シーズン後半戦のスタートとなる第11戦チェコGPが、8月12日から14日の3日間、ブルノ・サーキットで開催されます。125ccクラスとMoto2クラスは、第9戦ドイツGPから3週間、MotoGPクラスは第10戦アメリカGPから2週間のサマーブレイクを経ての大会。例年に比べて今年は短い夏休みとなりましたが、休養をとった選手たちが、元気いっぱいに後半戦に挑みます。
ブルノ・サーキットは、1周5.403km。中速コーナーが連続するリズム感あふれるコースで、アベレージの高いサーキットです。今年も8月の開催となり、気温が高くなるため、タイヤに厳しいグランプリとして知られています。ブルノの最大の特徴は、コース中盤の7つのコーナーで約73メートル下り、最終コーナーに向かうストレートで、下った分を一気に駆け上るという豪快なレイアウト。選手にも観客にも人気のあるサーキットになっています。
チェコGPは、1965年にブルノ郊外の公道サーキットで「チェコスロバキアGP」としてスタート、1977年まで続きました。しかし、このころから公道サーキットは危険ということで次第に姿を消します。ブルノも、クローズドサーキットの建設を進め、1987年にグランプリが復活。その後、チェコスロバキアは、チェコとスロバキアに分離。1993年以降は、「チェコGP」として開催されています。
チェコGPとしては今年で19回目(チェコスロバキアGPを含めると35回目)。チェコGPではこれまで8回優勝。今年は9回目の優勝に挑みます。
シーズン前半10戦で5勝を含む9回の表彰台獲得で総合首位に立つケーシー・ストーナー(Repsol Honda Team)は、前戦アメリカGPからの連勝と今季6勝目を狙います。ドゥカティ時代の07年に優勝。以来、ブルノでは常に表彰台争いに加わってきましたが、Hondaに移籍した今年は、どの大会でも優勝争いにからむ快進撃。得意とするサーキットで確実に優勝を重ねてきているだけに、今季6勝目に大きく期待がふくらみます。
総合3位のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)は、3戦ぶり今季5回目の表彰台と今季初優勝に闘志を燃やしています。125cc、250cc時代は何度も表彰台に立ち、MotoGPクラスでは、一昨年は表彰台にあと一歩の4位。昨年も表彰台圏内を走行も痛恨の転倒リタイア。前戦アメリカGPでは、最終ラップまでし烈なバトルを繰り広げて5位と悔しいレースに終わっているだけに、その雪辱に闘志を燃やしています。
ケガから復帰してから、ドイツGPで優勝、アメリカGPで3位表彰台のダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)も、3戦連続表彰台と今季3勝目に気合を入れています。この2週間のサマーブレイクで右肩の負傷も一段と回復、復帰してからの2連戦でたまった疲れも解消して、万全の体調で挑みます。ブルノは125cc、250cc時代に優勝しているサーキット。最高峰クラスでは、これまで2位が最高位。今年は3クラス制覇に挑みます。
こうして、前半戦を終えてランキング上位につけるRepsol Honda Teamの3選手。後半戦は、Honda勢がアドバンテージを築いてきたサーキットが続くだけに、今季初の表彰台独占の期待も膨らんでいます。
今季、もっとも成長著しいマルコ・シモンチェリ(Team San Carlo Honda Gresini)も、念願の初表彰台に向けて、万全の体調で後半戦に挑みます。前半戦は2回のPPを含む、6回のフロントローを獲得して大ブレイクも、決勝ではなかなか結果につなげることができませんでした。後半戦の課題は、だれもが認める速さを持続させて結果につなげること。後半戦の走りに大きな注目が集まっています。
青山博一(Team San Carlo Honda Gresini)は、ドイツ、アメリカに続き、チェコGPも、MotoGPマシンでは初めて経験する大会となります。第7戦オランダGPの転倒で背中を痛め、イタリア、ドイツ、アメリカと厳しいレースが続きましたが、今大会は体調も回復、心機一転のレースに挑みます。トニ・エリアス(LCR Honda MotoGP)も後半戦に向けて気合を入れています。昨年はMoto2クラスで優勝。MotoGPクラスでも、08年に2位、09年に3位表彰台に立っている得意なコース。今季ベストリザルトが期待されます。
