第2戦スペインGPが、4月27日から29日までの3日間、ヘレス・サーキットで開催されます。スペインの南西部、セビリアとカディスのほぼ中間地点に位置するヘレスは、一年中温暖な気候で、今年の3月中旬には、3クラスの合同テストが行われました。
ヘレスは、1987年に初めてグランプリが開催されました。以来、スペインGPの舞台として定着。シーズンを通じてもっとも観客を集める大会の1つで、昨年は12万3750人の大観衆が集まりました。一周4.423km。バラエティに富んだ大小13のコーナーと、パッシングポイントが多いレイアウトは選手にもファンにも好評で、毎年ハイレベルな戦いが繰り広げられています。
昨年は雨の大会となり、転倒車が続出する大荒れの展開の中、完走12台という厳しいレースとなりました。その厳しい戦いの中で、ダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)が2位でフィニッシュしました。ペドロサは、2006年に最高峰クラスにスイッチしてから、ホームGPとなるスペインGPでは6年連続で表彰台に立っています。08年には優勝を達成。2位5回という成績で地元ファンの期待に応えてきました。
この数年、ケガに苦しんできたペドロサですが、今年は万全の体調で開幕戦カタールGPを迎えました。フリー走行、予選では車体のセットアップに苦しみましたが、決勝ではセッティングが決まり2位。優勝は逃しましたが、これからの活躍に期待が集まる開幕戦となりました。最高峰クラス100戦目という節目の大会で、2度目のスペインGP制覇に挑みます。
昨年、他車の転倒に巻き込まれてリタイアしているケーシー・ストーナー(Repsol Honda Team)が、その雪辱に挑みます。昨年はPPを獲得。ウエットコンディションになった決勝レースも優勝に向けて順調にラップを重ねていましたが、シーズンを通じて唯一、リタイアするレースとなりました。今年は、その悔しさを晴らすレース。今季初優勝に闘志を燃やしています。
3月中旬の合同テストでは、ベストラップもアベレージでもライバルを圧倒しました。開幕戦カタールGPは、チャタリングと右腕の腕上がりに苦しんで3位でしたが、ディフェンディングチャンピオンにふさわしい速さを披露しました。今大会は17戦連続表彰台記録に挑みます。
開幕戦カタールGPで7位のアルバロ・バウティスタ(Team San Carlo Honda Gresini)も、ホームGPに闘志を燃やしています。過去、スペインGPでは、06年に125ccクラスで優勝、07年に250ccクラスで2位、09年に2位になっています。スズキから最高峰クラスに出場していた昨年はケガのために欠場しています。今年は2年ぶりのスペインGPとなりますが、カタールGPの7位を超えるリザルトを狙っています。
開幕戦カタールGPで8位のステファン・ブラドル(LCR Honda MotoGP)は、今大会、さらに上位を狙います。カタールGPでは、6位を確実としながらも、ブレーキ調整の操作を間違えて、ポジションを落とす悔しいレースとなりました。結果は8位でしたが、ルーキーとしては上々のスタートにこれからの成長に周囲も期待しています。ウインターテストから開幕戦まで、走行するごとに確実に速くなっているブラドル。第2戦スペインの走りに注目されます。
CBR1000RRのエンジンを搭載するCRTマシンに乗るミケーレ・ピロ(Team San Carlo Honda Gresini)は、開幕戦カタールGPでは、リタイアという残念な結果に終わっています。今大会は、開幕前のヘレステストのデータを生かし、CRT勢最上位を狙います。
Hondaエンジンを搭載して行われるMoto2クラスは、今季もし烈な戦いが繰り広げられています。開幕戦カタールGPでは、大接戦の末にマルク・マルケス(Team CatalunyaCaixa Repsol)が優勝しました。今大会は、マルケスにとってホームGPとなるだけに、開幕2連勝を狙います。マルケスは、昨年のシーズン終盤戦にケガをしたため、ウインターテストにほとんど参加できませんでした。しかし、開幕直前のヘレステストで復帰を果たし、開幕戦の優勝につなげました。これまで、ヘレスのスペインGPでは一度も優勝がないだけに、今年は地元ファンの声援に応える意気込みです。
日本人勢は、開幕戦カタールGPで14位の中上貴晶(Italtrans Racing Team)が、得意のサーキットで上位を狙います。開幕戦カタールGPで19位に終わった高橋裕紀(NGM Mobile Forward Racing)も、ノーポイントに終わった開幕戦の雪辱に挑みます。
Moto3クラスは、開幕戦カタールGPを制したマーベリック・ビニャーレス(Blusens Avintia)が、ホームGPとなるスペインGP初制覇と開幕2連勝を狙います。カタールGPでは、125ccクラスに代わり、今年からスタートした新設クラスのMoto3クラスの初代ウイナーとして、Moto3クラスの歴史に名前を刻みました。グランプリ2年目のシーズン。ライバルを圧倒する17歳の元気あふれる走りに、大きな注目が集まっています。
また今大会は、Moto2クラスのマルク・マルケスの弟のアレックス・マルケスが、Moto3クラスにワイルドカードで出場、兄弟参戦に話題が集まりそうです。開幕戦カタールGPで21位のルーキー藤井謙汰(Technomag-CIP-TSR)は、昨年のスペイン選手権と合同テストで走行しているサーキットだけに、グランプリ初ポイント獲得を目指します。
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位)「ヘレスでのプレシーズンテストは、とてもポジティブでした。マシンの感触もよくていい終わり方でした。だから今週の大会が本当に楽しみです。今大会は、いいポジションからスタートできるように予選セッションに集中したいです。ヘレスサーキットは大好き。スペインのファンの熱狂的なサポートも大好きです。今年もグランドスタンドが満席になると思うし、ヘレス独特の雰囲気を味わいたいです。カタールではすばらしいレースができました。表彰台からシーズンのスタートを切るのは重要なことです。しかし、気を緩めず、今週も力強いレースをしたいです」
