後半戦のスタートとなった第12戦チェコGPから、2週間のインターバルを経て、第13戦サンマリノGPが、9月14日(金)から16日(日)までの3日間、イタリアのアドリア海に面したミサノ・サーキットで開催されます。ミサノ・サーキットは、昨年のマレーシアGPで不慮の事故のために亡くなったマルコ・シモンチェリ選手の栄誉をたたえ、「ミサノワールドサーキット・マルコ・シモンチェリ」と名称が変わりました。今大会は、Honda勢にとっては特別な大会です。シモンチェリ選手が生まれ育ったミサノで開催されるグランプリで、彼に優勝をささげたいと意気込んでいます。
サンマリノGPは、ムジェロ・サーキットで開催された1993年を最後に中断していましたが、2007年に全面改修を受けたミサノで、14年ぶりに復活しました。ミサノの旧コースは、左回りの4.180kmでしたが、大きな改修を受けた新コースは、右回りの4.226kmへと変更されました。
GPが復活してからの過去5年間の戦いでは、ダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)が、09年3位、10年に優勝、11年が2位と、3年連続で表彰台に立っています。今年は、第11戦インディアナポリスGP、第12戦チェコGPと目下2連勝中。第10戦アメリカGPから投入されたニューマシンのポテンシャルをいかんなく発揮しているだけに、今大会は今季4勝目と、MotoGPクラスでは自身初となる3連勝に挑みます。
第11戦インディアナポリスGPの予選で転倒し、右足首を負傷したケーシー・ストーナー(Repsol Honda Team)は、インディアナポリスGPを4位でフィニッシュしましたが、そのあとの診断の結果、手術を行うことになりました。すでに手術は終わり、一日も早い復帰を目指して治療を続けています。今大会で、Repsol Honda Teamは、スーパーバイク世界選手権にHonda World Superbike Teamから参戦しているジョナサン・レイを代役として起用します。レイにとっては初のMotoGP参戦となります。
代役出場のために、第12戦チェコGPのあとの合同テストと、そのあとにスペイン・アラゴンで開催された合同テストにも参加し、計3日間のテストを行ったレイは、着実にタイムを短縮しています。MotoGPクラスに参戦することを目標に、スーパーバイクでもがんばっており、今回の参戦を「夢のようです」と語っています。ミサノは、スーパーバイクで初優勝を達成しているサーキットで、今年の大会でも2位表彰台に立っています。相性のいいサーキットでのデビュー戦に期待されます。
ルーキーながら12戦を終えてランキング6位と健闘しているステファン・ブラドル(LCR Honda MotoGP)は、得意のサーキットに闘志を燃やしています。昨年、Moto2クラスではポールポジション(PP)から2位表彰台を獲得しました。そして、チームのホームグランプリとなるムジェロで開催された第9戦イタリアGPでは、今季ベストの4位でフィニッシュしています。チームにとって、今季2度目となるホームグランプリに闘志満々。イタリアGPの再現と、それ以上のリザルトに期待が膨らんでいます。
前戦チェコGPで6位となったアルバロ・バウティスタ(Team San Carlo Honda Gresini)は、チームのホームグランプリに闘志を燃やしています。250ccクラス時代には、優勝と3位表彰台を経験しているサーキット。シーズン中盤戦になって不完全燃焼のレースが続いているだけに、チームの本拠地ミサノで、うっぷんを晴らす意気込みです。予選では今季2度目のPP、決勝では初表彰台を狙います。CRTマシンで出場するチームメートのミケーレ・ピロも、今季ベストリザルトを目指して気合を入れています。
Moto2クラスは、大接戦が予想されます。昨年の大会では、PPを獲得したブラドルから1秒差以内に12台、決勝でも優勝したマルク・マルケス(Team CatalunyaCaixa Repsol)から6位までが3.436秒差という厳しい戦いとなりました。サンマリノは気温が高く、タイヤに厳しいレースとなることが予想され、今年も白熱したバトルになりそうです。
今季これまで11戦を終えて6勝を挙げ、ランキング首位に立つマルケスは、インディアナポリスGP、チェコGPと2連勝を達成して絶好調です。今大会は、3連勝と125ccクラス時代から合わせて3年連続のサンマリノGP制覇を狙います。現在、ランキング2位のポル・エスパルガロ(Pons 40 HP Tuenti)に48点のリードを築いており、「チャンスがあれば優勝を狙います」というマルケス。タイトル獲得に向けて自分自身との戦いになることを感じさせています。
