Testingタイブリーラム公式テスト

2018.02.16(金)-18(日)

チャーン・インターナショナル・サーキット

初開催となるチャーン・インターナショナル・サーキットでHonda勢が着実に前進する

1月下旬に行われたセパン・テストに続き、2月16日(金)から18日(日)までの3日間、タイのチャーン・インターナショナル・サーキットで今季2回目の公式テストが開催されました。

チャーン・インターナショナル・サーキットは、第15戦タイGP(10月7日決勝)の舞台となり、MotoGPクラスの走行が行われるのはチャンピオンシップ史上、今回が初めてとなります。一周4,554km、前半区間はロングストレートが続き、中盤から後半にかけては中速コーナーが続くテクニカルセクション。屈指のハイスピードコースですが、パッシングポイントが少なく、難しいレイアウトとなっています。今回のテストでは、アベレージが180km/h前半、最高スピードは330km/hを超えました。

今季2回目となるテストは、24台が参加。Honda勢は、前回のテスト同様、Repsol Honda Teamからマルク・マルケスとダニ・ペドロサ、LCR Hondaからカル・クラッチローと中上貴晶、そして、Estrella Galicia 0,0 Marc VDSからフランコ・モルビデリとトーマス・ルティの6選手が参加しました。

チャーン・インターナショナル・サーキットは、タイの首都バンコクから東に約400km、カンボジア国境に面したブリーラム県にあります。今回のテストは、3日間ともに青空が広がり、連日35℃を超える猛暑の中で行われました。

前回のマレーシアテストでは一度もアタックせず、マシンの比較テストに集中して8番手だったマルケスは、今回もマシンのセットアップに集中。着実に前進していることを裏付けるすばらしい内容で、3日間のテストを終えました。初日はコースの確認作業とマシンのセットアップを進めながら3番手。自身にとっての25歳の誕生日を迎えた2日目(17日)は、全体のトップタイムを記録し、自ら誕生日に華を添えました。3日間を通して、トップタイムを狙うための走りを見せたのはこのときだけで、3日目は引き続きテストに集中し、総合3番手につけました。今回のテストでは最多周回数となる271ラップをこなし、最終日に行った20ラップのロングランでは、1分30秒台のタイムで10周以上連続周回するなど、着実に仕上がっていることを感じさせました。

13年に史上最年少記録で世界チャンピオンに輝いたマルケス。14年にシーズン史上最多優勝記録で2連覇を達成し、15年はタイトルを逃すも、16年、17年と連続でタイトルを獲得しています。3年連続5回目のタイトル獲得に向けて、まずは順調な滑り出しとなりました。

チームメートのペドロサも3日間で224ラップを周回し、順調にテストメニューを消化。マレーシアテストでは総合2番手でしたが、今回のテストでは総合首位で3日間を締めくくりました。初日を5番手でスタートすると、2日目には2番手へ浮上。そして最終日にトップタイムをマークと、2018年型RC213Vのセットアップが着実に進んでいることをアピールしました。最終日にはマルケスとともにカーボンファイバー製のスイングアームのテストも行い、こちらでもいいフィーリングを得られたとのことで、これからの走りに注目が集まります。

LCR Hondaで4年目のシーズンを迎えるクラッチローは、マルケス、ペドロサともにファクトリーのサポートを受ける契約選手です。前回のマレーシアテストでは総合3番手、今回もテストメニューを順調に消化し、総合4番手につけました。

初日は時差ボケに苦しみながらも、トップタイムをマーク。2日目はタイヤテストなど多くのメニューをこなしたことで8番手へとポジションを落としましたが、最終日はトップのペドロサから0.283秒差で3番手に入り、3日間の総合では4番手につけました。2勝を挙げてブレイクしたおととしの活躍を、今年も見られることを期待させるテストとなりました。

14年の青山博一以来、日本人としては4年ぶりにMotoGPクラスにフル参戦し、注目を集めている中上貴晶は、3日間で248ラップをこなし、ルーキー勢ではトップタイムとなる1分30秒456の好タイムを記録、総合10番手でテストを終えました。セパンではフィジカル面に課題を残していましたが、今回も35℃を超える猛暑の中でのテストとなり、体力的に厳しい条件に。しかし、そんな中でも着実に体力強化を果たしていることをアピールし、最終日に行った15周のセミロングでは終盤にタイムを上げるなど、成長を感じさせました。今年のウインターテストでは、トップから1秒差以内、トップ10に入ることを目標に掲げていましたが、その目標を見事に達成。次のカタールテストに向けて、ますます期待が膨らむ結果となりました。

