今シーズン2度目の2連戦。第7戦オランダGPから2週連続開催となる第8戦イタリアGPが、7月1日から3日までの3日間、フィレンツェ近郊にあるムジェロ・サーキットで行われます。ムジェロは、一周5.245kmのロングコースで、昨年の優勝したダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、170.437km/hのアベレージを記録。オーストラリアGPの開催されるフィリップアイランド、イギリスGPのシルバーストーン、前戦オランダGPのアッセンと並ぶハイスピードコースとして知られています。
ムジェロは、アップダウンに富み、中高速コーナーが休みなしに続くスリリングなコースレイアウトになっています。すべてのコーナーがパッシングポイントと言ってもいいほど勝負どころは多く、下りこう配の最終コーナーから約1.1kmのロングストレートで繰り広げられるスリップストリームを使っての超高速バトルは、最大の見どころになっています。
ムジェロは、1976年に初めてグランプリが開催されました。当時のイタリアGPは、モンツァ、イモラなど、いくつかのサーキットの持ち回り開催となっていて、80年代のムジェロは、イタリアGPとサンマリノGPの舞台となっていました。その後、91年にサーキットの全面改修を受けてからは、グランプリのパーマネントサーキットとして定着します。91年と93年はサンマリノGPとして開催されましたが、92年と94年以降は、イタリアGPの舞台として定着しました。91年にコースが全面改修されてからHondaは、昨年のペドロサの優勝まで通算12勝。80年代のフレディ・スペンサーの2勝、ランディ・マモラの1勝を含めて通算15勝を達成しています。
前戦オランダGPで2位になり、7戦4勝、6回目の表彰台で総合首位をキープしているケーシー・ストーナー(Repsol Honda Team)は、2年ぶり2度目のイタリアGP制覇を目指します。06年に最高峰クラスに参戦してから、これまでストーナーは、09年に優勝、08年に2位と、2度の表彰台に立っています。前戦オランダGPでは、不安定な天候の中で、2日目のフリー走行で転倒しました。想定外ともいえる低い気温の中で起きたアクシデントでしたが、そのため、ポイントリーダーのストーナーは、決勝レースでは慎重なレース運びを見せて着実に2位でフィニッシュ。結果的に、ランキング2位のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)とのポイント差を広げることに成功しました。
前戦オランダGPで3位と、今季3回目の表彰台に立ったアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)は、上り調子でホームGPを迎えることになります。先週のオランダGPでは、ストーナー同様、不安定な天候の中で2日目のフリー走行で転倒しました。しかし、見事なリカバリーを見せて、決勝では2戦連続今季3回目の表彰台に立ちました。今大会は、シーズンを通じて最もファンのサポートを受けるレース。昨年は地元ファンの声援を受けて3位表彰台に立っています。今年は優勝で期待に応える意気込みです。
昨年優勝のペドロサが、4戦ぶりに復帰します。第4戦フランスGPの決勝でマルコ・シモンチェリ(Team San Carlo Honda Gresini)と接触転倒して右鎖骨を骨折、以来、2度の手術を受けて3戦を欠場しました。約1カ月半ぶりに実戦に復帰するペドロサは、05年に250ccクラスで優勝、最高峰クラスでは、07年に2位、08年に3位。昨年は最高峰クラスでは初のイタリアGP制覇を果たしました。復帰戦となる今大会は、2年連続優勝を目指します。
前戦オランダGPで今季2度目のPPを獲得も、オープニングラップに転倒、再スタートして9位に終わったシモンチェリが、今大会こそ初表彰台と闘志を燃やしています。250cc時代の08年に優勝、09年2位。MotoGPクラス初参戦となった昨年は9位でしたが、今年は、Repsol Honda Team勢の3選手とともに優勝候補の一角。過去5戦、2PPを含む5戦連続フロントローに並んでいるだけに、チーム、そして自身にとってもホームGPとなるムジェロでどんな走りを見せてくれるのか、大きな注目が集まっています。
