Vol.187 Round 06

今季最も厳しい戦いとなったイタリアでの週末

第6戦イタリアGPは3日間ともに天候に恵まれ、青空が広がる絶好のコンディションの中、ムジェロ・サーキットで行われました。決勝日は9万310人のファンがスタンドはもちろんのこと、ムジェロの山肌を埋め尽くし、最高気温29℃という暑さの中で繰り広げられた熱戦を見守りました。

過去3戦にかけて、マルク・マルケス(Repsol Honda Team)はアメリカズGP、スペインGP、フランスGPと3連勝を達成しました。その間、スペインGPのあとに行われたムジェロの合同テストでもマルケスは好調な走りを見せ、スペインGP、フランスGPに続き、4年ぶりの大会制覇が期待されました。しかし、決勝日は5月のテストに比べて路面温度が20℃も高くなった51℃を記録し、タイヤにとって厳しい条件となりました。この数年、HondaのRC213Vは、ムジェロでは車体とタイヤのマッチングに苦しんできましたが、気温も路面温度も上がった今年は一段と厳しい戦いを強いられ、期待したような結果を残せませんでした。

過去3連勝と好調なマルケスは、フリー走行、予選と、ソフトすぎるタイヤに苦戦し、思うような走りができませんでした。その状況の中で、気温と路面温度が若干低い午前中の時間帯に行われたFP3ではトップタイムをマークします。しかし、気温も路面温度も上がる午後の予選では6番手へとダウン。午後2時にスタートした決勝では、29℃の最高気温と51℃の路面温度の中で、完璧な走りができませんでした。

レース前の予想通り、予選6番手から好スタートを切って序盤2番手まで浮上したマルケスですが、5周目の右10コーナーでフロントからスリップダウン。再スタートしましたが16位になるのがやっとで、ポイントを獲得することはできませんでした。

チームメートのダニ・ペドロサは、フリー走行、予選とタイヤのグリップに苦しんで思うようにタイムを伸ばせませんでした。予選では、フリー走行で転倒した影響で1号車が使えなかったため、セッティングの異なる2号車でタイムアタックしなければならず、20番手と大きく後退しました。決勝でもオープニングラップの2コーナーで、前を走るアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)選手のリアタイヤに接触してバランスを崩し、中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)を巻き込んで転倒という残念な結果に終わりました。

Honda勢の最高位は、予選8番手から追い上げのレースを見せたカル・クラッチロー(LCR Honda CASTROL)による6位。ホームグランプリで初のQ2進出を果たしたフランコ・モルビデリ(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)は、苦しい戦いの中で今季5回目のポイント獲得となる15位でフィニッシュしました。予選18番手から2コーナーでペドロサに追突されて転倒した中上は、再スタートを切って18位。トーマス・ルティ(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)も2周目に転倒寸前のライダーを避けて転倒リタイアと、Honda勢にとっては今季最も厳しい大会となりました。そんなイタリアでの週末を、Repsol Honda Teamのアルベルト・プーチ監督に振り返ってもらいました。

―イタリアGPの戦略はどういうものでしたか?

「フロントタイヤをマネージメントする戦略でしたが、今日はそれがうまくできませんでした。ダニは2コーナーで転倒してしまい、マルクもその数周後に転倒しました。彼はそれほどプッシュしていなかったので、転倒は予想外でした。Repsol Honda Teamにとっては、あまりいい日にはなりませんでした」

―今大会のポジティブポイントとネガティブポイントを教えてください。

「今日唯一ポジティブだったことは、2人とも転倒したにもかかわらずケガがなかったことですね」

―レース中、ピットウォールから見ていた感想をお聞かせください。

「ピットから見た状況はあまりいいものではありませんでした。ダニの転倒には驚きました。1周目のストレートを彼が通らなかったからです。テレビのスクリーンでも彼の転倒シーンは映らず、確認できたのは少し経ってからでした。10コーナーでフロントが滑ったときに、マルクは転倒しないように一生懸命頑張っていました。私たちもそのときは、もしかするとなんとか転倒を回避するんじゃないかと思いました。でも最終的にそれはかないませんでした」

―今大会のサイドストーリーを教えてください

「Kiss Mugelloが始まって今年6年目になりました。私たちのライダーやチームもプログラムに貢献できてうれしく思っています。私たちのスポーツが環境に与える影響を減らすことの重要性に関して、意識を向上させることに貢献しました」

Repsol Honda TeamにとってイタリアGPは、両選手が転倒するという最悪の一日となりました。マルケスは再スタートを切りましたがポイントを獲得できず、ペドロサはオープニングラップに転倒してリタイアという残念な結末となりました。

しかし、6戦を終えてマルケスは総合首位をキープ。総合2位に浮上したバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)に23点差をつけています。昨年はイタリアGPを終えて総合4位。トップの選手を37点差で追うという厳しい状況だっただけに、2018年にRC213Vが遂げた進化とパフォーマンスの高さを、改めて実感することになりました。

今回は路面とタイヤがマッチングせず、ライダーもマシンのパフォーマンスも発揮できませんでした。Repsol Honda Teamにとって今季2回目のホームグランプリとなる次戦カタルニアGPは事前テストで大きな成果を上げているだけに、今大会の巻き返しに期待がかかります。

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