オランダ、ドイツ、イタリアと続いた3連戦終了後、1週間の休息を取ったグランプリは、アメリカ大陸へと舞台を移し、7月27日(金)から29日(日)までの3日間、カリフォルニア州モントレーのラグナセカ・レースウェイで第10戦アメリカGPが開催されます。今大会は、MotoGPクラスのみの開催で、Moto2クラスとMoto3クラスは、第11戦インディアナポリスGPまで夏休みとなります。
アメリカGPの歴史は、1964年、フロリダ州のデイトナでスタートしました。このときは、わずか2年間の開催でしたが、1988年にカリフォルニア州のラグナセカに舞台を移して、アメリカGPが復活しました。このときも94年までの7年間で6回開催されましたが(92年は未開催)、そのあと、アメリカGPは、再び中断されます。そして2005年に復活して、今年で8回目です。ラグナセカでは通算14回目、アメリカGPとしては16回目を迎えます。
ラグナセカは、一周3.610km。シーズンを通じて最も短いサーキットですが、アップダウンに富み、中速コーナーが連続するハイスピードコースで、コース中ほどの丘の上から急降下するS字コーナー「コークスクリュー」は、ラグナセカを世界的に有名にしました。ここから最終コーナーまでの下りセクションが、このサーキットの最大の勝負どころとなります。
Honda勢は、グランプリが再開された05年にニッキー・ヘイデン(現ドゥカティ)が、Hondaライダーとしては初の優勝を達成し、06年には2年連続優勝を果たしています。そして、09年にダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)、11年にケーシー・ストーナー(Repsol Honda Team)と、05年に復活してからの7大会で4回の優勝を果たし、今年は5回目の優勝を狙います。
9戦を終えて総合2位につけるペドロサは、シーズン前半戦の最大のヤマ場となった3連戦で、2位、優勝、2位と上々の結果を残しました。3連戦最初のレースとなったオランダGPでは、仕様違いの車体が投入されて、シーズン開幕前に改訂された最低重量引き上げのバランスの問題と、新しいスペックが投入されたブリヂストンのフロントタイヤへの対応が進みました。さらに、イタリアGP後の合同テストでは、車体もエンジンも新しくなったプロトタイプのテストに取り組んで好結果を残しています。ペドロサは今大会、そのプロトタイプを選択し、実戦で従来のマシンと比較することになりました。
ペドロサは、最高峰クラスにデビューした06年に2位、09年に優勝。2年連続優勝を狙った10年はトップを快走も痛恨の転倒を喫しています。昨年はケガから復帰したばかりで、万全の体調でなかったことから3位でしたが、今年は体調も万全で、総合首位のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)とのポイント差を縮めるために、3年ぶりの優勝に向けて全力を尽くすことになります。
ディフェンディングチャンピオンで昨年のウイナーのストーナーは、思うような結果を残せなかった3連戦の雪辱に闘志を燃やしています。3連戦最初のレースとなったオランダGPでは今季3勝目を達成。すばらしいスタートとなりましたが、ペドロサと優勝争いを繰り広げたドイツGPでは最終ラップに痛恨の転倒を喫してリタイア。3連戦最後のレースとなったイタリアGPは、セッティングが決まらず、走りのリズムも崩して8位と悔しい結果に終わりました。それだけに今大会は、巻き返しに気合を入れています。
06年に最高峰クラスにスイッチしてからのストーナーは、07年に優勝、08年2位、09年4位、10年2位と、常に優勝争いに加わってきました。Repsol Honda Teamに移籍した昨年はラグナセカで2勝目を達成。今年は2年連続、通算3回目の優勝を狙います。
オランダ、ドイツ、イタリアの3連戦で大きな成長を見せたルーキーのステファン・ブラドル(LCR Honda MotoGP)は、初めてのラグナセカに気合を入れています。ラグナセカは、05年に大会が復活してからは、MotoGPクラスだけの開催となっているため、MotoGPクラスのルーキーにとっては、1年目は厳しい試練が待ち受けることになります。しかし、前戦イタリアGPでは初めて表彰台争いに加わって4位でフィニッシュしているブラドルだけに、その勢いを初コースにぶつける意気込みです。
