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 「そうか、これは耐久マシンだったんだ」と宮城は、RCB1000を走らせてみてあらためて感じたという。不沈艦の強さは、耐久マシンとしての強さなのだ。そういう視点で見ていくと、RCB1000にはエンジン特性の他にも随所に耐久レースで勝つためのつくりが施されていた。
 そのひとつがライディングポジション。
 「このバイクに跨がって、24時間レースの過酷さを逆に感じましたね。RCB1000は大柄なバイクなのに、タンクが細くてすごく伏せやすい。普通マシンが大柄になるとタンクもでかくなって威圧感があるんです。たとえば、RCシリーズ最終型のRC181は、500ccなのにすごくタンクが大きくて、乗らせてもらってる感じなんです。スプリントレースだから十数周ライダーは耐えればいいわけです。そのツラさより、ライダーは速さが欲しい。RCB1000はそうじゃない。ツラいと耐久を走りきれないんです」

 「とにかくきちっと自分のラップタイムを守って走っていれば、自分の仕事がちゃんと終わるということを狙って車両を造っている。カウリングも大きくて風から身が守られて楽に走れるわけです。だから人間は時計のように正確なライディングを毎周くり返していればいい。勝負をしなくていいんですよ。マシンと勝負もしなくていいし、他のライダーとも勝負しなくてもいい。きっちりとアクセルを開けて、タンクに伏せて、自分のスピードでコーナーを回って、自分のラップタイムを安定させれば、おのずと成績が出てくる。まさにそれを明確に狙って形にしたマシンだと実感しました」

完璧なる耐久レーサー、RCB1000。
 エンジン特性、ライディングポジション以外にも耐久レースに勝つための工夫がこのRCB1000にはなされていた。
 「たとえばクラッチレバーやブレーキホルダーが、ハンドルを外さなくても外せるようになってる。もうこの時代にですよ。それから、パッとタイヤが外せるクイックリリース式アクスルホルダー。これをいち早く採用したのもRCBなんですよ。機種によってはね、リアはキャリパーとスプロケットを残したままタイヤを外したりできると思います」
 「耐久を勝つために、いかにピットでの作業を少なくするか。トラブルを少なくするか。何かが起きた時に、どうやれば早くマシンをコースに戻せるかということを真剣に追求したバイクがこれですよね。ヘッドランプの付け方、テールランプの付け方すべてそうです。もう完璧ですよね」

 勢いに乗った宮城の言葉の鉾先は、ついRC211Vに向かってしまう。
 「耐久レースのRCB1000が乗りやすさ、メンテナンスのしやすさを追求したバイクと言うなら、グランプリレースの歴代のマシンは速さを追求したバイクと言えます。でもね、その両方を手に入れたのがRC211Vなんですよ」
 「かつて僕が乗っていたマシンでも、大袈裟に言うと暴力的なものがありました。アクセルを開ければ浮くし、暴れる。そのマシンをねじ伏せて走るというのが美徳だと僕らは思ってたんです。『扱いにくいマシンをねじ伏せて、どうやこの速さは!』とね。でも、一発の予選ではタイムが出るけど、決勝で結果が出ない。そりゃそうですよ。ライダーは疲れ果ててる。他のライダーと勝負するんじゃなくて、自分のマシンと勝負してるんですから」

 60年代70年代80年代は、耐久レーサー、グランプリレーサーのキャラクターが明確に出ている。それを上手くまとめるのは至難の技だったのだ。
 「だけどRC211Vは、Hondaの歴代のバイクのいいところを全部ギュウって集めて進化させちゃった。よくそんなことできましたね、って思いますわ。若いとき、暴れるマシンをねじ伏せて粋がっていた時代はなんやったんやろうなと。RC211Vはホントあきれるほど乗りやすくて速いマシンですわ。いかん、その話は次でしたね」
 一気に話し切った宮城は、喉を鳴らしてすっかり冷えてしまった紅茶を飲み干した。

 宮城光の「Honda歴代ロードレーサーの鼓動」最終回の次回はHonda水冷2ストローク時代からMotoGPマシンRC211Vのインプレッションをご紹介します。

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