大なパワーに打ち勝ち、タイヤをグリップさせるために、路面から容赦なく伝わってくる外乱を全身で抑え込みバイクを路面に押しつけていたんです。RC211Vでは、そんな苦労はまったく必要ないんです。今まで、腹筋と背筋を使って、足のくるぶしを使って、太腿を使って抑え込んでいた外乱が、今までのマシンに比べると本当に少なくなりました。すべてバイクが受け止めてくれる。何ていうのかな・・・本当によくできたゴムまりの上に乗っているような感じですよ」

RC211V
「楽なだけじゃなく、ハンドリングがびっくりするくらい面白いんですよ。80年代からグランプリレーサーは、ドン!とブレーキをかけて、ベタッ!と寝かせてタイヤをグリップさせ、エッジを効かせて曲がり、足りない分はアクセルでリアをスライドさせて向きを変えていた。それがRC211Vは、バイクを寝かせたときリアがスッと出るわけです。タイヤを無理やりグリップさせて曲がろうというそれまでの発想を捨て、上手く滑ってくれればいいんでしょ?という発想を取り入れたわけです」

「言い換えると、四輪でブレーキを残して曲がるようなフィーリングです。クルマでブレーキを掛けてフロント荷重になっているとき、ちょっとステアリングを切ってやるとリアがスッと出ますよね。それと同じで、RC211Vは倒していくとリアが気持ちよくスッと出る。そして、そのままリアを滑らせながら向きを変えていけるんです。こんな感覚のコーナリングをできる二輪はRC211Vが初めてですね。ロッシ選手の走りを映像で見ると、目でわかるくらい滑っているでしょ。あの滑りをライダーの感覚で言うと、フルカウンター当てているくらいの感じだと思います。それだけRC211Vが安定して滑らせられるということです」

「全身を使って闘ってきた僕らからすれば、RC211Vはまったく不思議なバイクです。こんなにライダーをいじめないグランプリレーサーがあるのかと。さっきNSR500は思い出のバイクとして飾っておきたいと言いましたが、RC211Vは何とかして乗りたい。どうやったら乗れるんやろ?と思わず考えてしまいました。40歳になった宮城が、どうしたらこのバイクに乗れるンやろ・・・と。RC211Vは、Honda歴代レーサーのノウハウの固まりであり、すべてを超越した革新のバイクですよね」
 RC211Vの性能を賞賛すると同時に宮城は、このハイパフォーマンスマシンでレースを闘うライダーの能力も賞賛した。アクセル開度70%で十分にNSRに太刀打ちできるRC211Vで、ぎりぎりの接戦を行うライダーの能力はすごいと。そして、「ヘンなクセなどなく、人間の感性に正直な動きをするRC211Vの登場により、ライダーは結果に対して言い訳ができなくなりました。本当の意味でのライダーの闘いの時代がこれからやって来るんじゃないでしょうか」と言って静かに何度も頷き、Honda歴代ロードレーサー、感動のインタビューをしめくくった。(終り)
< BACKINDEX >