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コーナーに向うシフトダウンの最中でもエンスト
コーナーに進入するために、プァーン、プァン、プァンプァンプァン!とシフトダウンする。そのわずかな時間のなかでも、クランクマスが極端に小さいRC149のエンジンは、うっかりすると止まってしまうという。
「これはもう自分の失敗談なんですけども、コーナーの手前でシフトダウンのためにクラッチを切ったとき走りながら1度エンジンを止めてしまいました。ほんの一瞬、間があったのでしょう。でもそれまで20000回転も回っているんですよ。それがパタっと止まるんですから、よっぽどですわ」
ブレーキもあまり効かないという。当時はタイヤもプアで、ブレーキ自体も性能は高くなかった。
「今は直線で減速してターンインするじゃないですか。当時はブレーキ効かないもんだから、ブレーキ掛けるか掛けないかの感じでシフトダウンしながら、マシンを横に向けてコーナーへ進入したんじゃないでしょうか。横に向けたマシンの抵抗で減速しながら回る感じ。それできちんとクリップ(コーナーの頂点)について理想のラインを走るんだからすごい」
エンジンの気難しさといい、コーナリングの仕方といい、当時は当たり前だとしてもその困難な状況で闘っていた人々に宮城はあらためて舌を巻いた。
「はいどうぞ、これが今度のマシンなんですけど。とりあえず22000回転回りますからと言われ、はいわかりましたって乗ったんでしょうねえ。ライダーはエンジニアリングのことわかってなかったら、上手くアクセルを開けられませんよ。それに当時は押し掛けでしょ?無理ですわ。現代のライダーではエンジンを掛けることも難しいと思いますよ」
繊細なエンジンをかぶらせないよう微妙なアクセル操作で走り、効かないブレーキでなんとかコーナーを回り、相手とも闘う。8速のシフトは、「今何速に入っている」というより、「今の回転とコーナスピードに合ったギアを選択する」感覚だという。そして、宮城はこんなマシンをつくったHondaのことも称えた。
「勝つために、125ccで5気筒のこんな繊細なマシンをつくるんですから。その発想がすごいし、よくつくりますよね。エンジニアって恐ろしい人達ですわ。普段は一般の道を走るバイクをつくっている人でしょ。それが、サーキットの方を向いた途端、まったく異次元のマシンをつくってライダーに渡す。夢のような出来事ですよね。Hondaってやっぱり夢じゃないですか!?このマシンに乗ってそれをあらためて感じました」
宮城光の「Honda歴代ロードレーサーの鼓動」次回はHonda空冷時代のRC166、RC181を
ご紹介します。 |
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