Vol.195 Round 15

マルケスがタイGP初制覇を遂げ、次戦日本GPをタイトル王手で迎えることができたレース戦略とは?

初開催となったタイGPは、連日、30℃を超える猛暑、そして路面温度が50℃前後まで上がる厳しい条件となりました。初開催ということで、舞台となるブリーラムのチャーン・インターナショナル・サーキットでは、2月に3日間の公式テストを行われていますが、気候、路面コンディション、そして、テストで使用したタイヤと微妙に仕様が異なるため、フリー走行では、2月のテストのデータとの比較からスタートしました。

2月のテストでロングランを集中的に行ったマルク・マルケスは、FP1、FP2ともに通常通り、1セッション1セットのタイヤで走って総合4番手。トップタイムではありませんが、連続ラップのアベレージはよく、土曜日の予選、日曜日の決勝に向けて順調なスタートを切りました。

翌日、土曜日午前中のFP3もマルケスはロングランを行い、順調でした。そしてセッション終盤にタイムアタックをしてダイレクトで予選Q2に進出する予定でしたが、転倒を喫し11番手にダウン、ダイレクトでのQ2進出を逃しました。

FP3最初のアタックは、フロントにミディアム、リアにソフト。前後新品で挑みましたが、フロントタイヤのフィーリングが完ぺきではなくてピットイン。2回目はフロントにユーズドタイヤのハード、リアは最初のアタックで装着した新品ソフトで挑みました。しかし、前後のタイヤのグリップのバランスが崩れ、転倒、フラストレーションのたまる結果となりました。

こうしてQ1から予選に挑むことになったマルケスですが、気持ちを入れ替えて、Q1でトップタイムを記録。引き続き、Q2でもトップタイムをマークして今季5回目のポールポジション(PP)を獲得(最高峰クラス通算50回目)。2013年に現行の予選方式になってから初めてQ1から進出してPPを獲得した選手になりました。

これで勢いに乗ったマルケスは、決勝でもトップグリッドから好スタートを切り、トップグループに加わります。レース序盤は、マルケスを先頭にバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)。中盤はロッシ、マルケス、ドヴィツィオーゾの順で走行しますが、ペースがやや遅く、カル・クラッチロー(LCR Honda CASTROL)、ダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)、マーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)、ヨハン・ザルコ(ヤマハ)、アレックス・リンス(スズキ)が加わり、トップグループは8台へ膨れあがりました。そして後半に入ると、ドヴィツィオーゾが先頭に立ち、マルケス、ロッシの順になり、後続からビニャーレスが加わり4台がグループから抜け出します。終盤は、マルケスとドヴィツィオーゾの一騎打ちとなり、何度もポジションを入れ替えますが、最終ラップの最終コーナーでクロスラインでドヴィツィオーゾをかわしたマルケスが、初開催となったタイGPを制しました。

シーズン前半戦のオランダGPの戦いを彷彿させる大集団での優勝争い。後半、力強いレースをしたマルケスが優勝というのもオランダGPの再現となりました。暑くて熱い、そして厳しい戦いをRepsol Honda Teamのアルベルト・プーチ監督が振り返ります。

―タイGPの戦略はどういうものでしたか?

「タイヤのいいコンディションをキープすることが戦略でした。なぜなら、だれにとってもレース終盤にできる限り速く走ることが目標だったからです。レースのペースは、それほど速くはありませんでした。プラクティスでは1分31秒台前半でしたが、レースでは32秒台の戦い。マルクを含むトップグループのライダーたちはこのくらいのペースで走行しました。そして、レース終盤は、優勝争いになったドヴィツィオーゾとマルクが、ほかのライダーたちより少し速いペースになりました」

―タイGPのポジティブポイントとネガティブポイントを教えてください。

「ポジティブなことはマルクがすばらしい勝利を遂げたことです。また、レースでダニが徐々に前進していくところを見られたことです。彼は後方からとてもいいペースで追い上げました。それだけに、彼の転倒は本当に残念でした」

―ピットウォールから見ていた感想はどんなものですか?

「集団となり難しいレースでした。なぜならレースペースがそれほど速くないと、今回のように多くのライダーがトップグループを形成するからです。こういう展開は、レースをさらにリスキーなものにします」

―今大会のインサイドストーリーを教えてください。

「タイで初めて行われたMotoGPのレースだったので、Hondaは多くのファンとのイベントを準備しました。そして500cc(現MotoGPクラス)で5度の世界チャンピオンになったミック・ドウーハンを招待しました。またマルクは水曜日のバンコクで行われたプレイベントで使ったレプリカのトゥクトゥクをガレージに置いていました」


スタートからゴールまで緊張感あふれる戦いとなったタイGP。その戦いをすばらしい走りで制したマルケスが今季7勝目を挙げました。

その結果、今大会を終えてマルケスは271ポイント、総合2位のドヴィツィオーゾが194ポイント、総合3位で今大会4位のロッシが172ポイント。残り4戦となり、ドヴィツィオーゾと77ポイント差、ロッシと99ポイント差。計算上ではこの3人にタイトルの可能性がありますが、次戦日本GPでマルケスは、ドヴィツィオーゾに76ポイント差をつければタイトルが決まります。

マルケスは、過去4回のタイトル獲得で日本GPでタイトルを決めたのは、14年と16年の2度。再び、日本GPで3回目のタイトル決定の可能性が膨らんでいます。3年連続5回目のタイトル獲得に王手のマルケス。次戦日本GPは世界中のレースファンが注目することになります。

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