第4戦フランスGPが、5月13日から15日までの3日間、ル・マン・サーキットで開催される。フランスGPは、1951年に第1回大会が行われ、今年で48回目を迎える。ル・マンでは、69年に初めてGPが開催された。その後、ポールリカール、ノガロ、マニクールなどを経て、2000年に再びグランプリの舞台となり、今年で12年連続、通算24回目の開催となる。
5月のル・マンは天候が不安定で、フランスGPはウエットレースという印象が強い。実際に、07年から09年までは3年連続で、雨のためにレース中にマシンを乗り換えることができる“フラッグ・トゥ・フラッグ”ルールが適用された。昨年は、06年以来、久しぶりに青空の広がる中で大会が行われた。
ル・マンは、パリの南西約200kmに位置する。世界的に有名な自動車の24時間耐久レースは、市街地コースを一部利用するサルテ・サーキットで開催されるが、2輪の24時間耐久レースとグランプリは、一周、4.180kmの“ブガッティ・サーキット”で行われる。
ル・マンは典型的なストップ&ゴー・サーキットで、俊敏な旋回性と、鋭いエンジンの加速性能が問われる。しかし、全体的にストレートが短く、パッシングポイントが少ないために、シケインが勝負どころとなる。そのため激しいブレーキング合戦が見どころとなる。同時に、予選グリッドがとても重要になるため、フリー走行から激しいアタック合戦が行われる。
前戦ポルトガルGPでは、ダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)が今季初優勝を達成した。ペドロサは、第2戦スペインGPの後に受けた左肩の手術の回復も順調で、前戦ポルトガルGPより万全の体調でレースに挑むことができそうだ。ル・マンでは、03年に125ccクラスで優勝、04年、05年は250ccで優勝。最高峰クラスでは、06年と09年の3位が最高位となっているだけに、今年は最高峰クラス初優勝とル・マン3クラス制覇に闘志を燃やす。今大会は総合首位でフランスGP2連勝中のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)にストップをかけて、総合ポイントでも逆転を狙う。
ペドロサに続いて総合3位。前戦では3位表彰台に立ち、第2戦スペインGPの不運の転倒ノーポイントという悪い流れを払拭したストーナーは、今季3回目の表彰台と今季2勝目を狙っている。前戦ポルトガルでは、ブレーキングの安定性を見つけるのに時間がかかり、さらに、トラクション不足にも悩んだ。最終的にいい状態を見つけるも、決勝レースでは、不安定な路面コンディションの中でハイサイドを喫して腰を痛めてしまった。その影響で3位に終わっていたが、依然として好調をキープ。今大会はペドロサと、PP、優勝を争うことになりそうだ。
開幕から3戦、表彰台にあと一歩のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)は、今季初の表彰台と今季初優勝に気合を入れる。ペドロサとストーナーに追いつけ追い越せという気迫の中で、エストリルの合同テストでは上々の手応えを感じ取った。ル・マンでは125cc時代に優勝。250cc時代は3年連続で表彰台に立っている。最高峰クラスでは昨年3位表彰台。今年は2年連続表彰台を狙う。
前戦ポルトガルGPで今季初フロントロー2番手からスタートするも、痛恨の転倒を喫しリタイアに終わったマルコ・シモンチェリ(Team San Carlo Honda Gresini)が、その雪辱に燃えている。エストリル合同テストでは、その悔しさをバネにしてトップタイム。今大会は、MotoGP初表彰台、初優勝の期待が膨らむ。チームメートの青山博一も、シーズンを通じて最も苦手とする前戦ポルトガルGPで7位。今大会も得意とするサーキットではないが、それ以上の結果を狙う。「苦手なサーキットでの2連戦。この連戦がこれから先のバロメータ」と上位でフィニッシュする意気込みだ。
パッシングポイントが少ないル・マン。今年も予選から激しい戦いが繰り広げられることになるが、Moto2クラスは、シーズンを通じて最も厳しい戦いとなりそうだ。昨年は転倒も多く、サバイバルレースとなった。今年はランキング上位の顔ぶれが固まりつつあり、今大会も上位の選手たちによる優勝争いになりそうだ。前戦ポルトガルGPで今季初表彰台3位になった高橋裕紀(Gresini Racing Team)。今年は06年以来のフランスGP制覇に気合を入れている。
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位) 「長い期間を経てようやく落ち着くことができた。自信も持てた。特に前戦ポルトガルのレースのあとは。手術を終えたあとだったし、マシンの感触もよくて、本当にいろんなことから解放された気分だった。そして、すべてが違って見えた。決勝が終わった翌日の月曜日のテストは、とても疲れていたし左肩の痛みもあったので、テストを終えて、3日間休養した。それから物理療法を続けながらトレーナーとゆっくりトレーニングも始めた。今はマシンに乗るのが楽しみだ。毎年そうだが、ル・マンは難しいレースになると思う。そして、忙しい週末になると思う。でも、ここではこれまで全般的にいい結果を残してきた。自信もあるが、MotoGPクラスではまだ優勝していないので勝ちたい。プラクティスでは、マシンの安定性を見つけることが重要だ。いいトラクションを得るために、いいアクセレーションも必要だ。また、どんな天候にも備えなければいけない。このサーキットはレースウイークを通じて集中力を要求される。レースは長いし、ミスをしないようにしたい」
