1989年にフィリップアイランドでスタートしたオーストラリアGP。その後、シドニー郊外のイースタンクリークへと舞台を移したが、97年から再び、フィリップアイランドがグランプリの舞台となった。オーストラリアGPは今年で21回目。フィリップアイランドに復活して13年目(通算15回目)となる。島の端から端までクルマで約20分というフィリップアイランドは自然の宝庫。島内にはたくさんの自然公園があり、一年を通じて大勢の観光客が訪れる観光スポットとしても知られている。
Hondaはこれまで、ワイン・ガードナー、ミック・ドゥーハンというオーストラリア出身のすばらしい世界チャンピオンを誕生させてきた。過去、フィリップアイランドで開催された14回のグランプリでも、優勝したHondaライダーは6人を数える。ガードナー、ドゥーハンを始め、アレックス・クリビーレ、岡田忠之、来季からHondaチームに復活するマルコ・メランドリ(現カワサキ)、バレンティーノ・ロッシ(現ヤマハ)で通算9回。今年は3年ぶり10回目の優勝を狙う。過去2年は、地元オーストラリア出身のケーシー・ストーナー(ドゥカティ)が優勝。オーストラリアが生んだ3人目の世界チャンピオンの活躍がオーストラリアGPを盛り上げてきた。
フィリップアイランドは、自然の地形を利用し、アップダウンに富み、ハイスピードコーナーが連続する。スリップストリームの使い合いになることから、シーズンを通じてもっとも激しいバトルが繰り広げられる。加えて、周りを海に囲まれているため、天気が変わりやすく、バイクのセットアップとタイヤの選択で選手たちを悩ませる難コースの1つしても知られている。
今季、ここまで14戦を戦い総合3位につけるダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、昨年、レース序盤に転倒を喫してヒザを負傷した。その影響は今シーズンにまで及んだが、体調も万全となり、今年は昨年の雪辱を果たす意気込みだ。MotoGPクラスにデビューした2006年は不安定な天候でフラッグ・トゥ・フラッグとなり15位と低迷した。しかし、07年にはPPを獲得して苦手意識を払拭。得意のコースの1つとなったが、表彰台にはこれまで縁がなかった。07年は表彰台にあと一歩の4位、昨年は転倒と悔しいレースが続いている。体調の回復につれて調子を上げてきているだけに、フィリップアイランドでは今季2勝目を狙う。
第10戦イギリスGPで初優勝を達成して以来、4戦連続で表彰台を逃しているアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)も、今大会は気合を入れている。サスペンションをオーリンズに換えて3戦目。セットアップも進んでいるだけに5戦ぶりの表彰台と今季2勝目を狙っている。昨年はスタート直後にコースアウトを喫して最下位から7位まで追い上げた。125cc時代は優勝を経験。250cc時代も表彰台に立っている。昨年はタイヤのパフォーマンスがリザルトに影響したが、ブリヂストンのワンメイクとなった今年はポテンシャルを存分に発揮する意気込みだ。
左足首の骨折もほぼ完調に戻ったランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)も、今大会は不完全燃焼に終わった前戦ポルトガルGPの雪辱を果たす意気込みだ。昨年は予選4番手、決勝9位。予選までの好調をキープできない悔しいレースとなっていただけに今年は上位を狙う。総合10位で中盤戦から好調のトニー・エリアス(Team San Carlo Honda Gresini)、このコースを得意とするアレックス・デ・アンジェリス(Team San Carlo Honda Gresini)も上位を狙う。デ・ピュニエ、エリアス、デ・アンジェリスと、今季表彰台に立っている3選手の走りが大いに注目を集めそうだ。
250ccクラスは、総合首位につける青山博一(Scot Racing Team 250cc)の戦いに大きな注目が集まっている。14戦を終えて、2位のアルバロ・バウティスタ(アプリリア)に26点差、3位のマルコ・シモンセリ(ジレラ)に28点差。計算上では、今大会からタイトル獲得の可能性もあるが、3選手による厳しい戦いが予想される。過去2戦、大接戦の中で表彰台を逃している青山博一だけに、フィリップアイランド、次戦マレーシアGP(セパン)と、得意とするサーキットでタイトル獲得に大きく前進する意気込みだ。
ポイント争いがし烈な250ccクラス。総合7位のラファエレ・デ・ロサ(Scot Racing Team 250cc)、総合10位のヘクトル・ファウベル(VALENCIA C.F. HONDA SAG)は、残り3戦でランキング浮上を狙う。総合14位のラタパーク・ウィライロー(Thai Honda PTT SAG)、総合18位の富沢祥也(CIP Moto-GP250)、前戦ポルトガルGPから出場の青山周平(Racing Team Germany)も今季ベストリザルトを狙う意気込みだ。
コメント
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング3位)
