今季3度目の公式テストが、3月2日(水)〜4日(金)の3日間、開幕戦カタールGPの舞台となるロサイル・インターナショナル・サーキットで行われました。このテストが終わると、いよいよ開幕戦を待つばかりとなるだけに、すべてのチーム、選手は緊張感が高まっていました。
マルク・マルケス
マルク・マルケス
ロサイルは、1周5.400km。ロングストレートと中速コーナーを組み合わせたレイアウトで、速度アベレージの高いサーキットです。2008年からはナイトレースとして行われ、公式テストも午後4時〜午後11時という夜に及ぶ7時間で行われます。しかし、気温や路面温度が日中と夜では大きく変わるため、ほとんどの選手が日没を迎える午後6時からスタートし、気温が急激に下がり始める午後10時ごろを目安にテストを行います。
マレーシアテスト、そしてオーストラリアテストと着実に調子を上げているマルク・マルケス(Repsol Honda Team)は、最後の調整の場となる3日間のカタールテストに挑みました。MotoGPクラスにデビューした2013年のカタールGPは3位、14年には優勝していますが、昨年はオープニングラップでコースアウトを喫して5位に終わっています。マルケスは、カタールGPがHonda勢にとって、シーズンを通して最も厳しい戦いになると分析します。その要因の一つは、路面コンディションが安定せず、全体的にグリップが不足すること。そのため、RC213Vのパフォーマンスをうまく引き出せません。マルケスは昨年に引き続き、今年もこの課題に取り組みました。
マルク・マルケス
マルク・マルケス
初日と2日目は、ブレーキングは安定するものの、グリップ不足のため、コーナリングと脱出のスピードで大きくタイムロス。中速コーナーとロングストレートが多いサーキットだけに、このウイークポイントの解消は急務となります。3日間で139ラップをこなしたマルケスは、この課題に取り組み試行錯誤を続けます。そして、最終日に大きくセットアップを変更。これが功を奏して、タイムを大きく短縮することに成功。総合順位でも僅差の中で4番手と、まずまずの仕上がりとなりました。
今年は全車が共通のソフトウエアを搭載するなどレギュレーションが変わり、タイヤもブリヂストンからミシュランとなった変革のシーズンです。マレーシア、オーストラリア、そしてカタールと、3カ所での9日間のテストでセットアップに集中しましたが、時間が足りず、完ぺきな状態になったとは言えません。しかし、方向性は見えているだけに、あとは本番で調整していくことになりました。2年ぶり3度目のタイトル獲得に向けて、マルケスがどんな走りを披露するのか。世界中が注目しています。
ダニ・ペドロサ
ダニ・ペドロサ
カル・クラッチロー(LCR Honda)は、3日間で132ラップを消化。グリップしない路面に苦労するも、コンディションが回復するにつれて着実にセットアップを進めました。マレーシアテストでは6番手。オーストラリアテストでは3番手。そして今回のテストでは7番手と、Honda勢の中ではマルケスに次ぐ走りをみせました。今年の活躍に期待です。
Repsol Honda Teamで11年目のシーズンを迎えるダニ・ペドロサは、3日間で99ラップ、総合10番手でテストを終えました。念願のタイトル獲得に闘志を燃やすペドロサは、今回のテストでもセットアップに集中しました。しかし、グリップしない路面コンディションに苦戦し、思うようにセットアップを進められませんでした。開幕戦に向けて課題を残すテストとなりましたが、本番に強い選手だけに、開幕戦での巻き返しに期待です。
2年目のシーズンを迎えるジャック・ミラー(Marc VDS Racing Team)も、3日間で97ラップと、グリップ不足に苦労して思うように周回数を伸ばせませんでした。加えて、1月中旬にトレーニングで骨折した、右脚のけい骨とひ骨の影響で、完全なライディングがまだできませんでした。ただ、脚が回復するにつれて本来の走りが戻ってきているだけに、ミラーは開幕戦を楽しみにしています。
おととしのMoto2チャンピオンのティト・ラバト(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)は、3日間で116ラップ。ほかのHonda勢と同様に、ラバトも路面のグリップ不足に苦しみましたが、デビュー戦となるカタールGPに向けて気合満点。2014年のMoto2チャンピオンのデビュー戦に注目です。
ダニ・ペドロサ
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
---|---|---|---|---|
1 | 99 | J.ロレンソ | ヤマハ | 1'54.810 |
2 | 45 | S.レディング | ドゥカティ | +0.516 |
3 | 25 | M.ビニャーレス | スズキ | +0.523 |
4 | 93 | マルク・マルケス | +0.592 | |
5 | 46 | V.ロッシ | ヤマハ | +0.619 |
6 | 29 | A.イアンノーネ | ドゥカティ | +0.698 |
7 | 35 | カル・クラッチロー | +0.782 | |
8 | 4 | A.ドヴィツィオーゾ | ドゥカティ | +0.890 |