昨年のMoto2チャンピオンであるモルビデリは、3日間で211ラップを周回しました。Moto2時代から、確実に前進していく堅実なライダーですが、今回のテストでも着実にタイムを更新。前回のセパン・テストでは2度の転倒を喫し、左手の指を痛めるなど、テストの進行にややブレーキがかかっていたモルビデリ。今回も2度の転倒を喫しましたが、それでも最終的に総合13番手までポジションを上げることに成功しました。

昨年、Moto2クラスで総合2位のルティは、今回が2度目のMotoGPテストに。走行経験のないサーキットということで、学ぶべきことが多いテストとなりました。HondaのマシンRC213Vの攻略はもちろんのこと、初サーキットでしなければいけないデータ収集など、3日間で231ラップを消化しました。総合では24台中21番手でしたが、これからのポジションアップに期待が膨らむ内容となりました。

ルティは、Moto2クラスを戦っていた昨年の第17戦マレーシアGPの予選で転倒し、左足首を骨折。その影響でマレーシアGPと最終戦バレンシアGPを欠場、そのあとに行われたMotoGPクラスの公式テストと、ヘレスで行われたプライベートテストにも参加することができませんでした。今回のテストは、その遅れを取り戻すのに役立つものとなったようです。

初サーキットでの今季2回目のテスト。初日にクラッチロー、2日目にマルケス、そして3日目にペドロサと、Honda勢が3日間ともにトップタイムでテストを締めくくり、2年連続の3冠制覇に向け、大きな手応えあるテストとなりました。次回のテストは3月1日(木)から3日(土)までの3日間、開幕戦カタールGPの舞台となるロサイル・インターナショナル・サーキットで行われます。

コメント

ダニ・ペドロサ(総合1位、1分29秒781)ダニ・ペドロサ
「初めて走るサーキットはいつもそうですが、多くのことを学ぶ必要があります。初日はやることがたくさんあり、たいへんでした。チャーン・インターナショナル・サーキットは思っていたよりもタイトで、正確なライン取りが重要になります。前半のハイスピードセクション、中盤以降のテクニカルセクションでいいバランスを見つけることが大事です。初日はちょっとセットアップの方向性を間違えてしまい、最終コーナーのバンプに乗ったときに軽い転倒をしましたが、最終的にはいい状態に向かいました。2日目は、コース攻略も進み、ペースを上げることができました。タイヤ、サスペンション、エレクトロニクス、そしてギアボックスのセッティングに取り組みました。今回は3日間を通じて、気温が高く、厳しいテストになりました。使えるタイヤ(10セット)も残り少なくなり、最終日は慎重にメニューをこなさなければなりませんでしたが、着実にスピードアップを果たし、ペースも改善できました。最終日にテストしたカーボンスイングアームは新しい取り組みですが、データを収集し、いいフィーリングを感じられたテストになりました。今回のテストでは、チーム、そしてエンジニアの仕事にとても満足しています。マシンは確実に改善されています。カタールテストもこのまま順調に進めば、とてもいいと思います」

マルク・マルケス(総合3位、1分29秒969)マルク・マルケス
「初めてのサーキットなので、初日はコースを覚えることに集中しました。走り始めからとてもフィーリングがよく、リズムある走りができました。初日は電子制御に集中しましたが、2日目、3日目と引き続き、調整を続けました。チャーン・インターナショナル・サーキットは、下見したときに予想したよりスピードの遅いサーキットでしたが、ハードブレーキング、そして加速していくポイントが何カ所かあって、タイヤのマネージメントがとても重要なコースになりそうです。2日目(17日)は25歳の誕生日でした。たくさんのメッセージをいただき、ファンにはとても感謝しています。この日はタイヤテストをはじめ、いろいろなセッティングやエアロダイナミクスに取り組みました。2日目も順調に作業は進み、最後にはそれまででベストな状態にして、タイムを出しました。最終日は20ラップのロングランを行うなど、多くのデータを収集しました。カーボンスイングアームなどいくつか新しいことにも取り組み、同時に比較テストも行いました。まだ、ポジティブな面とネガティブな面があるので、さらにテストを続けていくことになります。新しいエアロダイナミクスはかなりポジティブでした。これまでとはちょっと違うライディングが要求されますが、全体的にはとてもよく、3日間を通して満足できるテストになりました」