前半戦を終えてタイトル争いが絞られてきたMoto2クラスは、4勝を含む7回の表彰台で総合首位のステファン・ブラドル(Viessmann Kiefer Racing)が167点で大きくリード。総合2位のマルク・マルケス(Team CatalunyaCaixa Repsol)が4勝を含む5回の表彰台で120点と、この2人が3位以下を大きく引き離しています。
後半戦のスタートとなるチェコGPは、ブラドルにとっては、125ccクラスでグランプリ初優勝を達成したサーキット。Moto2クラスでは昨年9位でしたが、今年は優勝候補の筆頭。念願のタイトル獲得に向けて今季5勝目を狙います。
そのブラドルを追うマルケスは、オランダ、イタリア、ドイツと3連勝を達成。ブラドルとの差を47ポイントまで縮めてきました。タイトル獲得に向けて着実に走るブラドルと、追い上げムードのマルケスの戦いが大きな注目を集めることは間違いありません。
総合8位の高橋裕紀(Gresini Racing Moto2)も、今季3回目の表彰台と今季初優勝を狙います。前戦ドイツGPでは、フリー走行で好走を見せるも、予選で転倒、決勝では予選の転倒の影響でマシントラブルが出てリタイアと不運のレースとなりました。しかし、上り調子だけに、後半戦の巻き返しに期待されます。
ケーシー・ストーナー(MotoGP ランキング1位) 「ラグナセカのすばらしいレースのあと、カリフォルニアに滞在し、友人を訪ねたり、トレーニングをしたりして過ごしました。この夏休みは、とても充実していたし、楽しかったです。今はリラックスしているし、シーズン後半に向けて準備万端。ブルノへ行くのが楽しみです。ブルノはこれまで常に楽しかった。今年も、いいレースができると期待しています。今年はすべてのサーキットでRC212Vは優勝争いに加われました。恐らくブルノでも同じような戦いができるはずです。ブルノはアベレージが高く、流れるように走るコース。この何年かはヤマハが強く、今年もホルヘは強敵になると思います。今年、高速コーナーで抱えているいくつかの問題を改善して、優勝を狙いたい。そして、チャンピオンシップに向けて重要なポイントを稼ぎたいです」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング3位) 「サルデーニャ島で家族や友人と夏休みを過ごしました。早朝にトレーニングをして、そのあと、娘のサラと遊びました。初めての経験で、とても楽しかったです。リラックスできたし、レースのことを忘れて充電できました。シーズン後半に向けて、心身ともにモチベーションを上げるためには、完ぺきな時間でした。ラグナセカは残念な結果だったので、その巻き返しに気合を入れています。ブルノは高速サーキットで、中高速コーナーが多い。ブルノではいいレースをする自信があります。Hondaのマシンはとてもよく機能しているし、サーキットの特徴は、自分のライディングスタイルに合っています。ムジェロに似ているので、いい結果を出したいです。ケーシー、ダニ、ホルヘの3人は強敵です。でも、彼らと戦える自信はあります。ラグナセカでは表彰台に立てなかったので、今度は立ちたいです」
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング4位) 「あっという間の2週間半でした。でも、この休みを本当に楽しむことができました。復帰してからの2戦は、体力的にキツかったです。少し身体を休め、トレーニングをして本来の体調に戻したかったので、この休暇は大歓迎でした。そういう意味では、今回の夏休みは欲ばったものになりました。ラグナセカからスペインに戻り、数日間は何もせず、首や腕や背中を休ませました。そのあと、トレーニングとリラクゼーションエクササイズを行って体調を整えました。今はまた戦うのが楽しみになりました。シーズン最後までレースを楽しみたいです。今年はマシンがとてもいいので、チャンピオンシップ後半はいい結果を出したい。ブルノは好きなサーキットで、125ccと250ccで優勝しています。MotoGPクラスでも何度か表彰台に上がっているし、優勝を目指したいです。また、レース後に来年用の1000ccのマシンでテストするのが楽しみです」
