MotoGP現場レポート

Vol.219 - Round 02 MotoGPクラスの開幕。
デビュー戦のアレックス・マルケスが12位でフィニッシュ

新型コロナウイルス(Covid-19)の世界的な感染拡大の影響で、MotoGPクラスの開幕戦が7月となった第2戦スペインGPは、連日、最高気温が35℃前後という厳しい条件の中で行われました。その中で、5年連続7回目のタイトル獲得を目指すマルク・マルケスは、フリー走行、予選と順調にセットアップを進め、大接戦の中で3番グリッドを獲得しました。ポールポジション(PP)獲得は果たせませんでしたが、連続ラップではライバルを圧倒するもので、今年のRC213Vの進化とマルケスのライダーとしての成長を十分に感じさせるものでした。

それは決勝レースでも遺憾なく発揮されます。好スタートから3周目にトップに浮上。その後、5周目の左高速の3コーナーで転倒寸前の滑りを経験、転倒はこらえましたがグラベルへ飛び出すことになります。高速スピードでモトクロス状態となったマルケスは、すばらしいライディングでコースに復帰しますが、その時点でトップとの差は約9秒、ポジションは16番手へと落とすことになりました。

タイム差が接近するヘレス。そして現在のMotoGPクラスでは絶望的なタイム差となります。しかし、マルケスは、そこから次々に前者を抜き去り3番手まで浮上。世界中のレースファンの度肝を抜くスピードを披露しました。

そして、チェッカーまで4周となった22周目。2番手を走るマーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)の背後に迫ります。優勝は厳しい状況でしたが2位の可能性が浮上しました。そのとき、再び、左高速の4コーナーでハイサイドを喫し、転倒リタイアとなりました。

この転倒でマルケスは右腕上腕を骨折、21日、バルセロナ市内の病院で手術を受けることになりました。Hondaにとっては、マルケスが転倒するという残念な結果に終わりましたが、そのすばらしい走りは世界中のレースファンのまぶたに焼きつくものでした。

今大会がデビュー戦となるマルケスの弟アレックスは、ヘレスをMotoGPマシンで走るのは初めての経験となります。そして初めて経験するMotoGPクラスの予選など、RC213VとMotoGPクラスの戦いを学ぶ日々でした。大接戦となった予選では21番手。2人の選手がケガで欠場のため19番グリッドから決勝に挑んだアレックスは、中上貴晶(IDEMITSU LCR・Honda)、ヨハン・ザルコ(ドゥカティ)を追撃、デビュー戦を12位でフィニッシュしました。

スペインGPの舞台となるヘレスでは、2006年から14年連続で表彰台に立ち続けてきたRepsol Honda Team。今年は表彰台を逃しましたが、ファンの記憶に残るレースとなりました。アルベルト・プーチ監督が開幕戦を振り返ります。

スペインGPの戦略はどういうものでしたか?

「いいスタートを切って、レースをリードできるようにがんばるというのが今大会の戦略でした。マルクがレース序盤、コースアウトするまではその通りに進んでいました。このような結果は望んでいませんでした。アレックスはレースを完走することが1番の目標でした。その次の目標がポイント圏争いをしているグループに近付くことでした。初めてのレースでいい結果を残すことができたので、みんなが喜んでいます」

今大会のネガティブポイントとポジティブポイントを教えてください。

「ネガティブなことはマルクがケガをしたことですね。本当にネガティブなことでした。ケガをしたライダーがいると、当たり前ですが、ほとんどのことがポジティブではなくなります。でも今日はすべての人がマルクのレベルを理解したと思います。カタール(テスト)では、マルクのパフォーマンスに疑いを持っている人がいました。でも今日はそうした疑いを完全に払拭したと思います。Honda RC213Vと彼自身は、明らかに2歩前に進んでいます。彼は少し速いだけではありません。誰よりもかなり速いのです。そして、毎年成長しています」

ピットウォールから見ていた感想はどういうものでしたか?

「マルクはコースアウトしてから、集中力を取り戻すまで2周かかりました。それから彼は前のライダーたちを追い上げていきました。あと4、5周あれば、ラップタイムで1秒速かったマルクがクアルタラロに追いついたかもしれません。彼がどんなタイプのライダーなのか、私たちは分かっています。今日は、彼がどんな人間なのかをみんなに見せることができました。しかし残念ながらケガをしてしまいました。そして休息が必要になりました。腕を治し、準備ができたら、彼は再び優勝争いに戻ってくるでしょう。マルク・マルケスである限り、このようなことは起きます。彼は並外れたことをするライダーですからね。彼が後悔することはなにもありません。チーム全体が彼をとても尊敬しているし、彼のすることを称賛しています。
また、カル・クラッチローが朝のウォームアップでひどい転倒をしました。たくさんの傷と、痛みがあるようです。医者は彼がレースに出られないと判断しました。そして、レースが終わったあとに彼の手首の骨折を見つけました。彼も手術をします。彼は次のヘレスのレースウイークに戻ってくると思います」

インサイドストーリーがあれば、教えてください。

「グランドスタンドとパドックに人がいなくて、とても奇妙な週末でした。でも、いま、世界中で起きている状況に順応しています。Covid-19のプロトコルに対して、オーガナイザーはいい仕事をしました。みんなルールを守り、今のところパドックは安全です。Repsol Honda TeamとHRCはすべての準備を整え、必要に応じて、ルーティーンを変更してきました。私たちはドルナの指示に従っています。パートナー、友人、そしてレースがない間にサポートしてくれたすべての人に感謝の気持ちを伝えたいです。これからマルクのケガに向き合います。でもこれがレースというものです。私たちは強いチームですし、困難を乗り越えていきます」

マルケスの手術は21日にバルセロナで行われ、ケガの状況、復帰の見通しなどが、明らかになると思われます。今年は、新型コロナウイルスの影響で変則スケジュールとなっています。ヘレスでは2週連続の開催となり、休む暇もなく、第3戦アンダルシアGPが開催されます。

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