エスパルガロは、これまでミサノではあまりいい結果を残していません。125ccクラス時代は07年の5位、Moto2クラスでは昨年9位でした。今年は、マルケスとのポイント差を縮めるためにも、サンマリノGP初の表彰台を狙います。ランキング3位のトーマス・ルティ(Interwetten-Paddock)は、10年にMoto2クラスで3位表彰台に立っています。今年は11戦して6回の表彰台と安定した走りを見せており、2年ぶり2回目のサンマリノGP表彰台を狙います。
日本人勢は、中上貴晶(Italtrans Racing Team)、高橋裕紀(NGM Mobile Forward Racing)が、イタリアをベースにするチームに所属しており、ホームグランプリとなります。ともに今季ベストを狙う戦いとなります。
Moto3クラスも厳しい戦いが予想されます。11戦を終えてクラス最多の5勝を挙げているマーベリック・ビニャーレス(Blusens Avintia)は、ランキング首位のサンドロ・コルテセ(KTM)とのポイント差を縮めるためにも、今季6勝目を狙います。ルーキーでランキング4位につけるロマノ・フェナティ(Team Italia FMI)は、得意とするサーキットで開催されるホームグランプリに気合満点です。同じくルーキーでランキング5位のアレックス・リンス(Estrella Galicia 0,0)も、今季イタリア選手権に出場して表彰台に立っているだけに、サンマリノGPを楽しみにしています。藤井謙汰(Technomag-CIP-TSR)は、チェコGP後に全日本ロードレース選手権に参戦してからサンマリノGPに挑みます。
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位)「ミサノはとてもトリッキーなサーキットです。グリップレベルが変化するので、とても難しいですね。午前中のセッションと午後のセッションでも、路面のコンディションが大きく変化します。これまでのRC212Vは、このサーキットをあまり得意としていませんでしたが、今年のRC213Vは、かなり改善されたと信じています。ブルノとアラゴンのテストでは、サスペンションと電子制御のセットアップに取り組み、大きな成果を挙げることができました。ミサノでは力強くスタートできるのではないかと思っています。ミサノは、路面がとてもバンピーで、そうしたコンディションにもかかわらず、ブレーキングと加速をするポイントが多いことも、大きな課題になります。これまで同様、セットアップに集中してマシンのパフォーマンスを生かし、自分のライディングに集中して、チャンピオンシップでのギャップを詰めていきたいと思います」
ジョナサン・レイ(MotoGP 初出場)「MotoGPへ出場することになり、僕にとっての大きな夢がかなったような気持ちです。とても強いレースをしていたケーシー(ストーナー)でしたが、ケガをしてしまい、とても残念でした。彼の一日も早い回復を願っています。今、僕の仕事は彼の代役を務めることですので、ベストを尽くしたいと思います。ミサノは大好きなサーキットです。今年、このサーキットでは、スーパーバイク世界選手権で2位を獲得しました。また、ミサノは09年に初めてスーパーバイク世界選手権で優勝したサーキットです。今回の出場は、Hondaからのすばらしいプレゼントだと受け止めています。すでに、テストでチームと一緒に過ごし、とてもいい感じでした。このマシンで力を出すには、少し時間がかかることもみんなが分かってくれています。毎回マシンに乗るたびに学んでいます。このマシンで、合計3日間のテストに参加し、自分自身の準備ができてとてもよかったです。金曜日の朝は少し落ち着いていたいですね。ライディングポジションも決まり、ベースのセットアップも決まっています。電子制御をもう少し理解することができればと思います。忙しくなると思いますが、楽しみにしています」
ステファン・ブラドル(MotoGP ランキング6位)「僕にとって、ミサノはとても相性のいいサーキットです。昨年Moto2クラスで2位を獲得しています。今回のレースも、ムジェロでのイタリアGPのときのように、表彰台争いをしてフィニッシュできれば、どんなにすばらしいだろうと思います。ミサノは、いつも快適な気分で走ることができます。グリップコンディションはいいですし、レイアウトも好きです。チームにとっては、ホームグランプリという非常に重要なレースですので、しっかり最後まで走りたいです。そして、今年は僕らみんなが特別な思いを胸にレースをすることになります。観客も非常に多いと思います。彼らは、マルコ(シモンチェリ)をたたえるために彼のホームレースに来ると思います」