MotoGPクラス3年目のシーズンを迎えるアルバロ・バウティスタ(Team San Carlo Honda Gresini)は、これまでラグナセカでは完走したことがありません。今年はHonda RC213Vで初めて挑む大会となりますが、念願の初表彰台に闘志を燃やしています。今年は、初のポールポジションを獲得して4位でフィニッシュした第6戦イギリスGP以後、オランダ、ドイツ、イタリアと思うような結果を残せていません。それだけに今大会からの巻き返しに気合満点。チームメートでCRTマシンのミケーレ・ピロ(Team San Carlo Honda Gresini)も、初めてのラグナセカを待ちきれない様子。ドイツ、イタリアと過去2戦リタイアが続いているだけに、今大会は3戦ぶりの完走とCRTマシンの中でトップを狙っています。
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位)「ラグナセカでレースをするのをとても楽しみにしています。ラグナセカは雰囲気が最高で、サーキットもとても特徴があります。このようなサーキットはヨーロッパにはないですし、とても楽しいです。とにかく短いサーキットですが、とてもテクニックを必要とします。しかも路面がバンピーなので、体調が万全ではないととてもハードなレースになります。昨年は体調が万全ではなかったし、とても厳しかったです。今年は、以前のように楽しく走れることを願っています。今大会に向けてHondaは、新しいパーツを導入するために、とても努力してくれました。スタンダードのマシンと、ムジェロでテストをした新しいエンジンとシャシーで挑むことになります。ニューマシンでアドバンテージが得られることを願っています。そして、いいレースをしたいと思います」
ケーシー・ストーナー(MotoGP ランキング3位)「ラグナセカへ向かうのをいつも楽しみにしています。ラグナセカは雰囲気が最高ですし、いつも楽しいです。これまでいい結果も残すことができました。このサーキットは、とてもタイトでテクニカルです。この数戦はチャタリングに苦しんでいますが、左コーナーではチャタリングが少ないので、ラグナセカのような左周りコースは、僕にとってはポジティブです。でも、勝負どころになる重要なコーナーのいくつかは右周りのため、いいレースをするためには、マシンのセットアップがとても重要になります。過去2戦、残念なレースが続いていますので、今回はいい結果を出したいです。HRCは日本で一生懸命がんばってくれました。イタリアGP後にテストしたニューエンジンとパーツを導入してくれることになりました。とにかく、3日間ドライのセッションで走れることを願っています。日曜日に向けていい状態を作りたいです。3連戦のあと、1週間の休みがあって、とてもよかったです。今回はいいレースをしたいです」
ステファン・ブラドル(MotoGP ランキング7位)「ほかのグランプリに比べると難しい大会になりますが、それでもラグナセカをとても楽しみにしています。数週間前に初めてラグナセカを走る機会がありましたが、これまで走ったどのサーキットより、一生懸命がんばらなければならないと感じました。ここでは、MotoGPマシンでのデータがないため、マシンのセットアップは慎重にならなければなりません。僕にとっては初めてのサーキットですので、いつもより2倍の努力が必要です。MotoGPのマシンでは経験しているサーキットでも、毎週金曜日は新しい発見がある日となっています。でも今回は初めてのサーキットですので、どうなるか予想もつきません。ただ調子はいいですし、全力を尽くしたいと思います」
アルバロ・バウティスタ(MotoGP ランキング9位)「ムジェロは難しい週末でした。チームのホームレースでしたのでいいパフォーマンスをしたかったです。でも残念ながらハードタイヤでたくさん問題を抱えてしまい、そのために好みのセットアップにすることができませんでした。家に戻ってからトレーニングを一生懸命がんばったので、イタリアGP前までのフィーリングを取り戻したいです。ラグナセカではまだレースを完走したことがありません。ラグナセカは難しいサーキットです。アップダウンが激しいブラインドコーナーがあります。ベストなラインをキープするためには、進入ポイントを予測しなければなりません。とにかく、セットアップがとても重要になります。ラグナセカの雰囲気はすばらしくユニークです。アメリカ人のファンが作り出す雰囲気は最高です」
ミケーレ・ピロ(MotoGP ランキング14位)「ホームグランプリだった前戦イタリアGPのリタイアは、本当に残念でした。僕だけではなく、チームやファン、そしてスポンサーの皆さんにとっても残念なレースでしたし、月曜日のテストでは、問題解決に取り組みました。そして、ラグナセカに向けてだいぶんよくなりました。ラグナセカは難しく、体力的にも厳しいサーキットですので、トレーニングにも力を入れました。ラグナセカは初めてですが、話を聞いているとすばらしいサーキットのようです。有名なコークスクリューを見るのがとても楽しみです。身体の状態はいいですし、うまく走りたいです」