「オーストラリアのレースがとても楽しみだ。シーズンを通じて、この大会は自分にとって最も大事なレースの1つになる。優勝に向けてモチベーションは高い。フィリップアイランドではこれまでいろんな経験をしてきた。苦い思い出も多いが、とてもすばらしいレースができたこともある。とにかく、残り3戦で総合3位をキープすること。今年はまだ1勝しかしていないので、少なくとも、もう一勝を挙げたい。フィリップアイランドの雰囲気は独特ですばらしい。コースレイアウトもハイスピードコーナーが続くのでセットアップがとても重要で、アグレッシブに乗ることも要求される。過去2戦、ミサノとエストリルで表彰台に立っているが、優勝するためには、さらにいい状態に仕上げなくてはいけない。フィリップアイランドは天候が不安定だが、準備はできている」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング5位)
「フィリップアイランドはベストサーキットの1つ。雰囲気はとてもよく、最もすばらしい大会の1つだ。海が近くて緑も多く、風景がすばらしい。ただ、この季節は寒くて風が強いという厳しい条件も加わる。しかし、壮大なサーキットであり、ここでレースを戦うことを本当に楽しみにしている。高速コーナーとアップダウンが続くレイアウトは最高だ。スライドコントロールも要求される。いつも大勢のファンがかけつけてくれるし、ムードもいい。レースが終わると表彰台の下に大勢のファンが集まってくるのも特別で、これも楽しみなひとつだ。とにかくベストを尽くしたい」
ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング8位)
「前回のポルトガルは、足の状態も回復して予選までは調子もよかっただけに、決勝レースは11位に終わり残念だった。ブーツが開いてしまうという不運もあったが、今回はその雪辱を果たしたい。昨年は手の状態が完ぺきではなかったが、今年は体調もいい。ランキング争いが厳しいので、ベストを尽くしたい」
トニー・エリアス(MotoGP ランキング10位)
「フィリップアイランドは大好きなサーキットだ。コースもすばらしく、よいグリップを得られれば、最高の気分で走ることができる。しかし、今年はシーズンを通じて、この問題に苦しんできたので、セットアップに全力を尽くしたい。とにかく、ベストを尽くしたい。楽しみにしている」
アレックス・デ・アンジェリス(MotoGP ランキング12位)
「フィリップアイランドは、ドイツGPが行われるザクセンリンクと並んで文句なしに好きなサーキットだ。レイアウトは好きで、このサーキットは自分のライディングスタイルに合っている。バイクのポテンシャルをフルに発揮できれば、いいレースができると確信している。過去2戦、ポイントを獲得できなかったが、走りそのものは悪くなかったと思う。125cc、250cc時代は優勝争いに加われた。今年もシーズン中盤以降のいい走りを結果につなげたい」
ガボール・タルマクシ(MotoGP ランキング17位)
「フィリップアイランドは高速コースでとても難しい。バイクをしっかり仕上げなくてはいけないし、いい状態を作り出すために全力を尽くしたい」
青山博一(250cc ランキング1位)
「フィリップアイランドは大好きなサーキットの1つ。高速コーナーが多いけれど、ストレートはそれほど長くなく、全体のレイアウトもHondaに合っていると思う。過去、ここではいいレースができているし、すごく楽しみにしている。総合でトップに立っているけれど、バウティスタ、シモンセリと接戦になっている。これまで通り、とにかく積極的に戦いたい」
ラファエレ・デ・ロサ(250cc ランキング7位)
「フィリップアイランドは大好きなサーキット。125ccは全開で走るポイントが多かったけれど、250ccはもっとスピードが出るし、より面白いサーキットだと思う。ここは好きなだけでなく、他のサーキットより自信がある」
ヘクトル・ファウベル(250cc ランキング10位)
「シーズンも残り3戦。自分にとっては、本当に重要な戦いになる。前回のエストリルは、最も得意なコースの1つだったが結果を残せなかった。そのためランキングも落としてしまったので、ここから3戦でトップ8を狙いたい。体調はほぼ回復しているし、ベストを尽くしたい」
ラタパーク・ウィライロー(250cc ランキング14位)
「前回のエストリルは、バイクの状態がとてもよくて6位でフィニッシュできた。フィリップアイランドは大好きなサーキットなので、前回のように気持ちよく走りたい。ここからの2連戦は、総合ランキングを上げるチャンス。次のマレーシアGPは自分のホームにも近く、モチベーションは高い。開幕が楽しみだ」
富沢祥也(250cc ランキング18位)
「エストリルでは、10位争いの集団をリードしながら転んでしまった。今年の目標の1つであるシングルフィニッシュも見えていただけにとても残念だった。フィリップアイランドは、想像もつかない。テレビで見る限り、景色もきれいで、コースも高速コーナーが多くてすごくエキサイティングなコースなので楽しみにしている。残り3戦、シングルフィニッシュ目指してベストを尽くしたい」
青山周平(250cc ランキング20位)
「前回のポルトガルはレーシング・チーム・ジャーマニーでの初めてのレースだった。なにもかもが初めてだったけれど、チームベストとなる12位でフィニッシュできてうれしい。今回はこのチームで2戦目のレース。初日からセットアップに集中できると思うし、前回よりもいい順位でフィニッシュしたい」