ケーシー・ストーナー(MotoGP ランキング3位)「カタールは難しいレースになりましたが、今週のヘレスはすごく楽しみにしています。3月のヘレステストはとてもいい内容でしたからね。これまであまり相性のいいサーキットではなかったですが、テストではいいペースで走ることができたし、自信がつきました。しかし、解決しなければならない問題がまだいくつかあります。とくにチャタリングは早く解消したいし、これが解決できれば、さらにいい状態になると思います。カタールが終わり、レースで苦しんだ腕上がりの問題に取り組んできたし、だいぶんよくなってきています。2010年のシルバーストーンの時と同じように治療したので、腕上がりの症状が出ないことを願っています」
アルバロ・バウティスタ(MotoGP ランキング7位)「カタールは厳しい週末となりました。ウインターテストのような走りができなかったし、最後までいい感触は得られませんでした。でも、持っている力を100%出そうと一生懸命がんばりました。レースを完走することが大事なので、7位になれてよかったです。この短い休暇の間も、毎日必死にトレーニングをしてきました。ヘレスは自分にとっては特別なサーキットだし、楽しみにしています。昨年はケガで出場できなかったけれど、プレシーズンのテストではいいデータを得ることができました。日曜日のレースで役に立つでしょう。目標は前のライダーたちについていくこと。ヘレスのファンの前でレースを戦えることがとてもうれしいです。ヘレスは最初のヨーロッパラウンド。カタールのようなナイトレースではないので、本当のシーズンのスタートのように感じます。ヘレスは忘れられない思い出があります。初めてのグランプリ優勝はここでした。初めてのMotoGPの表彰台も、ここで上がれたらうれしいです」
ステファン・ブラドル(MotoGP ランキング8位)「ヨーロッパの最初のラウンドなので、とても楽しみにしています。3月に行ったテストでデータを集めることができたし、それを今週は生かせると思います。全体的なパッケージは悪くありません。ここから普通のスケジュールになるし、やっと開幕戦という感じがします。いままで乗ってきたマシンとMotoGPのマシンでは、サーキットの違いをすごく感じるし、サーキットがすごく小さく感じます。長いストレートがなく、リラックスできるポイントも少ししかないので、体力的にきついと思います。でも全力を尽くします」
ミケーレ・ピロ(MotoGP ノーポイント)「カタールGPでMotoGPデビューが果たせて、とてもうれしかったです。たくさんのすばらしいチャンピオンたちとレースができました。しかし残念ながら完走できませんでした。発展途上のマシンだし、チームも必死に仕事をしてくれましたが、自分の限界を見つけることはできませんでした。ヘレスでその努力が報われることを願っています。今回は最速のCRTのマシンのペースについていきたいです。ヘレスは最高のグランプリ。雰囲気も特別です。CRTのプロジェクトを信頼して、ヘレスでは大きく前進したいです」
マルク・マルケス(Moto2 ランキング1位)「開幕戦で優勝できたし、気持ちよく、高いモチベーションでヘレスのグランプリを迎えることができます。カタールで優勝したことで、とても自信がつきました。でも、スペインのファンの前でいいレースをしたいというプレッシャーが失敗を招くこともあるので、集中して大会に挑みたいです。ヘレスサーキットはみんなテストをしているサーキット。レベルの高い戦いになると思うので全力を尽くしたいです」
中上貴晶(Moto2 ランキング14位)「カタールGPはレース中盤までペースが上がらず、順位を落としてしまいました。終盤は想定していたラップタイムで走れたので、今回は、その走りを序盤からできるようにしたいです。ヘレスは、開幕前のテストでいい走りができました。アベレージは悪くありませんでした。ただ、好みのタイヤがはっきりわかれてしまい、そのタイヤでアタックできませんでした。そのために転倒して、いい終わり方ができませんでした。ヘレスは好きなサーキット。今回は、予選も決勝も納得のいく走りがしたいです」
高橋裕紀(Moto2 ノーポイント)「ウインターテストから開幕戦カタールGPまで、フレームを2度も交換しました。いま、3番目の車体を使っていますが、ベースのセッティングも出ていない状態なので、今回も厳しいレースになると思います。とにかくトップグループで戦うためにも、フリー走行、予選としっかり走って、マシンを少しでも仕上げていきたいです。そのためにも天候が崩れないことを願っています」
マーベリック・ビニャーレス(Moto3 ランキング1位)「スペインGPはいつも特別です。地元ファンの声援もあって、モチベーションも高いです。今年はチャンピオンシップリーダーとしてホームGPを迎えます。それがヘレスなので、これ以上うれしいことはありません。サーキットはテクニカルで自分のライディングスタイルにとても合っています。開幕前のテストでは、いいセットアップを見つけることもできて、いい走りができました。シーズンは始まったばかりですし、ずっとこの調子を維持するのは難しいと思います。それだけに一戦一戦集中していきたいです」
藤井謙汰(Moto3 ノーポイント)「開幕戦カタールGPは、納得のいくリザルトは残せなかったけれど、フリー、予選、決勝と着実に前進することができました。ヘレスは、昨年のスペイン選手権とウインターテストで走っています。ウインターテストではスペイン選手権よりも3秒タイムを上げられました。今回もウインターテストのタイムを更新して、トップとの差を縮めたいです。ポイントを獲得できるようにがんばります」