前戦オランダGPでペドロサの代役としてRepsol Honda Teamから出場した青山博一が、今大会は、本来のTeam San Carlo Honda Gresiniから出場します。前戦オランダGPでは、冷えた路面に足下をすくわれ痛恨の転倒、背中を痛めたことで万全の状態で戦うことができませんでした。今大会も完調ではありませんが、チームのホームGPとなるだけに気合満点。また、トニ・エリアス(LCR Honda MotoGP)もチームのホームGPとなるだけに、今季ベストリザルトを狙っています。
開幕戦から接戦が続いているMoto2クラスも、高速サーキットのムジェロの戦いに大きな注目が集まっています。昨年の大会は最終ラップまで大接戦。スリップを使い合っての壮絶なバトルにファンも大喜びでした。先週のオランダGPは、ウエットレースとなり、総合首位のステファン・ブラドル(Viessmann Kiefer Racing)、総合3位の高橋裕紀(Gresini Racing Moto2)らがリタイアする大荒れの展開。一方、マルク・マルケス(Team CatalunyaCaixa Repsol)が今季2勝目を挙げて2位に浮上するなど、ポイント争いもし烈になっています。Moto2クラスはホームGPとなるイタリア勢も多く、初日から熱い戦いが繰り広げられることは間違いありません。
ケーシー・ストーナー(MotoGP ランキング1位)「アッセンは、不安定な天候だったこともあって厳しい週末でした。とても難しいレースでしたが、2位になれて非常にうれしい。それに続くレースなので、ムジェロがとても楽しみです。昨年は最高の結果を残すことはできなかったけれど、このサーキットはいつも楽しい。今年はかなりいいレースができるんじゃないかと思っています。聞いたところによると、新しくなった路面はとってもスムースでペースも速くなったようです。路面が改修されたことで、以前にも増して、いいサーキットになったと思います。早く走ってみたいです。チャンピオンシップに向けて、いいレースをして、大事なポイントを稼ぎたい。今回もベストを尽くしたいと思います」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング3位)「ムジェロは新しいアスファルトになったと聞いているので、とても楽しみです。走ったことがある人に聞くと、信じられないくらいスムーズだと言っていました。MotoGPカレンダーの中でもムジェロは最もテクニカルで美しいサーキットの1つです。これで路面がきれいになったら、世界でも最高のサーキットの1つになるでしょう。前回のオランダで表彰台に立ち、チャンピオンシップでも3位。こういう状態でイタリアGPを迎えられるのはうれしいです。今回もいいレースができると思うし、ホームグランプリでいい結果を残したいです。ドライでもウエットでも安定しているし、チームは本当にいい仕事をしています。自信はあります。昨年はここで表彰台に上がりました。その時の気分は、他の表彰台とは比べ物にならないくらい最高でした。だからまた表彰台に上がりたいです。大勢の観客が来るだろうから、いいショーを見せたい! ムジェロはいつも特別です」
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング6位)「3つのレースを欠場しましたが、こうしてムジェロで復帰できるのはうれしいです。この期間、回復に専念していました。2度目の手術のあとはだいぶんよくなりました。バイクに乗って、ケガをする前のように戦えることを、楽しみにしています。レースに出られないのはつらかったけれど、1日も早く復帰できるように全力を尽くしました。その間もチームと連絡をとっていました。彼らもまた、いつものように一緒に戦えることを楽しみにしています。チームと一番高いレベルの戦いをして、レースに勝ちたい。ムジェロはとてもテクニカルで難しいサーキットです。いまの体調では決して楽ではないことは分かっていますが、昨シーズン、初優勝をしたところなのでいい結果を残したいです」