ケーシー・ストーナー(MotoGP ランキング3位) 「エストリルでは、3位表彰台に立ててとてもうれしい。そして、チャンピオンシップでも重要なポイントを得られたし、よかった。ル・マンでは、これまでそれなりの結果を残してきたが、決して十分な結果ではない。エストリルではフリー、予選でいいセッティングを見つけるのにちょっと時間がかかったので、今回は、フリー走行でいいセットアップを早く見つけることが重要になる。Hondaはいつもいい仕事をしてくれるし、楽しみだ」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング6位) 「エストリルのテストでセットアップは前進したし、ル・マンでは、これまでより戦闘的なレースができると思う。今回は、ポルトガルでテストした新しいクラッチを使う。そのときに、いろいろ試したセットアップの方法を試したい。ル・マンは低速サーキットで旋回性が必要になる。これまでのコース改修で、ル・マンの魅力的な部分は多く失われてしまったが、このサーキットでは、いつもいい結果を残してきた。昨年はとてもいいレースができ表彰台に立てたから、今年も表彰台を狙う。それを達成するために初日からいい仕事をしなければならない」
青山博一(MotoGP ランキング7位) 「3戦を終えて、これまでの結果とチャンピオンシップのポジションに満足している。着実に前進しているし、今年のマシンにもかなり慣れてきた。チームのすばらしい仕事に感謝している。そして、すばらしい関係も築くことができた。エストリルでのレース後のテストは、今後に向けていいデータを得ることができたし、今回のレースにも生きると思っている。このサーキットは大好きなサーキットではない。ここでこれまでにいい結果は残していないが、今週末はそれを変えられると確信している」
トニ・エリアス(MotoGP ランキング12位) 「ル・マンでは毎年、スリリングなレースが展開されてきた。そのうちの何回かは雨のせいだった。だから今年は、ドライコンディションでレースがしたい。このサーキットはストップ&ゴーが特徴で、多くの低速コーナーがある。つまりブレーキングがとても重要になるし、ブレーキングで激しいバトルが繰り広げられる。またコーナーの出口で鋭く加速するためにも、トラクションをよくしなければいけない。前回のポルトガル・テストで、マシンの安定性がいくつか改善がされた。でもこのサーキットは全く違うものが要求される。今はモチベーションを高くキープできているので、ここでまた一歩前進したい」
マルコ・シモンチェリ(MotoGP ランキング13位) 「エストリルのレース翌日のテストは、悔しいレースを忘れて、次のル・マンに向けて気持ちを切り替えることができた。テストはとても有意義だったし、今大会もトップ争いができると確信している。そして、優勝するために全力を尽くしたい。前回のようにスタート直後の冷えたタイヤで、同じようなミスをしないようにがんばりたい。だってポルトガルで唯一よかったことは、僕の豪快な転倒写真が撮れたことくらいだからね! 冗談はさておき、ル・マンでは本当にがんばりたい。あまり得意なサーキットではないけれど、09年に250ccクラスで優勝した。08年には2位だったからね」
ステファン・ブラドル(Moto2 ランキング1位) 「ル・マンは天候が不安定なので、まず最初に、レースウイークを通じていい天気であることを願っている。3戦を終えて、ここまでは、いいパッケージでレースを戦えている。しかし、今回のレースは厳しいレースになることを確信している。前回のエストリルはとてもハードだったが、すばらしい結果を残せた。今回も、とにかく集中して、いい週末にしたい」
アンドレア・イアンノーネ(Moto2 ランキング2位) 「ル・マンで重要なのは、いいグリッドを得ること。しかし、いいポジションからスタートしたエストリルは本当に悔しいレースだった。今回はその雪辱を狙いたい。ブラドルはチャンピオンシップで少しリードしているけれど、まだシーズンは始まったばかり。その差を縮めていきたい」
シモーネ・コルシ(Moto2 ランキング3位) 「前回は表彰台に立てなかったので、もっといいレースができるように引き続き全力を尽くしたい。昨年は3位表彰台に立っている。今年も表彰台を目指し、がんばりたい。そのためには、予選でもっと前にいないとダメだ。開幕から3戦、ひどいグリッドだからね。とにかく、フリー、予選に集中して、いい位置から決勝に挑みたい」
高橋裕紀(Moto2 ランキング6位) 「前回のポルトガルGPは、3位表彰台に立ててよかった。今年は、開幕からすごい接戦で、ちょっとしたミスが致命的なものになる。表彰台に立つために、そして優勝するためには、3日間を通じて完ぺきな状態を作り上げて、レースでもミスをしないことが要求される。ル・マンは、06年に一度優勝しているし、そういう点では思い出深いコース。今年は2度目の優勝を狙いたい」