アルバロ・バウティスタ(MotoGP ランキング7位)「チェコGPは、納得のいかないレースでした。ブレーキングとコーナーエントリーに多くの問題を抱え、レースではリアグリップの問題も発生して、プッシュすることができませんでした。ですから、今大会の最初の目標は、いい感触を見つけることです。そこから始めたいです。ミサノは、Team San Carlo Honda Gresiniのホームサーキットであり、マルコ・シモンチェリの名が冠されてから初めて走ることになります。コースに出ていい結果を出したいです。ムジェロで行われたイタリアGPでも、いい思い出がありません。しかし、このサーキットでは250ccクラス時代に優勝していますし、いいレースにしたいと思います。ミサノはユニークなサーキットで、好きですがあまり得意ではありません。1コーナーがタイトなので、予選がとても重要になります。予選から全力を尽くしたいと思います」
ミケーレ・ピロ(MotoGP ランキング16位)「チェコGPで、5戦ぶりにチェッカーフラッグを受けることができました。しかし、レースは楽ではありませんでしたし、最後まで走れて本当によかったと思います。シーズンが終わりに近づくにつれて、さらなる努力をするとともに、強い気持ちを持ち続けていかなければなりません。今大会はとても特別なものになります。チームのホームサーキットであり、マルコ・シモンチェリの名前を持つサーキットになりましたので、いろいろな思いがあります。それがすばらしいレースをするためのモチベーションとなるはずです」
マルク・マルケス(Moto2 ランキング1位)「ミサノは、前戦チェコGPのブルノとはだいぶん違うサーキットです。ブレーキングポイントが多く、全体的に低速で小さいですね。昨年のレースは、いい思い出になっています。とても重要な勝利となりました。今大会も、目標はいつものように日曜日の決勝に集中することです。イタリア人ライダーたちは、このレースでは特にモチベーションが上がると思いますし、一段と手強いライバルになると思います。とにかく冷静に戦い、しっかりフィニッシュしたいです」
ポル・エスパルガロ(Moto2 ランキング2位)「ランキング首位とは点差が開きすぎています。マルク(マルケス)はとても調子がいいですし、毎戦すばらしい仕事をしています。しかし、今回もあきらめずに全力で挑みたいです。これまで以上に努力をして、マルクとのギャップを縮めるためにベストを尽くそうと思います。とにかく優勝することを目標に戦いたいです」
トーマス・ルティ(Moto2 ランキング3位)「前戦チェコGPでは優勝争いができましたし、今大会もそうしたレースができることを楽しみにしています。インディアナポリスGPではあまりよくありませんでしたが、ブルノでいいレースができましたので、今週も自信があります。ミサノは好きなサーキットです。いいレースができると思っています」
中上貴晶(Moto2 ランキング15位)「ムジェロでのイタリアGP同様、チームにとってはとても重要な戦いになるので、がんばりたいです。今回も全日本時代の本田監督がいらっしゃいますし、レイ選手がMotoGPに出場するため、岡田(忠之)さんがいらっしゃると聞いています。自分の走りをチェックしてもらえるいい機会ですので、しっかり見てもらいたいと思います。サンマリノは少し苦手意識があります。コース終盤はレイアウトが難しいです。とにかくいい状態にして、ムジェロのようにがむしゃらに走りたいと思います」
高橋裕紀(Moto2 ノーポイント)「ミサノは、250ccクラス時代から好きなコースで、表彰台に立ったこともあります。Moto2クラスでも昨年はフロントローに並んでいます。チームにとって大事なレースですが、僕自身にとっても、自分のパフォーマンスを証明していくレースになります。日本から知り合いのメカニックに来てもらい、応援してもらいます。昨年は大集団のトップグループの中で接触して遅れてしまい、7位でした。そうしたレースができないのが、歯がゆいです。マシンの問題点を再点検して、しっかりと走りたいです」
マーベリック・ビニャーレス(Moto3 ランキング2位)「いよいよチャンピオンシップも終盤戦です。ここからがとても重要な戦いになります。その最初のレースが、サンマリノGPです。ランキング首位に追いつくために全力を尽くさなければなりません。ポイント差が開いてしまいましたが、追い上げるだけです。ミサノは好きなサーキットで、いいレースができると思います。とにかく、天気がよくなることを願っています。そうすればセットアップに取り組むことができます。昨年のように熱が出ないことを願っています」
ロマノ・フェナティ(Moto3 ランキング4位)「ミサノは知っているサーキットですし、過去に優勝したこともあります。そのようなサーキットでレースができることがうれしいです。新しいサーキットを学ぶのも楽しいですが、今までの経験を生かせるサーキットへ戻るのも楽しいです。チームにとって今回は重要な週末になります。いい結果を持ち帰れることを願っています」
アレックス・リンス(Moto3 ランキング5位)「2カ月前にイタリア選手権で走っていますし、ミサノを走るのをとても楽しみにしています。サーキットに関しては、なにも心配していません。しかし、グランプリはレベルが高いので、イタリア選手権よりどのくらい速くなるのか楽しみにしています」