Vol.194 Round 14

マルケス・コーナーが誕生した母国グランプリでマルケスが勝利。タイヤ選択が決め手となり、厳しい戦いを制す

第14戦アラゴンGPは連日好天に恵まれ、今大会もまた、ドゥカティ勢との厳しい戦いとなりました。大会3連覇(大会通算4勝目)の期待がかかるマルク・マルケスは、今大会の結果次第ではタイトル王手をかけることになりますが、予選では、ホルヘ・ロレンソ、アンドレア・ドヴィツィオーゾのドゥカティ勢に続いて3番手でした。

モーターランド・アラゴンで事前テストをしているドゥカティ勢が優位に立った予選。対して、このコースを得意とするマルケスは、事前テストを実施していない状況で僅差の3番手と健闘。ポールポジションの獲得は逃しましたが、逆転優勝の期待が膨らみました。

そして迎えた決勝は、レースウイークを通じてもっとも気温(30℃)と路面温度(45℃)が高い厳しい条件となりましたが、好スタートを切ったマルケスは、ドヴィツィオーゾ、そして、このコースを得意とするアンドレア・イアンノーネ、アレックス・リンスのスズキ勢2人を加えた4人でトップグループを形成しました。その中でドヴィツィオーゾとマルケスが終始、主導権を握りましたが、終盤はイアンノーネも加わり、三つ巴の厳しい戦いとなりました。

しかし、ラスト3周でトップに浮上したマルケスは、そこから渾身の走りを見せてドヴィツィオーゾとイアンノーネを突き放し、地元ファンの前で見事大会3連覇と今季6勝目を達成しました。

勝因の一つは、気温、路面温度が高い中で、フィーリングがよかったというソフトタイヤをリアに選択したこと。レース前の最後の決断が、RC213Vのパフォーマンスを存分に引き出し、ライバルを圧倒しました。

チームメートのダニ・ペドロサも、マルケス同様、地元ファンの声援を受け、5位でフィニッシュしました。ペドロサにとっては、得意のアラゴンで、2年連続表彰台獲得を逃す悔しいレースとなりましたが、今季ベストタイのリザルトで地元ファンを喜ばせました。ペドロサが選択したリアタイヤはハード。最後の最後までタイヤの選択に頭を悩ますレースとなりました。「ソフトを選んでいれば優勝争いに加われたと思う」と自身の決断を悔やむことになりましたが、全選手がタイヤの選択に悩む、難しいレースでした。

後半戦に入って、総合首位のマルケスを追いかける立場のドゥカティ勢は、失うもののない強みで全力で挑んできます。一方のマルケスは、タイトル獲得に向けて冷静な戦いが要求されます。そういう状況で達成した今季6勝目は、3年連続5回目のタイトル獲得に向けて大きな弾みとなりました。

厳しく長かった戦いをRepsol Honda Teamのアルベルト・プーチ監督が振り返ります。

―アラゴンGPの戦略はどういうものでしたか?

「マルクは今日は勝てるとわかっていましたし、ギリギリでリアタイヤを変更して賭けに出ました。タイヤの選択は、彼自身が決断しました。リスクはありましたが、ソフトの方がうまく走れると考えたのです。彼は前のライダーと一緒に走りました。今日はドヴィツィオーゾとスズキ勢でした。ダニはハードリア(タイヤ)に問題があり、カル(・クラッチロー)はハードリアで転倒してしまいました。つまりマルクが正しいタイヤを選んだということになります」

―今大会のポジティブポイントとネガティブポイントを教えてください。

「私たちにとってすばらしい日曜日になりました。ダニが表彰台に上がったらもっとよかったですが…。なぜなら彼にもトップ3に入るチャンスがあったからです。最も重要なことはマルクがシーズン6勝目を挙げて、チャンピオンシップのアドバンテージを広げたことです。次のタイのレースは、新しいサーキットです。冬の間にテストを行いましたが、私たち全員にとってまだ新しいテリトリーです。タイトルのことは考えずに、できる限りポイントを獲得するために向かいます」

―ピットウォールから見ていた感想を聞かせてください。

「すばらしいレースでした。個人的には、レース序盤にドビ(ドヴィツィオーゾ)がギャップを広げていたら、彼が勝つかもしれないと思いました。でも周回するごとに、マルクの方が優勝できるチャンスが高いと思うようになりました」

―今大会のインサイドストーリーを教えてください。

「今週末もまた私たちのライダーにとってはホームグランプリでした。特にマルクにとっては特別でした。今大会の開幕前日に、サーキットの10コーナーにマルク・マルケス(の功績)を称えて、彼の名前が付きました。マルクにふさわしいですし、今日は、彼のファンクラブの前ですばらしいショーを見せました」


第14戦アラゴンGPを終えて、2018年シーズンは、いよいよタイ、日本、オーストラリア、マレーシアと続くアジア・オセアニアシリーズへと突入します。今大会を終えて総合2位のドヴィツィオーゾに72ポイント差をつけたマルケスは、いよいよ、タイトル獲得に向けて王手をかける瞬間が迫ってきました。しかし、大量リードを築くも、これまで通りレースに集中し、マルク・マルケスとRepsol Honda Teamは、次戦タイGPも全力で挑むことになります。

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