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Vol.214 Round 15

マルケスが勝利にこだわったタイGPの戦略

マルク・マルケスのライダーズタイトル王手で迎えた第15戦タイGPは、予選3番手のマルケスとポールポジションを獲得したファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)との一騎打ちとなり、最終ラップに先行するクアルタラロを抜いたマルケスが、今季9勝目を挙げて、最高峰クラスで4年連続6回目のチャンピオンに輝きました。

金曜日のフリー走行ではアウトラップにハイサイドを喫し転倒、土曜日の予選では路面のバンプに乗って転倒するなど、周囲をハラハラさせる2日間となりましたが、タイトル獲得という重圧の中でマルケスは、いつも通りに攻めの走りを敢行。それは決勝でも変わらず、最終ラップに逆転するという、勝つことにこだわってのタイトル獲得となりました。

昨年の暮れに脱臼癖のついた左肩の手術を行い、2月に始まったウインターテストは、肩の回復を確認しながらという厳しい状況でした。それはシーズンが開幕しても同じでしたが、肩の回復につれて勝ち星を増やし、後続とのリードを広げていきました。26歳で最高峰クラス6回目のチャンピオン獲得、3クラス通算8回目のタイトル獲得はもちろん史上最年少記録です。今年も多くの記録を塗り替えたシーズンですが、優勝でチャンピオンを決めるというすばらしい大会となりました。

タイトル王手で迎えたタイGP。チーム一丸となって戦ったタイGPを、アルベルト・プーチ監督が振り返ります。

―タイトル王手で迎えたタイGPの戦略はどういうものでしたか?

「今大会のマルクの戦略は、いつもと同じような戦いをすることでした。つまり、序盤で引き離し、だれがついてくるのかというのを見ることでした。クアルタラロ選手のペースはとてもよくて、最後までマルクと一緒に走ることは明らかでした。そこでマルクは、自分のカードをうまく使いました。ここぞというときまで抑えて、そして、最終コーナーで優勝を勝ち取りました。昨年の大会も同じようなレースになりました。今年もとても賢い戦い方だったと思います。クアルタラロ選手がブレーキングを遅らせてイン側のラインを取りました。そのときのマルクは完ぺきな動きでした。今日重要だったのはタイトルを獲得したことですが、マルクがレースで勝ちたいと思っていることも分かっていました。最終的にライダーが戦略を変えて勝ちにいきました。なぜなら彼は優勝したくてしょうがないチャンピオンなのです」

―今大会のポジティブポイントと、ネガティブポイントがあれば、それも教えてください。

「ポジティブなことは言うまでもありません。我々が、Hondaが、Repsol Honda Teamが、そしてマルクが(ライダーズ)タイトルを獲得したことです。我々が再びワールドチャンピオンになったことで、このプロジェクトに関わったすべての人が喜ぶことができました。今日はネガティブなことを話す日ではありません。マルクがタイトル獲得を達成したことだけを話し、サポートしてくれた人々とこの瞬間を楽しむだけです。

しかし、コンストラクターズチャンピオンシップとチームチャンピオンシップは、まだ終わっていません。チームチャンピオンシップでは、たくさんのポイントを獲得してきました。今後さらに獲得できるかもしれません。コンストラクターズチャンピオンシップはリードがあるので余裕がありますが、だからと言って力を抜くわけではありません。これらのタイトル獲得に向けてロレンソもがんばってくれることを願っています。

シーズンは残り4戦となりました。今後の戦略は、これまで通り、優勝を目指して戦うことです。これが前進する最善の方法です。集中力をキープし、優勝という目標に向かっていかなければなりません。マルクとHondaは、そうした気持ちを忘れず、いつも目標を達成しようとがんばっています。すでにタイトルが決まったので、今後のレースウイークは少しリラックスして迎えることができるでしょう。しかし、これまでと同じ気持ちで戦い続けていきます」

―ピットウォールから見ていた感想を教えてください。

「クアルタラロ選手はマルクにとって手強いライバルです。レース終盤は思っていた以上に難しいレースになりました。しかし2人とも限界を理解していました。集団で走行するとライダーが混乱することがありますが、今日は2人のライダーがそれぞれのマシンの限界を分かっていました。最終コーナーでマルクはファビオのブレーキングを遅らせました。これは昨年と同じです。マルクの動きはとてもスマートでしたし、リスクもありませんでした」

―今年の日本GPは、タイトルを獲得しての凱旋レースとなります。

「日本のすべてのHondaファンにとって、新しいチャンピオンを迎えるのは、すばらしい気分だと思います。これまで何度か日本でタイトルを獲得したことはありますが、今回はいつもと違い、タイトルを獲得して日本に到着します。これはとても重要なことです。ホームでお祝いをしたいと思います」


シーズンは残り4戦。その最初のレースとなる第16戦日本GPは、Hondaにとって4年連続25回目のコンストラクターズタイトル獲得に王手をかけて挑みます。そして、Repsol Honda Teamは、Ducati Teamとチームタイトルを争っています。コンストラクターズタイトル、そしてチームタイトル獲得に向けて、引き続き、勝利を目指して戦います。

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