カル・クラッチロー(総合4番手、1分30秒064)カル・クラッチロー
「初めてのサーキットでしたが、初日から順調にコース攻略を果たすことができました。と同時に、昨年型と比較してプラスなポイントがいくつもあり、Hondaはすばらしい仕事をしてくれたと感じました。この日は時差ボケであまり眠れず、しかも気温が高くて体調的に厳しい一日でしたが、収穫の多いテストのスタートとなりました。2日目は、いくつものテスト項目があったので、それを着実にこなしました。そのため、タイム的にはそれほどではありませんが、ユーズドタイヤでのアベレージはよかったし、成果のある一日となりました。もし、アタックしていれば1分29秒台は狙えたし、明日が決勝ならば表彰台を狙える状況だと感じるほど前進できています。最終日はロングランもベストタイムもよかったと思います。タカ(中上貴晶)も非常に順調に走行しているし、チームとしてとてもいいテストになりました」

中上貴晶(総合10番手、1分30秒456)中上貴晶
「3日間を通じて全体的にいい形で終えることができました。ベストタイムはトップから0.675秒差でトップから1秒差以内という目標を達成したし、順位でもトップ10に入ることができて、ウインターテストの目標を達成することができました。一発のタイムはもちろんですが、15ラップのセミロングランでも1分31秒台前半で走行できたし、終盤には30秒台に入れられることができました。着実に前進できたという点では、セパンよりいいテストになりました。課題はセパンと同じで、コーナーの立ち上がりでのロスがストレートでの加速に影響し、それがそのままタイムにも影響していていることです。もう一つは、バンク角をもう少し深くして、タイヤのエッジ部分をしっかり使わなくてはいけないということで、これはチームメカニック、ミシュランタイヤのエンジニアに指摘されています。次のテストではそれを改善していきたいです。今回のテストでは、マルケス選手の後ろについて走り、多くのヒントを得ることができました。スタッフとのやりとりでも、マルケス選手の走り方を基準にした会話が多くなりました。チャンピオンの走りに近づけるよう、これからも前進していきたいです。次のカタールテストは得意とするサーキットの一つなので、いい状態に仕上げて開幕戦を迎えられるようにしたいです」

フランコ・モルビデリ(総合13番手、1分30秒648)フランコ・モルビデリ
「3日間を通じて、RC213Vとコースの攻略に努めました。チャーン・インターナショナル・サーキットは初めて走るサーキットですが、初日と3日目に転倒してしまいました。転倒の原因をしっかり分析して、これからの走りに役立てたいです。今回のテストではユーズドタイヤでタイムがよく、新品のタイヤを入れたときにタイムを更新できないことが課題になりました。その原因もしっかり分析したいです。今回は3日間を通じて着実にタイムを更新できました。バイク、タイヤ、そしてセットアップの変化をしっかり理解していかなければなりませんが、今回の3日間のテストは課題もクリアになりました。カタールテストでも引き続き、バイクのパフォーマンスをしっかり引き出せるようにセットアップを進めていきたいです」

トーマス・ルティ(総合21番手、1分31秒354)トーマス・ルティ
「今回がRC213Vで2回目のテストになりますが、新しいサーキットなので、セパン同様に多くの周回をこなしました。ラップを重ねるごとにフィーリングはよくなりました。しかし、焦らず、しっかりMotoGPマシンを攻略していくため、いろいろなことに取り組みました。RC213Vの旋回性やライン取りを確実にするためにはどういうライディングがいいのかということも学んでいます。さらにセットアップを変更することで、バイクのフィーリングがどう変わるかということも確認しながら走行しました。やるべきことがたくさんあります。大きなステップを刻むためのメニューではないので、ライダーとしては多少、フラストレーションはありますが、一日一日、進歩していることを感じるテストになりました」

MotoGP リザルト

順位 No. ライダー マシン タイム/差
126ダニ・ペドロサHonda 1'29.781
25J.ザルコヤマハ +0.086
393マルク・マルケスHonda +0.188
435カル・クラッチローHonda +0.283
542A.リンススズキ +0.397
643J.ミラードゥカティ +0.404
74A.ドヴィツィオーゾドゥカティ +0.411
825M.ビニャーレスヤマハ +0.493
99D.ペトルッチドゥカティ +0.586
1030中上貴晶Honda +0.675
1153T.ラバトドゥカティ +0.695
1246V.ロッシヤマハ +0.730
1321フランコ・モルビデリHonda +0.867
1441A.エスパルガロアプリリア +0.920
1529A.イアンノーネスズキ +0.937
1699J.ロレンソドゥカティ +0.948
1719A.バウティスタドゥカティ +1.102
1838B.スミスKTM +1.140
1936M.カリオKTM +1.388
2045S.レディングアプリリア +1.530
2112トーマス・ルティHonda +1.573
2255H.シャーリンヤマハ +1.756
2317K.アブラハムドゥカティ +1.880
2410X.シメオンドゥカティ +2.238

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