青山博一(MotoGP ランキング8位)「先週のオランダGPは、Repsol Honda TeamのファクトリーRC212Vに乗る機会を、できる限り楽しもうと思いました。でも残念ながら、変わりやすい天気のアッセンでは、自分のセッティングにトライする時間もありませんでした。でも、こうしたチャンスをもらえたことはうれしいです。先週の転倒で背中を痛め、まだ完全ではありませんが、今回はチームのホームGPなので全力を尽くしたいと思います」
マルコ・シモンチェリ(MotoGP ランキング10位)「前回のアッセンでは、ピットボックスに戻ったときに、苦しさと失望と同じくらい、自分のおろかさを感じました。ミスをして、不本意ながらロレンソを巻き込んでしまいました。彼には申し訳ないと思っています。また、大きなチャンスを逃してしまった自分のミスにもがっかりしました。おそらく今シーズン最も大きなミスだったと思います。今回のことをじっくり考えたし、この苦い経験を生かしたいと思います。今は前を向いて、ムジェロのことに集中したいです。みんな僕にすごく期待しているので、これまでのことを忘れられるような結果を残して、その期待に応えたいと思います。ムジェロの丘には大勢のファンが訪れると思います。彼らを失望させたくありません。このサーキットは大好きなサーキットの1つです。2008年に初めて250で優勝しました。2009年はパシーニとの激しいバトルの結果、2位となりました。ムジェロのレースを楽しみにしています」
トニ・エリアス(MotoGP ランキング12位)「ムジェロはとてもエキサイティングなサーキットだし、とても難しいです。チームにとって最も重要なレースのうちの1つだということも分かっています。しかし、シーズンの始めから抱えているリアのトラクションの問題の解決策を見つけなければならないので、ここでも引き続き、セットアップに集中したいです。この数戦、ウエットコンディションでは、いい状態が見つかりました。しかし、ドライコンディションでは、まだまだ不十分です。スペイン人と同じようにイタリア人のファンもとても温かい。このサーキットの雰囲気はとても好きです」
ステファン・ブラドル(Moto2 ランキング1位)「聞いたところによると、ムジェロは路面が改修されたらしいです。だから、ラップタイムにどう反映するのか楽しみです。ムジェロは好きなサーキットの1つです。レイアウトは変化に富んでいて、高速セクションがいくつかあって、とても好きです。転倒したアッセンでのことは考えないようにしています。いつものように次のレースに集中したいです」
マルク・マルケス(Moto2 ランキング2位)「アッセンで優勝したあとなので、モチベーションがとても高い状態でジェロに向かえます。シルバーストーンでリタイアしたあとの優勝だったので、自分もチームも士気が高まりました。2週間前にここでテストを行ったので、今週末はそれがとても役に立つと思います。ここは、125ccクラスよりも体力的にキツイです。しかも、この時期のムジェロは暑くなると思います。でも、準備はできています。とてもテクニカルなサーキットだけれど、とても美しいサーキットで、大勢のファンが来ます。昨年、初めてここで優勝したので、とても特別な大会です。これまで通り、全力を尽くしたいと思います」
シモーネ・コルシ(Moto2 ランキング3位)「ムジェロは最高のサーキットだし、自分のホームグランプリだからいつも楽しいです。周囲の丘はサポーターやファンで埋め尽くされます。イタリア人は、ここではいつもよりがんばれます。今回は、いいパフォーマンスをする自信があります。優勝するのが目標だけれど、できる限りたくさんのポイントを獲得したいと思います。予選ではフロントからスタートできるように一生懸命がんばりたい。そしてトップグループでレースを戦いたいと思います」
高橋裕紀(Moto2 ランキング5位)「先週のアッセンは、本当に残念でした。表彰台は絶対にいけると思いましたし、マルケスに追いついたときは優勝したいと思いました。転倒は、本当にあっという間で、信じられない気持でした。悔しいレースだったけれど、シルバーストーン、そしてアッセンとマシンの状態はよくなっているので、今回は、それをきっちりと結果につなげたいです。今回はチームのホームGPなので、みんなの期待に応えたいです」