青山博一(MotoGP ランキング9位) 「オランダで転倒して背中を痛めてから、イタリア、ドイツ、ラグナセカと厳しいレースが続きました。身体の状態はよくなっていましたが、完ぺきにはほど遠い状態でした。しかし、この夏休みで背中はよくなっているし、気持ちよく走れることを期待しています。自分自身とマシンに対して、自信を取り戻したいです。昨年はケガをしていたので、ブルノもMotoGPマシンで走るのは初めてとなります。いい経験になるでしょう。このサーキットは好きです。250cc時代は、2006年に表彰台に立っています。09年は4位でした。今週末は納得のいくレースがしたいです」
マルコ・シモンチェリ(MotoGP ランキング10位) 「正直、もっと違う形で夏休みに入りたかったです。ラグナセカでは転倒リタイア。本当に残念な結果でした。しかし、起きたことは仕方がないし、これを教訓にします。アメリカのすばらしい公園で、すばらしい休暇を過ごしてから、ブルノに行きます。後半戦のスタートとなるブルノでは、できる限りいい結果を残したい。レースに集中してポジティブな結果を残したいです。昨年の大会は、あまりうまくいかなかったけれど、このサーキットは自分のライディングスタイルに合っていると思います。250cc時代は優勝しているし、125ccではPPを取って表彰台に立っています。今回はいいレースをしたいです」
トニ・エリアス(MotoGP ランキング14位) 「アメリカGPのあと、少しリラックスできてよかったです。でも正直、レースがしたかったです。この2週間は、いつものようにたくさんトレーニングをしました。ランニングや、サイクリング、そして大好きなサーフィンもしました。いよいよ仕事に戻る時がきました。まだ自分たちのパッケージに苦戦しています。そしてやることはたくさんあります。マシンにスムーズに乗れないので、リアトラクションの問題を解決しなければなりません。みんな僕を助けるために一生懸命です。このままがんばらなければなりません」
ステファン・ブラドル(Moto2 ランキング1位) 「夏休みのおかげで、少し元気になりました。前半戦はレースが続いてとても疲れました。前半戦最後になったホームグランプリのザクセンリンクも疲れていました。しかし、夏休みの間、なまけていたわけでもありません。トレーニングやPRイベントもあったし、忙しかったです。ブルノは初めて世界選手権のレースに優勝したところ。でもそれは過去の話ですからね。今は次のレースに集中して、シーズン後半を今のポジションでできる限り終えられるようにしたいです」
マルク・マルケス(Moto2 ランキング2位) 「早くマシンに乗りたくて仕方がない気分です。それだけに、最初は落ち着いて走りたい。なぜなら長い間乗っていないし、ブルノは難しいサーキットですからね。ムジェロのように、切り返しや上り坂、下り坂が多い。Moto2でここを走るのは初めてなので、確実に前進したいです。2日間のプラクティスで、優勝争いに加われるペースに慣れなければなりません。この夏休みは、後半戦をいい状態で迎えられるようにトレーニングに時間を費やしました。金曜日の開幕が楽しみです」
高橋裕紀(Moto2 ランキング8位) 「シーズン前半戦は、思ったような結果を残せませんでした。天候が不安定で、マシンのセットアップを決められませんでした。でも、これはみんな同じ条件なので言い訳になってしまいます。前半戦はポルトガルとフランスの2戦で表彰台に立ちましたが、表彰台に立つチャンスはもっとあったし、優勝を狙えるレースもありました。自分のミスで落としたレースもあるので、後半戦は、チャンスをしっかり結果につなげたいです。夏休みは日本に帰って少しだけノンビリできました。今大会はミサノでテストをして挑みます。後半戦は1つでも多く表彰台に立ちたいです」