9 | 8 | H.バルベラ | ドゥカティ | +0.923 |
10 | 26 | ダニ・ペドロサ | +1.047 | |
11 | 44 | P.エスパルガロ | ヤマハ | +1.072 |
12 | 68 | Y.ヘルナンデス | ドゥカティ | +1.084 |
13 | 38 | B.スミス | ヤマハ | +1.156 |
14 | 76 | L.バズ | ドゥカティ | +1.247 |
15 | 41 | A.エスパルガロ | スズキ | +1.316 |
16 | 51 | M.ピロ | ドゥカティ | +1.781 |
17 | 53 | ティト・ラバト | +2.217 | |
18 | 19 | A.バウティスタ | アプリリア | +2.233 |
19 | 43 | ジャック・ミラー | +2.236 | |
20 | 50 | E.ラバティ | ドゥカティ | +2.336 |
21 | 6 | S.ブラドル | アプリリア | +2.530 |
22 | 7 | 青山博一 | +3.537 | |
23 | 12 | 津田拓也 | スズキ | +5.481 |
マルク・マルケス(1分55秒402 総合4番手)
「最終日の結果にはとても満足しています。カタールが、シーズンを通して最も厳しいサーキットになることが分かっていました。初日と2日目は、思っていたようなタイムでもポジションでもありませんでしたが、3日目になってフィーリングがよくなり、大きく改善されたことを実感しています。まずは、すばらしい仕事をしてくれたチームに感謝したいです。今回は、ブレーキングの部分は最初から満足のいくものでしたが、コーナリングスピードとコーナーの立ち上がりに問題を抱えていました。そのため、最終日に向けて大きく変更を加えたのですが、それが大きな効果をもたらしてくれました。まだ満足がいく内容ではないですし、やらなければならないことがたくさんありますが、トンネルで出口の光を見たような気分です。初日と2日目は本当に厳しい状況でしたが、3日目を終えて自信を取り戻しました。調子が上向きの状態で開幕戦に臨めると思うとうれしいです」
カル・クラッチロー(1分55秒592 総合7番手)
「3日間を通じて、とてもタフなテストになりました。とにかく、簡単に改善するようなフィーリングではありませんでした。みんな同じようなコメントでしたし、結果的に、同じようなセッティングになったこともありました。しかし、セパンとフィリップアイランドの結果をもとに、エンジニアたちが実施してくれたアイデアで、大きなステップを刻めました。最終日は、ロングラン中に転んでしまいました。レースに匹敵する距離を走っていたときのことで、これも自分の中では貴重なデータになりました。いずれにしても、2週間後は開幕戦。いよいよシーズンのスタートです」
ダニ・ペドロサ(1分55秒857 総合10番手)
「3日間を通して、いろいろなテストにトライしましたが、全体的には不満の残るものでした。最終日は、テストで割り当てられるタイヤが残り少なくなっていたこともあり、タイムとポジションを狙うような状態ではなく、テストを早く切り上げることになりました。このサーキットは、路面コンディションがどんどん変わっていく難しいコースです。そのため、初日はテストのスタートを遅らせたのですが、それでもいい感触はあまり得られませんでした。2日目にはカウルにウイングをつけてのテストも行いましたが、いい部分とそうでない部分がありました。まだテスト段階なので、これからも続けていくことになります。全体的に満足のいく結果ではありませんでしたが、やってみたいアイデアがまだまだあります。今回のデータを分析して、どうすればもっとパフォーマンスを発揮できるのかを追求したいです」
ティト・ラバト(1分57秒027 総合17番手)
「カタールテストは、初日の大クラッシュから始まるという最悪なものでした。マシンからはなんの兆候や警告のようなものはなく、突然、転倒しました。2日目はケガをしたくなかったですし、大クラッシュを避けるためにプッシュしなかったのですが、ラップタイムは簡単に上がっていきました。そこで再度、プッシュすることにしたのですが、またなんの兆候もなく転んでしまいました。限界を感じられず、本当に難しい3日間でした。開幕戦でここへ戻ってくるときには、いくつかのことを試せるようにしていたいです。もしなんの改善もできなければ、シーズンのスタートは信じられないほど厳しいものになると思います」
ジャック・ミラー(1分57秒046 総合19番手)
「カタールテストは、我々にとっていろいろなことを試す機会になりました。全体的にグリップが不足していたので、それを改善しようとがんばりました。負傷している脚に負担がかかる右コーナーにも集中しました。右脚のケガは回復してきていますが、フィリップアイランドのときよりは負担が大きく、確実に痛みました。マシンのセットアップの難しさを感じました。フィーリングのいい状態を感じる瞬間もありましたが、現時点では、フロントタイヤのフィーリングに自信を持てないのが最大の課題です。まだまだやるべきことが残っていますが、開幕戦まで少しだけ時間があるのは、僕にとっては幸いです。開幕戦が始まるころには脚の状態がよくなっているはずで、もう少し強くなっていると思います」